天才アーティストとしての
才能が開花した
ドリー・パートンの『ジョリーン』

本作『ジョリーン』について

74年にリリースされた13thアルバムが本作『ジョリーン』である。収録曲は10曲で、2曲の全米1位(「ジョリーン」と「オールウェイズ・ラブ・ユー」)を含む、『コート・オブ・メニー・カラーズ』と並ぶドリーの70年代を代表するアルバムだ。

「ジョリーン」はドリーの数多い自作曲の中で、もっともたくさんのアーティストにカバーされている。日本ではオリビア・ニュートン・ジョンのカバーが有名であるが、80年代にはシスターズ・オブ・マーシー、ストロベリー・スイッチブレイドなどのグループや、21世紀になってからはホワイト・ストライプスやペンタトニックスといったロック系のアーティストによってもカバーされている。

「オールウェイズ・ラブ・ユー」は74年にドリー本人の歌で全米1位を獲得、その後、映画『テキサス1の赤いバラ』(主演も務める)でサントラとして82年に再録音し、この時にも本人のバージョンが1位を獲得している。そして、ホイットニー・ヒューストンが1位を獲得するのは92年で、3回も同じ曲が1位になるというケースは長いポピュラー音楽史のなかでも極めて珍しい。

「アーリー・モーニング・ブリーズ」はアルバム『コート・オブ・メニー・カラーズ』に収録されていたものを再録音しており、彼女は旧作を録音し直すことが少なくない。

本作以降のドリー・パートン

本作以降、70年代のアルバムについては自作曲の割合が増え、大ヒットを飛ばしながら順調にスター街道を突っ走っている。そんな彼女であるが、日本でも大ヒットしたコメディー映画『9時から5時まで』(’80)の出演(ドリー、ジェーン・フォンダ、リリー・トムリンの3人が主演)と主題歌を担当することで大きな転機を迎えることになる。主題歌「9時から5時まで」はカントリーチャートだけでなく、ポップチャート、アダルトコンテンポラリーの3分野で1位となりふたつのグラミー賞を受賞する快挙となった。それだけでなく、ドリーの演技はゴールデングローブ賞などで最優秀女優賞などにノミネートされ、女優としても認められる存在となるのである。音楽においては70年代後半からカントリーからポップスへとクロスオーバーしていき成功を収めている。

その後もリンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリスとの『トリオ』(’87)、ブルーグラスにチャレンジした『ザ・グラス・イズ・ブルー』(’99)や『リトル・スパロウ』(’01)などもある。これまでにリリースしたアルバムはスタジオ録音だけで50枚近い。今年の10月にリリースされた最新盤『ホリー・ドリー・クリスマス』はスタジオアルバムとして47枚目で、すでにカントリーチャートでは1位となっている。ドリー・パートンという才能は74歳になった現在もそのパワーは尽きることがないようだ。もし、彼女の音楽を聴いたことがないなら、これを機会にぜひ聴いてみてほしい。きっと新しい発見があると思います。

TEXT:河崎直人

アルバム『Jolene』1974年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. Jolene
    • 2. When Someone Wants to Leave
    • 3. River of Happiness
    • 4. Early Morning Breeze
    • 5. Highlight of My Life
    • 6. I Will Always Love You
    • 7. Randy
    • 8. Living On Memories of You
    • 9. Lonely Comin' Down
    • 10. It Must Be You
『Jolene』(’74)/Dolly Parton

OKMusic編集部

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