9mm Parabellum Bullet×THE BACK H
ORNの特別な競演『荒吐20th SPECIAL
-鰰の叫ぶ声-』東京編 初日レポート

9mm Parabellum Bullet「荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声-」東京編

2021.1.19(火)昭和女子大学人見記念講堂
「鰰(ハタハタ)の叫ぶ声」とは一体何か。それはTHE BACK HORNと9mm Parabellum Bulletの混合バンドであり、元々は2020年4月に『ARABAKI ROCK FEST.20』、5月に『荒吐20th SPECIAL-鰰の叫ぶ声-』東京編で披露されるはずだったが、コロナ禍によりフェスは無念の延期。しかしメンバーは諦めず、1年越しの念願を叶えて、2日間にわたる有観客&配信ライブとして復活した。第一部が9mm Parabellum Bulletのワンマン、第二部が8名のメンバーによる「鰰の叫ぶ声」。かつてない刺激と興奮で燃え上がった、初日の模様をレポートする。
9mm Parabellum Bullet
「9mm Parabellum Bulletです。こんばんは」
菅原卓郎(Vo,Gt)の簡潔な挨拶で幕を開けた9㎜のステージは、「太陽が欲しいだけ」のシンプル&ストレートなエイトビートでいきなりレッドゾーンへ突入する。サポートギターに武田将幸(HERE)を加えた5人の演奏は、いつもと変わらず緊迫感あふれるアグレッシヴなものだが、真ん中に立つ菅原は時折笑みを浮かべる柔らかな表情。久々の有観客ライブ、そしてTHE BACK HORNとの共演が本当に嬉しいのだろう。「Answer And Answer」から、昨年9月リリースの最新シングル「白夜の日々」へ、ヘヴィでキャッチーなリフ、歌謡めいたウェットなメロディ、ロマンチシズムあふれる歌詞、9㎜のヒストリーを貫く王道チューンを連ねて一気に波に乗る。
9mm Parabellum Bullet
「みんなの長い長い拍手で、ちゃんと気持ちは届いています。俺たちの慣れてるライブとは違うけど、その調子で楽しんでください」
政府のガイドラインに沿って歓声は禁止。それでも思いを届けようとするオーディエンスの心は、確かにメンバーに伝わっている。シンプルなベースとギターのユニゾンがループして大きなグルーヴを生む、「サクリファイス」と「Supernova」はまるで組曲のようで、中村和彦(Ba)によるデスボイスのコーラスも強烈。「The World」の複雑な変拍子の間にもスティック回しを忘れない、かみじょうちひろ(Dr)のプレーも冴えわたる。滝善充(Gt)がステージ最前線に飛び出してオーディエンスを煽る。前のめりの気迫が指先から弦へ、アンプからPAへと伝わって莫大なエネルギーを放出する。
9mm Parabellum Bullet
「このあと、“鰰の叫ぶ声”が登場します。楽しみにしていてください。何も間違いないよ。凄いよ」
菅原がニヤリと笑い、バンドはラストスパートへ。《明るい未来じゃなくたって 投げ出すわけにはいかないだろ また明日 生きのびて会いましょう》。「名もなきヒーロー」の歌詞が、今ほど切実にそして力強く響く時代はない。《新しい光の中に君を連れて行くのさ》と歌う「新しい光」にも、これまで以上に深い意味と意思が宿る。
9mm Parabellum Bullet
菅原がマラカスを振って「踊れ!」と煽る「Talking Machine」から、絶え間なく稲妻が降り注ぐような轟音アンサンブルの「ロング・グッドバイ」へ。締めくくりは滝のジャンプ、そして菅原の笑顔だ。過剰なエモさと重厚なヘヴィネスはそのままに、どこか大人の余裕を感じる成熟したロックを聴かせてくれた9mm Parabellum Bullet。全10曲、期待を超えるパフォーマンスだった。
9mm Parabellum Bullet
「『荒吐20th SPECIAL-鰰の叫ぶ声—』へようこそ。THE BACK HORNと9mm Parabellum Bullet、最高の夜にしようぜ!」
およそ10分の休憩と換気をはさみ、いよいよ始まるスペシャルなショータイム。山田将司(Vo)の叫びと共にスタートした第二部は、THE BACK HORN「コバルトブルー」から9mm Parabellum Bullet「ハートに火をつけて」へ、山田と菅原がボーカルを分け合い、二つの楽器同士が激突する爆音の競演だ。岡峰光舟(Ba)と中村がアイコンタクトで笑い合う。松田晋二(Dr)とかみじょうが、格闘技のように音をぶつけ合う。菅波栄純(Gt)が自由奔放に飛び回る滝を見てにこにこしている。とにかく音がでかい、重い、激しい。予想通り、いやそれ以上のド迫力だ。
お楽しみはさらに続く。8名が「じゃんけんで組み分けした」という、4人編成バンド✕2の競演だ。先陣を切るのは菅原、菅波、中村、松田の通称「黒組」で、9mmの「Vampiregirl」のリフを菅波が弾く。滝とは明らかに違うねばっこいフレージングがとても新鮮だ。演奏を終えた中村が笑顔でサムアップしたところを見ると、9㎜のメンバーにとっても刺激的だったのだろう。逆にTHE BACK HORN「罠」のメロディは驚くほどに菅原の声質に合っていて、違和感を感じないところに新鮮さがある。何よりも、お互いがお互いの曲をリスペクトしているのが伝わってくる。
「心が白組と、心が黒組です」
入れ替わって登場した「白組」ボーカル・山田がご機嫌な調子でジョークを飛ばす。偶然か必然か、「バンド内でしゃべらないメンバーばかり」という山田、滝、岡峰、かみじょうの「白組」は、見た目もキャラもバランスがいい。ファストでラウドなダンスロックチューン、9mm Parabellum Bullet「The Revolutionary」を歌う山田は、さっき聴いた「罠」とは違い、良い意味で違和感を感じるところに新鮮さがある。滝の弾く切れ味鋭いリフ、かみじょうの猛烈なスピード感あふれるスティックさばきは、THE BACK HORN「戦う君よ」に新たな解釈を付け加える。つまり、どちらに転んでも勝ちということだ。
白組
「(直接的に)似てるというのじゃなくて、何かの要素が似ている気がする。音楽的に親戚みたいな感じ」
菅原がふと口にした二つのバンドの共通点に、“なるほどな”とうなずく。まったく違う個性だが、どこかで血が繋がっている、そんな感覚がこの2バンドには確かにある。ラストは再び8名がステージ上に勢揃い。フィナーレを飾るのはTHE BACK HORN「刃」と、9mm Parabellum Bullet「Black Market Blues」の2曲だ。ステージ最前線でギターと格闘しながら、珍しく滝がステージ上で笑っている。ベーシスト二人が、腰を落として同じポーズを決めている。山田が“もっと来い!”と言わんばかりにオーディエンスを煽る。演奏は極めて激しいが、ステージ全体から伝わるヴァイブスはとてもピースなものだ。
二部構成でおよそ2時間、新鮮な驚きと発見に満ちた唯一無二のパフォーマンス。『荒吐20th SPECIAL-鰰の叫ぶ声—』初日の模様は、アーカイブで1月25日(月)23時59分まで視聴可能だ。そして2日目は、THE BACK HORNのワンマンと、「鰰の叫ぶ声」の二部構成になる。今度は一体何が起きるのか、そちらのレポートもぜひチェックしてほしい。

取材・文=宮本英夫 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)、西槇太一

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