写真はイメージで、記事中の取材先などとは無関係です。画像提供:フリー素材ドットコム

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ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第174回 cakesのホームレス記事 つい最近、cakesに掲載されたホームレス取材記事が炎上するということがありましたが、あの記事にリンクが貼ってあったnoteの記事があったことで、あそこまで話題になったのだと思います。cakesの記事単体だと微妙な不快感や違和感を感じながらも、そこまで強く感情が動かされる人は少なかったかもしれません。ただ、あのnote読んでしまうと、記事の印象は確実に余計に悪くなりますね。
 ホームレス人生ゲームを製作する記事(現在は消されている。そのアイディアがお気に入りだったみたいで二回も記事をあげていた)が特に話題になってますが、それ以外も色々と困ってしまう文章がたくさんあります。彼らに対する批判に対して、ホームレスがかわいそうな人であるという物語に反する原稿であるために批判されているという意見がありますけど、別にかわいそうな人像に反しているから批判されてるわけじゃないでしょう。一言でいうと単純に失礼な感じなんですよ。対象がホームレスだからどうとかじゃなくて、相手がオタクだろうが、独身中年男性だろうが、フェミニストだろうが、天皇陛下だろうが、ああいう書き方をしたら対象に対して失礼でしかないみたいな文章が多いんです。
 noteではホームレスの人たちに対して個別にアダ名を着けている(本人たちの前では使わず、記事中や夫婦間だけで使っていると思われる)のですが、微妙に「バカにしてるの?」みたいなものがあったり。その中の一人の紹介文に、性欲もあるようだとかわざわざ書いていたり。知的障害者を意味するネット用語とセットで対象をバカにするニュアンスで使われることが多い「パワータイプ」という言葉を「パワータイプのホームレス」みたいな使い方をしていたり。なんか、まだいっぱいあるけどキリがないので。
 あと、あまり何かについて、深く考察しないんですよね、この人たち。ホームレス生活をしている人の中に料理が得意だったり、木を斬り倒すのが得意だったりする人がいたら、「以前はそういう職についてたのかな?」とか想像したりするじゃないですか。彼らは、ホームレス生活をすることでそういう力が引き出されたと考えるんですよ。別に人はホームレス状態になることで別の種族になるわけではないので、個々の技能はかつての個々の生活と連続性があると考えるのが自然だと思うのですが。
 上野公園のホームレスと彼らが交流している河川敷の住人たちを比較して、「田舎に住むおじさん達は、もうちょっと思考をしている顔つきに見えます」「これは、都心に住むホームレスは日雇いの仕事や、炊き出しがあるから生活についておじさん達より考えることが少なくて済む環境にあるのかもしれません。」と書いているのですが、彼らの、のんきで、悪気なく、世間知らずで、思慮が浅く、勉強不足で、文章が雑という特徴が凄く現れています。襲撃される危険性は都会の路上生活者の方が河川敷の人たちよりも高いとか、都会は都会で考えなきゃいけないことも色々あるわけだし、そういうことではないと思うわけで……。
 別にホームレスを扱う文章だからといって、社会派でなければいけないわけではないし、深刻である必要もないのです。しかし、先行しているホームレスに関して取材した色んなタイプの本をちゃんと勉強していれば、ああいう呑気でトンチンカンで、そういうつもりでなくても意図的にバカにしているように見えるようなことを書かずにすんだと思うんですよ。
 彼らの場合、ホームレスに関する知識があまりにも少なかったため、三年間の間に(彼らにとっては)意外な事を非常にたくさん知り、びっくりしたりしながら自分たちの思い込みに気付いてきたんではないでしょうか。ただ、不思議なことに、自分たちが過去に偏見を持っていたことについてどう思っているのか、具体的な言及がないんですよ。だから、あまり偏見が無くなったように見えないんですよね。
 色々な要素が相まってすごく不思議な人に見えるんですけど、文章が雑なせい、下手なせいで余計に変に見えてる部分もあるとは思います。あと、彼らくらい緩い素人は大勢いるんだと思います。ただ、彼らを選んだ編集者側の方が彼らより絶対ヤバい。別に編集の人が、あの文章を読んで不快に思わなくてもいいんですよ。一定数以上そういう人がいるのもわかるし。しかし、あれを不快に感じる人が多数存在する可能性に気付かないというのがヤバいんです。編集者としての仕事を全然果たせてないじゃないですか。変な穴を埋めてあげなきゃいけないのに、逆にリード文で悪い方にリードするし。彼らを晒しものにしたかったのでしょうか……。noteにしても、あんな内容のnoteあったら批判されるに決まってますよね。ホームレス人生ゲームのエントリーとか先に消させないですか? なんで、わざわざnote貼っちゃうかな……って同じ会社の姉妹コンテンツだから、貼るのが普通ですけど、そんならnoteの内容も先にチェックしてからにしないと。あ、チェックした上で何も思わなかったんだったらどうしよう……。
 あそこ、幡野広志氏が人生相談でやらかしたばかりじゃないですか。あれも編集者が仕事できてなかったですよね。幡野氏が相談者を嘘つき呼ばわりしたのもひどかったですけど、相談者が夫につかれた嘘の内容を差して、こんなの嘘だと相談者を嘘つきだと断定する材料にしたところ! 要するに、相談の内容を全然読めてないんです。せめて編集者はそこは指摘しなきゃだめでしょう。それとも、氏に恥をかかすためにわざと……?
 あのホームレス記事がnoteにあげられただけなら、他のエントリー同様にクオリティ相応の人数の目にしか触れることなく、炎上することもなかったと思います。メディアに掲載されてしまえば、同じ内容でも見る人の数も違うし、見られ方も、内容に対する責任も変わってしまう。ああいう状態であれを掲載させた人は本当に罪作りなことをしたと思うし、色々と「あそこ大丈夫?」という感じになっちゃいますな。
(隔週金曜連載)
【編注】
cakes……有名クリエイターなどの記事がたくさん読める、有料(一部無料)サイト。編集部発注型。
note……投稿プラットフォーム。自由に参加し、文章などさまざまなコンテンツを発表できる。自分の記事を販売することも可能。
Photo:写真はイメージで、記事中の取材先などとは無関係です。画像提供:フリー素材ドットコム
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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