石丸幹二にインタビュー! 主演ミュ
ージカル『パレード』の見どころとデ
ビュー30周年に思うこと

20世紀初頭のアメリカで起こった冤罪事件を題材にしたミュージカル『パレード』が2021年1月15日(金)より東京芸術劇場プレイハウスほかで再演される。『ラスト・ファイヴ・イヤーズ』や『マディソン郡の橋』などを手掛けたジェイソン・ロバート・ブラウンが作詞・作曲、『ドライビング・ミス・デイジー』で知られるピューリッツァー賞受賞作家のアルフレッド・ウーリーが脚本を手掛け、1999年トニー賞最優秀楽曲賞・最優秀脚本賞を受賞した本作。日本では、森新太郎の演出で2017年5月に初演された。主役のレオ・フランクを石丸幹二、相手役のルシールを堀内敬子が演じ、劇団四季時代より17年ぶりに共演を果たしたことなどで話題を呼んだ。
初演に引き続き主演を務める石丸幹二に、再演にあたっての思いや堀内敬子との共演のエピソード、デビュー30周年を迎えた心境などを語ってもらった。
「もう一度やったらどんな反応がくるのだろう」 
――4年ぶりのミュージカル『パレード』です。再演にあたっての思いをお聞かせください。
前回演じていて、客席の皆さんの反応が「静かに激しかった」ことをよく覚えています。胸がかきむしられるような結末ですから、これまでミュージカルのカーテンコールでは経験したことのない反応でした。ああ、もう一度、この作品を世に問いたいと思って終わったんです。あれから時を経て、コロナの影響もあって、社会情勢もずいぶん変わってきましたよね。そういうことも含んで、また改めて、我々はこの作品をどう捉えるべきか。そこにものすごく興味があります。演じる側としても、どんな反応が起こるのか。本格的な稽古が始まる前なんですが、今、とても気になっているところです。
――初演を拝見したのですが、確かに衝撃的でした。
ご覧いただいたのですか。ありがとうございます。そうですね、エンディングが特にね。
――石丸さんが感じられた「静かに激しかった」反応というのは、具体的にどういうことでしょう。
そうですね。通常、ミュージカルではナンバーが終わったら拍手などで観客は作品や登場人物に共感を示し、共に作品を進めていくことが多いんですが、この作品に関しては、特に最終的に観客は「自分はどう反応したらいいんだろう」っていうところに、投げ飛ばされるというか。不安定な気持ちを抱えながらの拍手というのでしょうか。そんな個々の思いみたいなものを感じる拍手を頂戴したんです。ここがもう、他の作品とは決定的に違う。
石丸幹二
それから、やはりこの事件が「事実」だったということ。未だに根強くある差別の話や冤罪。当時も今も何ら変わりがないと思ってしまいます。ある意味、永遠の、人間のテーマなのかもしれませんね。だからこそ再演する意味もあるし、反響を呼んだのだなと思います。
堀内敬子と17年ぶりの共演「全然タイプの違う人間ですよ(笑)」
――初演の思い出を引き続き伺えればと思うんですけれども、初演時は17年ぶりに堀内敬子さんと共演ということで話題になりましたよね。
そうですね。僕自身、とても楽しみにしてました。久しぶりに堀内さんとミュージカルの現場で会って。やはり彼女の持ってるバイタリティ、柔軟さ、そしてチャーミングさ。それがより増しているなと思いました。
稽古が始まっても、あっという間にお互いの感覚や呼吸を思い出したと思うんです。僕はとってもやりやすかった。まぁ、彼女どう思っていたかわからないけど(笑)、少なくとも僕はそう思いましたね。
――再演にあたってはどういう思いですか。少し期間が空きましたが。
劇団四季で我々が長く学んだことの一つに、「再演はなぞるのではなくて、新たに経験したことを大切に、もう一度台本と向き合うものなのだ」ということがあります。多分彼女も同じ思いがあると思います。何か全く新しいものが生まれるかもしれないと期待しています。
経てきたこの3年半、4年の間に、誰もが人間変わってますからね。そこで感じたものをぶつけ合う。それが一体どうなるのか。今すごく期待してます。楽しみです。
――先日は堀内さんとNHK「うたコン」で共演されて、お話されたと聞いたのですが、どんなお話をされたのですか?
