Base Ball Bear、“音楽の面白さ”を
推し進めるロックなルーツと全方位的
コラボ

『FaRao Music Discovery』、第二回の登場は6月4日に久々のニューアルバム『二十九歳』をリリースするBase Ball Bear。ルーツを中心にそのアーティストの周りに広がるさまざまなつながりを探っていくこの連載だけれども、彼ら、特にバンドを率いるソングライター小出祐介(Vo&Gu)の縦横無尽なコネクションは驚きの幅広さを持っている。ここでは、そのひとつひとつをつまびらかに解き明かしていこう。

もともと2001年、同じ高校に通っていた4人で結成されたバンドであるBase Ball Bear。2003年にミニアルバム『夕方ジェネレーション』をインディーズでリリースし、2006年にミニアルバム『GIRL FRIEND』でメジャーデビューに至っている。それ以前、そもそも中学生時代の小出祐介がギターと出会うきっかけになったのは、ディープ・パープルだったとか。そこからレッド・ツェッペリンなど70年代のハードロック、XTCなど80年代のニューウェイブ、オアシスなど90年代のブリットポップと、幅広く洋楽を聴いて咀嚼しきた思春期を過ごしてきた彼は、同時にナンバーガールやスーパーカーや中村一義という90年代後半の日本のロックの洗礼を浴び、そこからも強い影響を受けている。特に1stアルバムの『C』から3rdアルバムの『(WHAT IS THE) LOVE & POP?』までの彼らは、そういったギターロックやギターポップの影響のもとに、その甘酸っぱさや衝動感を独自のやり方で追求するような楽曲を鳴らしていた。
その音楽性がグッと進化し、より自由なものとなっていったのは、“3.5thアルバム”と位置付けた2010年の2枚同発のコンセプトアルバム『CYPRESS GIRLS』『DETECTIVE BOYS』を発表してから。山口一郎(サカナクション)、acco(チャットモンチー)、呂布(ex.ズットズレテルズ)という盟友とも言えるミュージシャンとコラボを果たし、バンドの新しい可能性を切り拓く。ここでのコラボは、山口一郎が作曲、小出祐介が作詞を担当した南波志帆の「こどなの階段」にも結実している。
そして、この頃からデビュー時にはそこまでおおっぴらには明かしていなかった小出祐介のアイドルファンっぷりが、ラジオ番組や雑誌の連載を通じて明らかになっていく。Berryz工房の嗣永桃子へのリスペクトを熱く語ったり、乃木坂46の楽曲を“私的アイドルソングベスト”に選んだり、バンドの主催イベントに東京女子流を呼んで共演したりと、アイドルに造詣が深いことが広く知られていった。2010年代に入ってロックシーンとアイドルシーンの距離感がどんどん近くなっていったことは周知の通りだが、バンドマンとしてその一翼を担う存在となったのが彼であったことは特筆すべきことだろう。
2011年に4枚目のアルバム『新呼吸』をリリースしたBase Ball Bearは、2012年以降、また新たなチャレンジを繰り広げることになる。そのキーワードとなったのが、コラボ。世代やジャンルの異なる相手とも果敢にコラボレーションを行ない、自分たちの音楽性をさらに広げる試みを実現させていくのである。
2012年にリリースされたミニアルバム『初恋』では「ぼくらのfrai awei」でヒャダインと、そして「君はノンフィクション」で小出祐介のルーツのひとつでもある岡村靖幸と共作。その後にはヒャダインのシングル「23時40分」にBase Ball Bear名義でも参加。最近では“岡村靖幸w小出祐介”名義で漫画家・久保ミツロウがジャケットとアートワークを担当したシングル「愛はおしゃれじゃない」もリリースされている。
さらに2013年のミニアルバム『THE CUT』では、表題曲「The Cut -feat. RHYMESTER-」でRHYMESTERを、そして「恋する感覚 -feat. 花澤香菜-」では声優・花澤香菜をフィーチャリングに迎えての楽曲制作が実現している。
バンド活動と並行して、小出祐介が作曲家として楽曲提供を行なうことも多くなってきた。アイドリング!!!のリーダー遠藤舞のデビュー曲「Today is The Day」を書き下ろしたり、花澤香菜の2ndアルバム『25』に「last contrast」という曲で参加したりと、こちらも多彩な才能を発揮している。
他にもベッキー♪♯やtofubeatsなどなど、バンドの枠組みを軽く飛び越え、まさに全方位的なコラボを繰り広げている小出祐介とBase Ball Bear。彼らの魅力である、音楽の面白さを力ずくで切り拓いていくエネルギーの秘密も、そんなところにあるのかもしれない。

著者:柴 那典

OKMusic編集部

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