オンラインで届けるポップでカラフル
な時間 May'n5ヶ月連続配信ライブの
軽やかな幕開け

2021.01.23.(Sat)May’ n 15th Anniversary Monthly Concert「1 to 5 -POP-」for Streaming+
アーティスト・May'nが、歌手デビュー15周年を記念したライブ『May’ n 15th Anniversary Monthly Concert「1 to 5」』を行った。
本公演は5ヶ月連続で開催され、「POP」「DANCE」「ROCK」「ACOUSTIC」「MUSIC」と毎月異なるコンセプトを立て、May’ nの様々な歌声を楽しめるのが魅力のライブとなっている。初演となる1月23日のライブでは、「POP」をコンセプトに楽曲を披露した。
配信が開始するとドラムの音を合図にステージがパッと明るくなり、May’ nとサポートバンド「チーム音楽室」の姿が映し出され、「一緒にPOPに弾けていきましょう!」とまさに弾ける笑顔でMay’ nがカメラの向こう側の私たちに呼びかけ歌い始める。
撮影:平野哲郎
2012年にリリースした3rd アルバム『HEAT』収録の「ナンバーワン!」から幕を開け、アップテンポな楽曲「ViViD」へと続き、スタートからアクセル全開だ。家に籠る時間が増え、つい気持ちが塞ぎ気味になってしまう私たちを<Gooooo fight!!>とパワフルな歌声で鼓舞してくれる。ステージ上ではつらつとした笑顔で歌う彼女の姿を見ていると、思わずこちらもつられて笑顔になってしまう。3曲目には、優しく芯のある歌声で「今日に恋色」を歌唱。緊急事態宣言でおうち時間を余儀なくされている私たちの鬱屈とした気持ちをそっと抱きしめてくれた。
直後のMCでは、この日関東では大雪の可能性があったため「普段だと“また部長(May’ nの愛称)が天気を荒らしてる!”というざわざわから始まり、みんな帰れるか心配になるんだけど……」と雨女ネタで自虐し、笑いを誘いながらも「みんなのツッコミがないと寂しい」と本音をポツリ。
15周年アニバーサリーイヤーの最終月である5月まで毎月ライブを行うことは以前から企画しており、本当であれば実際にファンと会うことを前提に企画されていた本ライブ。そのことを少し残念そうに話しながらも、「オンラインだからこそ見てくれているという人もいると思う」と前向きに語るも、どこか表情は寂しそうだ。
きっと、無観客の中でカメラを通して語りかけるのは本当に通じているのか不安に思う瞬間もあるのだろう。だがそんな気持ちを振り払い「あなたのために、あなただけのために歌を届けたいと思います」という彼女の言葉から始まったのは「What 'bout my star?」。『マクロスF』の劇中でシェリル・ノームとランカ・リーがアルトに問いかけた時のような切実な想いのように画面の向こう側にいる一人ひとりに向け、手を振りながら<What 'bout my star?>と問いかけてくる。ライブへの愛、ファンへの愛が画面越しでもひしひしと伝わってきた。
「Smile:D」では、画面が切り替わり、カラフルな風船がステージ上に敷き詰められるという演出で楽しませてくれた。「POPの定義はカラフルが似合うこと」「私がニコニコしてるとか、変な顔してるとか」とMCで語ったように、<『イェィッ』><『エヘッ』><『ポイッ』>との掛け声でコロコロ表情が変わるお茶目な姿を見せてくれたかと思ったら、「ヤマイダレdarlin'」では突き抜けるような歌声で魅了した。ここまでアップテンポな楽曲がいくつも続いたのだが、息ひとつ切らさず、カメラへ向けて丁寧に表情を変化させ、歌い切っていく姿は圧巻だ。