あぁ、そうでしたね。初めてテレビで声を合わせて歌いました。ドラマではあったんですけどね。昔、共演した作品のナンバーでしたけれども、自分たちが歌っていなかった曲。だから、ドキドキするね、とか言いながら、作品について話す時間の余裕はなく本番でした。
石丸幹二
――今回の再演にあたっての何かお話をされたりは。
つい先日、今回の歌稽古で、先ほども言いましたが、昔のことに縛られないで、新たな気持ちで臨もうという彼女の思いがすごく強く伝わりました。まっさらな楽譜、まっさらな台本を持って現れて、さすが!と思いました。
私は前回の台本と譜面を持参してまして。いろいろな書き込みを見つつ、前回どういう思いで書き込んだのかな、なんてこと、確認しながらやっていたんですけども。全然違うタイプの人間ですよ(笑)。
「演劇的に正しい道を走れ」 
――初演時は森新太郎さんは初めてのミュージカルの演出だったということですが、森さんの演出は振り返ってみていかがですか。
とても充実した稽古期間でした。森さんは、ミュージカルだって演劇だって同じじゃないかっていうところからスタートされてるんですよね。
そこに音楽が乗って、音楽がいろんな説明をしてくれて、劇がよりドラマチックになってる。けれど、言わなくちゃならないことは一緒だし、いわゆる演劇的に正しい道をしっかり走れっていうことは指示されてました。
ミュージカルの場合、音楽に対して台詞量が突出しないように収まってるんです。そうすると、1つのワードからいろいろなことが出てこなくちゃいけないのに、それがどうしても埋もれてしまう。その辺りに彼はやっぱりもどかしさを感じたんでしょうね。だから一言一言「全部違うでしょう、考えて、変えて」っていうようなことを、何方にも仰っていました。
――今回もまた森さんの演出です。
社会情勢もこれだけ変わりましたからね、改めて本作品に向かうに際して、森さんが考え直さないわけがない。もう抜本的な演出の変更とかあったらどうしようと思っているんですけど(笑)。なきにしもあらずなのでね(笑)。

石丸幹二

――改めて石丸さんが演じられるレオ・フランクという役については教えてください。どんなお役で、どういう思いで演じられてるのか。
レオ・フランクという人は、流されないタイプの人間だと思います。やるべきことは一貫してやり遂げようとする。時代も時代だけれど、逮捕され、裁判を受けても、自分は曲がらないんだ、と。日本でいうところの、武士のような人だなと思っています。
――石丸さんご自身との共通点や何か感じるところはありますか。
最初、あまり共通点はないなと思ったんです。やっぱりここまで背負って生きなくてはいけない人生ではないですから(笑)。とは言いつつも、俳優という、いわゆる世の中の人たちとは違う仕事してる私としては、「人と違う立場で、人からどう思われてるんだろうか」と考えてしまう所に共通項を見出していました。そんな思考回路を、この作品にちょっと投影していったことを思い出します。
とは言え、レオほど、強い信念の持ち主じゃないですから(笑)。だから共通点探しをするというよりは、新たなキャラクターを自分の中に刻んでいく、その作業してましたね。
――再演にあたっての意気込みとも少しかぶる部分があるかもしれないんですけども、今回はレオという役にどういうアプローチをされていくご予定なのでしょう。
あえて変えようという気はありません。やはり戯曲に書かれてることがすべてだと思うので。
ただ前回は、稽古が始まってから、本番の舞台が終わるまでがあっという間だった。公演中に考えたこと、沸き上がった思いを改めて反芻して、今回の演技にどういう風に反映させることができるか、まずはじっくり試してみます。何か変わるかもしれませんし、もうそこはやってみないと分からないですね。
石丸幹二
――堀内さんはじめ、共演者の方についてはいかがですか。一部新キャストが入られていますが。
