11月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」お勧
め3作品の見どころ紹介/ホーム・シ
アトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1
-2-3 [vol.40] <宝塚編>

おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)

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11月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」​お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由
【1】『アクアヴィーテ(aquavitae)!!~生命の水~』('20年宙組・東京・千秋楽)
【2】『心中・恋の大和路-近松門左衛門作「冥途の飛脚」より-』('98年雪組・バウ)
【3】『満天星大夜總会-THE STAR DUST PARTY-』(’ 03年宙組・宝塚)

宝塚歌劇専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」の11月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!

【1】『アクアヴィーテ(aquavitae)!!~生命の水~』('20年宙組・東京・千秋楽)
『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』~生命の水~('20年宙組・東京・千秋楽)真風涼帆  (c)宝塚歌劇団 (c)宝塚クリエイティブアーツ
『EXCITER!!』『CONGA!!』といったヒット・ショーを放ってきた藤井大介には、お酒をテーマにした作品群がある。カクテルをテーマにした『Cocktail―カクテル―』。ワインをテーマにした『Santé!! 〜最高級ワインをあなたに〜』。そして、第三弾として登場したのが、ウイスキーをテーマにした『アクアヴィーテ(aquavitae)!!~生命の水~』(『El Japón-イスパニアのサムライ-』と2本立てで上演)である。
宙組トップスター真風涼帆が、ウイスキーグラスを片手にガウン姿で登場し、大人の魅力をふりまく。舞台後方に設置されたバーカウンターを、宙組生が次から次へと飛び越え、客席へ攻めてくる感じのオープニングも印象に残る。ウイスキーにちなみ、こっくりとした色合いの衣装も魅力的。そしてそして、もっともインパクト大だったシーンはといえば。石川さゆりの名曲「ウイスキーが、お好きでしょ」に乗って、真風、芹香斗亜、桜木みなとの三人の男役が、客席降りし、観客と交流する場面。そのとき、それぞれが口にする口説き文句が、すごい。こんな言葉を真顔で成立させられるとは、熟練された宝塚の男役芸ってすごすぎる……と、照れながら感服してしまうような、それはそれは甘い甘いセリフ。書いたら赤面してしまうので、具体的な内容についてはぜひ放送にてお確かめのほどを。
このとき、三人はグラスを手にしており、公演グッズとして販売された「ロックグラス」を手にした観客と乾杯を交わした。そして続く場面では、出演者の大勢が客席降りし、グラスを片手に歌い踊るという趣向が凝らされていた。たった一年前のことなのに、今となっては実に様変わりしたものだと思わずにはいられないが、人類はいつかウイルスに打ち勝ち、客席降りの演出もまた復活する。その日が遠くないことを夢見て、今は魅惑のウイスキーの世界に酔いしれようではないか。
★放送:11月15日(15:15)、18日(01:15)、23日(20:15) ※12月放送あり
【2】『心中・恋の大和路-近松門左衛門作「冥途の飛脚」より-』('98年雪組・バウ)
飛脚問屋の養子忠兵衛と遊女梅川との悲恋を描いた、近松門左衛門の浄瑠璃『冥途の飛脚』。梅川を身請けしたいばかりに、忠兵衛が客からの預かり金に手を付けてしまう場面は“封印切”として知られ、成立から三百年以上たった今でも、作品及びこれを基とした演目が、人形浄瑠璃や歌舞伎で上演され続けている。
この名作をミュージカル化したのが、1979年初演の『心中・恋の大和路』である。菅沼潤が作・演出を手がけ、亀屋忠兵衛に星組トップスター瀬戸内美八、梅川にトップ娘役遥くらら、忠兵衛の友人、丹波屋八右衛門に峰さを理という配役で上演された。好評を博し、以後、瀬戸内自身がトップ時代に一度、退団後に三度再演している他、宝塚において1989年、1998年、2014年にも再演されている。今月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」で放送されるのは、汐風幸が主演した1998年の雪組バージョン(宝塚バウホール公演)で、このときから谷正純が潤色・演出を担当している。つかこうへいの『蒲田行進曲』を原作とする『銀ちゃんの恋』の1996年初演で難役ヤスを演じるなど、芝居巧者で知られた汐風幸は、十五代目片岡仁左衛門の長女。『心中・恋の大和路』では、父の当たり役忠兵衛を演じるということも話題を呼んだ。
作品初演の1979年といえば、近松の『冥途の飛脚』『緋縮緬卯月の紅葉』『卯月の潤色』を元に秋元松代が書いた『近松心中物語』が、蜷川幸雄演出で帝国劇場で上演されて大ヒットした年。興味深いことに、『心中・恋の大和路』も、『近松心中物語』も、『冥途の飛脚』とは悲恋の結末が異なっている。『冥途の飛脚』では、逃げた二人は捕らえられてしまい、引っ立てられていく。『近松心中物語』では、雪景色の中、二人は心中を図る。――では、『心中・恋の大和路』では? そのエンディングの名シーンに、宝塚のロマンを見る思いがする。ぜひ放送でお確かめを。
★放送:11月18日(24:00)
【3】『満天星大夜總会-THE STAR DUST PARTY-』(’ 03年宙組・宝塚)
『BLUE・MOON・BLUE』『RIO DE BRAVO!!』『ROYAL STRAIGHT FLASH!!』等、齋藤吉正作品が一挙放送されている今月。なかでもひときわインパクト大なのが、『満天星大夜總会』(『傭兵ピエール-ジャンヌ・ダルクの恋人-』と2本立てで上演)の<銀幕街頭>の場面である。宙組トップ娘役花總まり扮するスリの少女“HANACHANG”は街角でスカウトされ、一躍アイドルに。ミントグリーン基調のコスチューム&ブーツとハットといういでたちが、フィギュアのようにキュートである。「♪そこの君もメロメロでしょ/無敵のHANACHANG」と歌い、銀橋を渡る彼女の後ろでは、その虜となった人々が「♪GO GO HANACHANG/HANACHANG命~」と”オタ芸“を繰り広げる――突き抜けた演出で話題を呼んできた齋藤作品の中でも、突き抜けて破天荒なシーンである。
花總まりはこの秋、宝塚の大先輩大地真央とアメリカの喜劇王ニール・サイモンの『おかしな二人』にダブル主演。作中、ヘラジカの鳴き声にもたとえられる不思議発声も聞かせるなど、神経質な女性を演じて大いに笑いを誘い、コメディエンヌぶりを発揮した。皇后や女王を演じる姿の印象が強いが、その根底に、“HANACHANG”での突き抜けた境地が存在することを再確認。同じころ、檀れいが『恋、燃ゆる。~秋元松代作「おさんの恋」より』に主演していたのだけれども、体当たりで恋に生きるその姿にも、かつて『BLUE・MOON・BLUE』で”赤い花“として揺れていた強烈な印象の記憶を見出し、おおと思った次第。齋藤吉正のはじけた演出を体現し切った舞台人は、強い。ということは。齋藤の最新作『NOW! ZOOM ME!!』で某名作教師ドラマのパロディ“アヤナギ先生”を長髪を振り乱して熱演した彩凪翔の今後も、大いに楽しみになってくるというものではないか。
★放送:11月25日(13:00)
文=藤本真由(舞台評論家)

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