『地縛少年花子くん -The Musical-』
に出演の小西詠斗、安里勇哉が本作の
見どころや、舞台ならではの面白さを
語る

あいだいろによる大ヒット漫画のTVアニメを原作とした『地縛少年花子くん -The Musical-』が2021年1月に大阪、東京で上演される。かもめ学園高等部を舞台に、学園七不思議の一つである男の子の幽霊・花子くんと、ヒロイン・八尋寧々らが、学園で巻き起こる不可解な事件に挑んでいく物語。今もっとも注目をあつめる「2.5次元舞台」の作品とあって、熱烈なファンも多い大ヒット原作がどのように舞台上で表現されるか、期待を集めている。そこで今回は、花子くん役の小西詠斗、学園七不思議の五番目「16時の書庫」管理人である教諭・土籠役の安里勇哉に、本作の見どころや、舞台ならではの面白さについて話を訊いた。
――今回の舞台では原作の魅力をどのように表現しようと考えていますか。
小西:原作の魅力は、キャラクターのビジュアルの可愛さはもちろんですし、あと学園ものならではのストーリー展開、そしてホラー、コメディ、ちょっとラブなど色々な要素が盛りだくさんなところが魅力です。僕たち人間が思っている幽霊のイメージが良い意味で変えられる部分も特徴的です。
――どういう風に幽霊のイメージが変わりましたか。
小西:僕が想像する幽霊って、怖くて、良いことをしない印象。だけどこの作品で登場する怪異たちは、それぞれに背景があってどこか切なくて優しさもある。今回はミュージカルなので、歌とダンスでそういった世界観も表現していきたいです。
小西詠斗
――安里さんは原作の魅力についていかがでしょうか。
安里:キャラクターがみんな個性的ですよね。あと、学園が舞台なので懐かしさもあります。噂話、同級生の会話。小中学生のとき「この場所で告白したら付き合えるよ」とか、好きな人の名前を消しゴムに書いて使い切るとかありましたよね。そういうエピソードを思い出します。物語として切ない部分も魅力。自分が演じる土籠も切なさ、悲しさを持っている。原作に流れている、そういうおもしろさを見せていきたいです。
――安里さんが感じていらっしゃる土籠の切なさとは、どういうものですか。
安里:先生の立場ではあるけど昔から花子くんを見守ってきているところ。あとドSなんだけど花子くん、八尋寧々に対して優しい一面もある。「お前も辛いことがあったよな」、「いろんな経験してきたね」といろいろ知っている上での優しさ。そのなかに土籠の想いも込められています。
――作品のなかで、怪異について「悪い噂に抗えず変わり果てる怪異もいる」という解説がされる部分があります。怪異の存在は、現在の世の中の風潮を反映している感じがしますよね。時には信ぴょう性の有無に関わらず、誰かの人生を左右してしまうこともあります。
小西:やっぱり自分がちゃんと見て確かめたもの。実際に感じたものを信じなきゃいけないと思います。例えば、いろいろ噂されるような事があっても、きちんと向き合って、自分で考えたい。噂だけで物事を判断するとか、そういうことはしたくないです。惑わされることは確かにあるんですけど、噂だけを信じてはいけませんよね。
安里:僕も直接感じたこと以外は信じないようにしています。確かに今の時代って何が本当か嘘か分かりづらい。噂だけで物事を信じちゃう人も、何かしら信じやすい状況、気持ちが不安な状況に陥っているかもしれないので、一概にダメと言えない。それでも僕自身は、噂だけを鵜呑みにすることはありません。いろんな情報を読んでも「へー」くらいの感覚。あと占いとかもそうなんですけど、単純に自分にとって悪い話は信じたくないです(笑)。
――ハハハ(笑)。それはありますよね。
安里:昔「ノストラダムスの大予言」ってありましたよね。1999年に地球が滅亡するって話。「落ちるわけないよ」と思っていても、どうしても気にはなっちゃうところもある。結局はみんな、いろいろ惑わされることは必ずある。でも信じようが信じまいが、結果的にちゃんと幸せになりたいですよね。誰かが悲しい思いをするのは絶対に違う。
――ちなみに劇中では、学校にまつわるいろいろな怖い噂などが出てきますよね。おふたりは学生時代、怖かった都市伝説などありますか。
安里:音楽室に行くのは無性に怖かったです。肖像画が動くとか、勝手にピアノが鳴るとか。あの音楽家の絵も、もうちょっと怖くないようにできないんですかね。目を大きくするとか(笑)。今でも撮影で学校に行ったりすると、音楽室は何だか怖いです。
小西:僕は学校ではないんですけど、夜中に目が覚めて4時44分だったときの絶望感! 4は不吉な数字って言われていますよね。4時44分は妙に怖かったです。
――ちなみに、今回の『地縛少年花子くん -The Musical-』は「2.5次元舞台」と言われるもの。日本の演劇界で「2.5次元舞台・ミュージカル」は現在もっとも人気のコンテンツですが、注目度が高まってきている感触はいかがですか。