そうですね。非常に歌唱力があり、そして演技力のある人たちが集まってますのでプラスαが生まれてくるんですよね。前回はそれを大いに楽しみました。
今回新たに、気心の知れた今井清隆さんや福井貴一さんが加わり、作品に新たな風を吹き込んでくれると楽しみにしています。
デビュー30周年 「第三章」のはじまりを考える
――ところで、今年はデビュー30周年の年でした。おめでとうございます。今年2020年はかなり新型コロナウイルスの関係だったりとかでいつもとは違った年ではあったと思うんですけど、ご自身としてはどんな1年でいらっしゃいましたか。
もともとは音楽の人なので、30年ということで、俳優活動よりは音楽活動を主体に過ごす予定でした。色々と企画していたんです。ギタリストとのコラボアルバムのリリースとツアー、オーケストラとのソロコンサート、それに30周年のベスト盤リリースとか。アルバムは皆、無事にリリースできましたが、コンサートはオーケストラコンサートを含め、すべて来年に持ち越しです。それは、残念でしたね。でも、来年がありますから。
――改めて30年を振り返っていかがですか。
そうですね、決して短くはなかったですけども。劇団四季時代を第一章として、その後の第二章という形で歩んできているんですね。第二章ももう、結構な年数になってきたので、ここでそろそろ第三章を考え始めてもよいかな、と。何をもって第三章のスタートとするかは、まだ分からないんですけれども、やはり節目はあった方がいいと思うので。そんなことを常々考えています。
――この『パレード』という作品は、その節目にはなりうるのではないですか。
節目の大きな一つではありますよね。社会派ミュージカルですし、ノンフィクションに近い形のものですし。何かこういうものにチャレンジしていくってことは、ミュージカル俳優としての新しい人生の一つかな。私にとってはね。
ミュージカルって、やはりバラエティ色が強かったり、エンターテインメント性が高かったり、子どもが対象だったり、と、いろいろなものがあるじゃないですか。日本のミュージカルのお客様たちが、あまり馴染みのない社会派のミュージカルを届けていくのも、この年代に入ってきた私の役割の一つかと。だから、今後もそういうものに向き合っていこうという思いは強いです。
石丸幹二
――素晴らしいですね。いやはや、石丸さん、お若くいらっしゃるから、30周年なのかと驚いてしまいます(笑)。
そんなことないですよ、もうくたびれていますよ(笑)。肉体はそうやって変化していくものですし、時代も変わっていって。だって僕がミュージカルを始めた年なんて、まだカセットテープでね、音を聞いている時代ですからね。今や、世の中がものすごく進化して。その中で自分はどのぐらい進歩したんだろうかと思うと、もっともっと変化しなくちゃなって思う。そういう今ですね。だから、時代に向き合いつつ、さらに多くのチャレンジをしていこうという思いがあります。
――改めてミュージカル『パレード』ですけれども、初演をご覧になったお客様もいらっしゃれば、初めてご覧になる方もいらっしゃると思うので、最後にメッセージをお願いします。
ミュージカル『パレード』は、アメリカ、イギリス、世界各国で話題を呼んだ作品です。『パレード』というタイトルは華やかなイメージを喚起しますが、皆さんご覧になって、何が「パレード」だったのか、「パレード」の持つ意味はなんだろうって、きっと考えると思うんです。そして、心の中で何かが変わるはず。そんなチェンジを体験してみませんか。
衣装協力=ジョルジオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパンTel.03-6274-7070)
ヘアメイク=中島康平 スタイリスト=土田拓郎
取材・文=五月女菜穂 撮影=安西美樹

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