【城 南海 インタビュー】
この10年
いろいろやらせていただいたことが、
今に全てつながっている
これまでオリジナル2曲についてうかがってきましたが、もうひとつの軸となっているカバー曲についても。どの曲も思い入れがたくさんあると思うのですが、特に印象的な楽曲を挙げるとすれば?
6曲目の「蘇州夜曲」ですね。私が“やりたいです”と言ったんです。実はデビュー前にレコード会社の方や当時のマネージャーさんたちが集まって、いろいろな楽曲を歌ってみて私の今後の方針を決めるといったことがあったんですけど、その中の一曲が「蘇州夜曲」だったんです。長い年月を経て、やっとかたちになりました。あと、アレンジは以前に「晩秋」「月下美人」(2016年11月発表のアルバム『月下美人』収録)や「サヨナラよりも伝えたかったこと」(2017年11月発表のカバーアルバム『ユキマチヅキ』収録)を担当してくださった松浦晃久さんにお願いしているんですけど、松浦さんはすごく面白い方で! “南海はお酒が好きでしょ? この曲はほろ酔い気分で、帰りに川沿いを歩きながら鼻歌を歌うみたいな感じでやってみたら?”というアドバイスをしてくれたんです(笑)。なので、私は蘇州に行ったことがないのですが、水辺のきれいな街だそうなので、そういうところを散歩している気分でフワフワ~と歌いました。
「蘇州夜曲」は異国情緒あふれる感じの楽曲ですよね。
そういうところに惹かれますね。二胡とかを入れてみたくてお願いしたんですけど、アレンジもすごく素敵で。とても自然でリラックスして歌えました。
まさに先ほどの「産声」のお話で出てきた、“そこにただいて、ふっと出てくる声で歌う”という感覚とリンクしていますね。
きっと「産声」をやっていなかったら、ああいう歌い方をしてなかったと思うくらいの力まなさでした。あと、松浦さんには5曲目の「Never Enough」のアレンジもお願いしたんですよ。
「Never Enough」は城さんのダイナミックさ、迫力のある歌声が堪能できますよね。
松浦さんは“この曲はあの映画(『グレイテスト・ショーマン』)の壮大なオーケストラの感じにしかできないじゃない? だから、歌が始まるまでは何の曲か分からなくしたんだよね”とおっしゃってました(笑)。
あははは。
あと、レコーディングするまで教えてくださらなかったんですけど、曲の中ですごく細かくテンポを変えているんですよ。歌う前にちょっとリット(だんだん遅く)したりとか。歌っていると“あれ?”と思うけど、聴き流せるぐらいのテンポの変わり方なので、楽器を弾いてる人もそのことを知らなかったと言ってて。だから、みんなの気持ちをうまくコントロールしているアレンジなんです。歌う前にそのことを知ったら意識してしまうから、逆に聞かなくて良かったです(笑)。
あと、3曲目の「カントリー・ロード」や4曲目の「Good-Bye days」(映画『タイヨウのうた』より)などは城さんの世代的な選曲でもあるのかなと感じました。
世代もそうですけど、特にジブリは好きな曲が多いので、候補がいっぱいあったんですけど、歌ったら一発でディレクターさんが“これ、決まり!”と(笑)。歌詞が今のこの状況にも重なるし、私が奄美大島を出てきたという背景にもぴったりだったということもあって…《帰りたい 帰れない》というところは、奄美の風景を思い浮かべながら歌いました。また、日本語歌詞になると原曲と意味合いが違っているじゃないですか。そういうのも感じ取りながら、これは三味線を入れました。
“こんなに三味線とこの曲が合うとは!?”と思いましたよ。
ギターのトレモロも意外に三味線と喧嘩しないんですよね。すごく好きな曲なので、今回歌えて良かったです。