本ライブ「POP」のテーマカラーはピンクと語ったMay’ n。ピンクの中にも濃淡があると語り、ここまで披露してきた楽曲をパッと明るい色だとすると、一転して「淡いカラーが似合う曲」と喩えて披露したのは、15周年記念企画ミニアルバム『15Colors -nu skool-』に収録された「春夢」。先ほどステージ上を駆け回っていた姿とは一変。しっとりとした空間に一気に引き込む歌声に感嘆が漏れる。静かな光が降り注ぐ中、「小さな幸せ」のやわらかなメロディーを静かに歌い始める。後のMCで「(「小さな幸せ」は)切ないナンバーではあるんですけど、私の中で薄ピンクのイメージがあって、お届けしたかった」と語ったように、だんだんと淡い桃色の光に照らされていく彼女の姿を見ていると、外では雪が降るかもしれないくらい寒いことなんて忘れてしまうほど、あたたかい気持ちにさせてくれた。
撮影:平野哲郎
後半戦は、「ここからさらにあげていきたい! ポップに弾けていきたい!」「家だったら声出せるでしょ?!」「ポップに弾ける準備はできてますか?」とあおり、Wake Up, Girls!とのコラボ楽曲「One In A Billion」で再びテンションを高めていく。視聴者の熱の高まりを察知したかのように「ダンスをしようと思います!」と振り付けが難しいと言われている「バースデイ!〜PEACE of SMILE」のダンスレクチャーが開始した。
配信ライブなので、「今後のライブに向けて完璧に仕上げて欲しいです!」と期間中であれば何度もアーカイブ配信を見ることができるからこそ選んだことを明かす。いつものライブではできないこともできてしまうのが配信ライブの良さだ。
歌唱中は、これまで活発だったコメント欄が静かなのがとても印象的だった。きっとみんなも画面越しに踊っているのだろうと思うと、May’ nのライブを通じて繋がっていることをより感じることができ、一緒に会場で楽しんでいる気持ちにさせてくれた。
そのまま「ユニバーサル・バニー」「パラノイア」「Ready Go!」を歌い上げて畳み掛ける。『マクロスF』に登場するシェリル・ノームの二面性を「白うさぎ」「黒うさぎ」に喩え、自由自在に声色と表情を使い分け、振り返った瞬間に表情がピタッと変わる姿や、<渋谷 原宿 代々木に新宿 走りつかれた明治通り>でステージの周りを走り回ったり、<誰でも秘密があるの 誰にも見せたくないモノがあるの>で転調してスポットライトがあたり、クレーンカメラで抜かれると弾き返したり、<マジメ顔 ビミョー顔 いろんな顔見せるね>の歌詞に呼応するように表情を変幻自在に変化させる表現力は凄まじい。まるで短編映画でも見ているようだ。
「みんなを想って歌うと生きねば、生きるぞと明日への活力をもらっています」
本来は観客がいる前提で企画したライブ。「こんなに寂しいな、辛いな、我慢して頑張ってんだ! って思う1年って中々無い」「寂しい思いでいっぱい」と漏らした彼女の言葉はきっと本音だろう。一対一の対話のように私たちに歌声で語りかけてくる彼女の姿を見ているとこの1年の間、思うように大好きなライブができなかったこと、リアルな会場でこの熱を伝えられないという悔しさもひしひしと伝わってくる。
だが、大好きなライブのためにこの辛い状況も今は我慢できると前を向き歌い始めたのは、盟友・LiSAが歌詞を提供し、May’ nが作曲した楽曲「マイヒロイン」。<ピンチも打ち返せば 歴史的記念日>の歌詞のように、こんなご時世だからこそ届けられる表現がある。「もっと自分で作った曲を届けたい」という想いが強くあることを明かし、「2021年は私の曲を今まで以上にお届けしたい」という誓いと共にアンコールでは、来月またみんなとステージで出会うことを約束し「WE ARE」でライブを締め括った。
撮影:平野哲郎
本ライブは、「マイヒロイン」歌唱前に私たちに向けて伝えた「日々精一杯生きているあなたのために歌います」という言葉に表れているように、距離なんて関係なく、目の前の“あなた”へ向けた切実なステージだった。
レポート・文:波多野花彩 撮影:平野哲郎

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