安里:2.5次元舞台は十数年前からありますし、それこそミュージカル『テニスの王子様』シリーズの存在は大きいですよね。それから、いろんな原作がクローズアップされ、それが舞台化される流れができました。「どんな作品が次は舞台になるんだろう」という楽しみがありますよね。
小西:僕はこの『地縛少年花子くん -The Musical-』が2作目の2.5次元舞台です。初の2.5次元舞台だった『刀剣乱舞 維伝 朧の志士たち』(2019年)に出演したとき、反響がすごかったです。「すごく人気のある世界に僕も携わっている」という喜びがありました。あらためて注目されているジャンルだと気付きました。
安里勇哉
――「2.5次元俳優」という呼び方も広がってきていますよね。テレビでも特集されたりして。一方で、人によっては「俳優と何が違うのか」と疑問を感じることもあると思います。
安里:たとえば『桃太郎』にしても、『ロミオとジュリエット』にしても、原作があるものなので舞台でやれば2.5次元ということになる。つまり「2.5次元舞台、2.5次元俳優とはこういうものである」という決まりごとはない気がするんです。ただ強いていうなら、2.5次元作品は、アニメ、漫画などの原作にいかに寄り添えるかだと自分は考えています。元となるキャラクターに近いメイクをしていただいて、そして原作の力をもらって、お客様にお届けする。役者として演じるということへの違いはないですが、でも原作の世界観をより忠実に、大事にする部分が「2.5次元舞台」なのかなって。
――なるほど。
安里:誰かに「何の仕事をしているんですか」と質問されて、「2.5次元俳優です」と答えることはないかな(笑)。普通に「役者です」と。確かに違いがあるかどうかは難しいですよね。
小西:そうですよね。演じるという部分においては、まったく違いはないと思っています。僕たちはまず芝居をすることが仕事なので。確かに「2.5次元舞台」は原作をより大事にしている印象があります。ビジュアル面にしても、原作ファンに納得してもらえるように作り込む。元々の世界観にちゃんと寄せていく必要があるのではないでしょうか。原作を2.5次元で舞台化する、という点での期待値はかなり高いですから。
安里:演じるにあたっては、原作を読んでその世界観を感じ取った上で、自分にも寄せていくようにしています。キャラクターと自分に近いところを探す。あまり多くを語らず絵だけで心情を表しているものもありますし、そういう場合は想像を膨らませて自分のなかでキャラクターを作っていきます。たとえば僕は負けず嫌いなので、そういう性格のキャラクターは近づけやすい。逆に共感できないところがあったとしても、なぜ共感できないのか考えた上で近づけるようにしています。
小西:僕は自分の演じるキャラクターを見て、まずどこに魅力があるのか考えるようにします。花子くんであれば、格好良いところと可愛いところのギャップとか。ただ、2.5次元とは言っても単純な真似っこになってはいけない。ちゃんと想像を膨らませて、時にはキャラクターを追いすぎないようにもしています。
――2021年は、「2.5次元舞台」の本格的なブレイクイヤーになりそうです。おふたりもさまざまな作品に出演すると思いますが、展望はいかがですか。
小西:僕は2019年に初めて小劇場の舞台に立って、そこでお芝居の楽しさを知りました。「さあ、ここから」というときに新型コロナウイルスが流行して、こういった状況になりました。みなさんと同じように自宅にいる時間も増えましたが、その間は台本を読んで練習したり、色々な作品を観たりして、自分なりにできることをやってきました。そういう意味では2020年は蓄積の年。2021年はそこで蓄えた力を信じて爆発したいです。
――どういう作品をご覧になっていたんですか。
小西:印象に残っているのは『デスノート THE MUSICAL』です。稽古場も見学させていただいて、たくさんのことを学ぶことができましたし、何より舞台そのものにものすごい熱意がありました。自分もそういった作品に関わっていきたいです。
――安里さんは、2021年はいかがでしょうか。
安里:2020年は演劇に携わる多くの方、そしてそれを愛するお客様たちが悲しい気持ちになったと思います。舞台って、お客様の笑い声、拍手、涙の音などに影響されて、僕らもかなり芝居が変わってくる。生の空間だし、みなさんの心情がちゃんと伝わってくるんです。こういう状況になってあらためて、観劇していただく大切さに気づくことができました。そういう意味でこれから一公演、一公演、舞台を観るすべての人と舞台を作り上げる意識を深めたい。一日でも早く以前のような状況が取り戻せたら良いですし、僕らはその日が来るまでしっかり演じ続けたいです。
取材・文=田辺ユウキ

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