南原清隆と近藤芳正が魅せる幻の二人
芝居、舞台『あんまと泥棒』が開幕

2020年11月27日(金)に、東京・下北沢本多劇場にて舞台『あんまと泥棒』が初日を迎える。
本作は業突く張りな盲目のあんまと、あんまの元に忍び込んだ人のいい泥棒による人情喜劇。1951年にNHKのラジオドラマとして放送されたのち、故・中村勘三郎たっての希望で1966年に舞台化され、その後2019年に気鋭の劇作家・演出家の倉持裕が脚色・再構築。南原清隆、近藤芳正の二人が一日限り2回公演として、愛媛県の伝統ある劇場・内子座にて上演されたものを今回演劇の聖地・本多劇場に持ち込んで上演する。
(左から)近藤芳正、南原清隆  撮影:宮川舞子
初日前日には舞台上で会見が行われ、南原と近藤が黒子スタイルで登場し、作品にまつわる話をして報道陣を笑わせた。
南原清隆  撮影:宮川舞子
昨年の上演について聴かれると、南原は「芝居の途中で夜が明ける場面があるんですが、内子座のカーテンを実際に開けて日光が入ってくる芝居小屋ならではの演出をしました。また昨年はまだ平和だったので、お客さんが座る桟敷のところまで降りて地元の方々と交流する、芝居の原点のような事をさせていただいた」と語り出すと、近藤も「どこの劇場も今は鉄筋コンクリートじゃないですか。でも内子座は木造なのでお客さんの笑い声や拍手の音が木から伝わってくるという初めての体験に興奮しました。振動が全然違うんですよ」と当時の思い出を振りかえっていた。
その後、この作品の出演者として南原にオファーした理由を聴かれた近藤だが、何か違う事を考えているような表情を見せる。南原から声をかけられると「今反省していて。先ほどの質問で内子座の事は話したけれど、本多劇場の事を話してないなって」と口にする。それを見て南原も「この人、ストイックなので構ってあげないとすぐ一人で反省しちゃうんです」とフォロー。近藤は「本多劇場は小劇場のメッカですから。若い時ここに立つ事が目標だったんです。その場所に今立てるという事は本当に幸せな事」と語り、そして改めて南原のオファー理由について触れた。「昔、新人コント大会のお手伝いをする事があって、ウッチャンナンチャンとは顔見知りだったんです。それで、僕はたまに芝居をプロデュースさせていただくんですが、ナンチャンには一度オファーさせていただき脚本を描いたり芝居を作った仲なんです。そして内子座で公演をという段階で『狂言の活動もしていて、各地の劇場に慣れている南原さんがいいかも』と思ってプロデューサーに相談し、指名したんです」と話した。
近藤芳正  撮影:宮川舞子
南原の魅力について近藤は「役と素の自分の出入りが非常にスムーズにできる人。これは役者にはなかなかできない事なんです。それが鮮やかで大好きなんです」と笑顔で説明。その言葉に南原は感謝の言葉を贈りつつ、「近藤さんは僕のアドリブにもきちんと答えてくれる。非常にやりやすいです。大人の役者さんなんです」というと「受け止めきれない事も多々あります」と近藤が笑いながら補足していた。
折しも年末という事で今年を表す漢字一文字は? というお約束の質問が飛ぶと近藤は「二文字なら……八坂神社の禰宜さんと話をした時に『お疲れさまという言葉は良くない。お互いに朝早くから会ってお疲れさま、というのはこれから頑張ろうとしている気持ちを疲れさせてしまうのでは。それよりお楽苦さまという言葉で過ごすことがいいのでは?』と聴いてなるほどなと思いました。だから『楽苦』で」そして南原は「僕は今年いろいろ気づかされたので『絆』ですね。人と人との絆が大切だなって思います」とコメントしていた。
『あんまと泥棒』ゲネプロ写真  撮影:宮川舞子
会見の後行われたゲネプロ(通し稽古)では、会見時と同じく南原が黒衣姿、近藤はグレーの黒衣姿のままで登場し「小堺一機です!」と挨拶、昔放送されていた人気番組『欽ちゃんのどこまでやるの!』の人気キャラクター「クロ子とグレ子」を彷彿とさせ笑いを誘っていた。
『あんまと泥棒』ゲネプロ写真  撮影:宮川舞子
【あらすじ】
泥棒の権太郎(近藤)が、あんまの秀の市(南原)の家へ押し入ったことから始まる物語。権太郎は、秀の市が高利貸しを営みながら小金を貯めていると聞きつけ金を出すように迫るが、秀の市はとぼけるばかり。やがて、ふたりは焼酎を飲みながら身の上話を始め……。
『あんまと泥棒』ゲネプロ写真  撮影:宮川舞子
南原は、どこまでもボケてボケてボケ倒す秀の市を軽妙に演じ、時には今流行りの女性アイドルグループの物まねなども交えて自由に芝居をし、それに対して近藤が様々なツッコミを見せながら話を進行させていた。南原のボケに思わず笑い出してしまう近藤の姿もあり、最初から最後まで肩の力を抜いて楽しめる作品となっていた。
取材・文=こむらさき

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