【前Qの「いいアニメを見にいこう」
】第34回 「幼女社長」と「モルカー
」で私の2021年は始まった

(c) 藤井おでこ・KADOKAWA/むじなカンパニー 遅ればせながら、あけましておめでとうございます。2021年最初の連載更新です。挨拶もそこそこに、まずは宣伝から。毎年恒例、日本オタク大賞を今年もやります。私、アニメ部門のプレゼンターとして登壇します。例年、お客さんを前にしてのトークイベント形式で開催しておりましたが、今年は昨今のコロナの時世を鑑み、有料配信番組になりました。全国津々浦々からご覧いただけます。1月30日午後6時30分から生配信で、イベント終了後の3週間はタイムシフト視聴が可能。チケット好評発売中。詳しくは以下のURL(https://ch.nicovideo.jp/otaku/live/lv329910925 )のリンク先にて。よろしくお願いします!
 ……さて、本題。元日から配信サイトで全話一挙公開された「幼女社長」が楽しかった話をします。もともと原作コミックを愛読していたんですが、これがもう、理想のアニメ化よ。幼女の社長が、幼女ならではのぶっ飛んだ思考や行動を権力と財力でブーストして周囲に巻き起こす、破天荒極まりないトラブルを描いたスラップスティック・コメディで、原作の1エピソードは大体4ページ。これを1話あたり3分弱のアニメにしている。全13話。全話についてくるOPを飛ばさず見ても40分弱。本編だけなら、正味30分程度。一度配信サイトで再生し始めると、もう止まらない。つい最後まで見切ってしまう。一体、何周しただろうか。
 監督はいわたかずや。全話で絵コンテ・演出を手掛けており、ただ短いからというだけではなく、ひとりの生理的なリズムで、きちんと映像のテンポ感が統一されている点も、中毒性の高い見やすさに寄与しているのではないだろうか。いい仕事です。声優陣もハマり役揃い。とりわけ、主演の日高里菜が聞かせる、無邪気な高音域での芝居の緩急(8話の「……なんでしゃべるの?」というセリフで突如差し込まれるゾッとするような冷徹なニュアンスは、何度見てもたまりません)と、作中で唯一の常識人を演じる金元寿子が聴かせるツッコミのテンションの高さとバリエーションには痺れてしまう。「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」「ギャグマンガ日和」などの大地丙太郎監督の一連のショートギャグ作品や、「てーきゅう」「あいまいみー」といったタイトルにピンと来る向きは、マストでチェックされたし。
 で、ショートアニメといえば、今、ネットで一大旋風を巻き起こしている「PUI PUI モルカー」にも触れておきたい。モルモットを思わせる姿の感情豊かな車たちの奮闘を、フェルトでできたパペットを主に用いたキュートなストップモーションアニメで描く、キッズ向けのショートアニメシリーズ。これまた1話あたり3分弱だ。不思議な企画だが、監督曰く、「渋滞や割り込み、煽り運転など、イライラする車の出来事が数多く存在する世の中。『もしも車がモルモットだったら…』癒し系の車 "モルカー" ならそんなストレス社会を打破することができるのではないかと思いました」(https://twitter.com/molcar_anime/status/1342741941834792960 )とのこと。いわれてみれば、うーむ、納得。
 それにしても、私もすっかりメロメロではあるものの、これ、なぜにここまでの話題になっているんでしょうね? いや、そういう現象を取材などを通じて分析し、もっともらしい答えを出すのがお前の仕事と違うんかい! とつっこまれそうですけれども、そんなん、そうそうわからんよなあ。「鬼滅の刃」もそうだったけど、仮説を立てても、しっかり検証できるわけでもなし。ただただ謎。デザインの可愛らしさ、世界観のユニークさ、手法の目新しさ、誰もがちょっとひとこと物申したくなるような社会批評的な要素、そして、監督である見里朝希の持ち味であるほんのり漂う不気味さ(モルカーの内装が内臓っぽい色味だったり、モルカーが車内を確認するときにギュッと目が体内に引っ込んだり……)が複雑な化学反応を引き起こし、ヒットの呼吸を生み出したという感じでしょうか。あえて理屈をつけてみるなら。バズりの方向性としては、「けものフレンズ」と「ポプテピピック」の合せ技みたいな。ファンの〈考察〉と〈大喜利〉で盛り上がりがどんどん加熱していくような印象を受ける。でもこんなの、ほとんど何も言ってないに等しいよなー。ははは。ともあれ、1月末の現時点では、このうねりがどこにどうたどり着くのか今ひとつ見えませんが、コツコツ地道に作家性を磨いてきた個性的なアニメーション作家が注目を集め、報われるのはよいことです。一過性の話題で終わることなく、いいかたちで着地をして、今後につながることを願っています。とりあえず監督の代表作である「マイリトルゴート」を劇場で上映したりしませんか。尺が短いから、何か他の作品と合わせてプログラムを組んでみてもいいかもしれない。見たい人も多いんでは。
 では、そんなところで、また次回!

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