『OSAKA GENKi PARK』オフィシャルラ
イブレポート【東の広場 PARK STAGE
】2日目ーーコブクロ、高橋優ら全5組
が、10月の大阪に夏を呼び戻す

『大阪文化芸術フェス presents OSAKA GENKi PARK』2020.10.11(SUN)東の広場 PARK STAGE
10月11日(日)、『大阪文化芸術フェス presents OSAKA GENKi PARK』2日目。「太陽の塔」を斜め後ろから、そして「EXPOCITY」の観覧車「Redhorse OSAKA WHEEL」をほぼ正面に望む「東の広場 PARK STAGE」には、熱量たっぷりのパフォーマンスで会場を沸騰させる5組のアーティストが競演。開始前にも麒麟・田村裕とFM802のDJ・落合健太郎が登壇し、話術で会場をウォームアップして定刻12:00、ついにその幕が上がる。
KANA-BOON
この日のトップを飾るのは、地元・大阪出身のKANA-BOON!半袖でも汗ばむ暑さに谷口鮪(Vo.Gt)は「秋フェスのつもりで来たんですけど」と言いつつ、「(今年少なかった)夏フェスの分も盛り上げていこうと思います」と、キラーチューンの2連発でスタートダッシュをかける。まず大クラップを起こして始まった「なんでもねだり」では、古賀隼斗(Gt)のギターソロと谷口のボーカルでワクワクを煽り、予告どおりの夏フェス気分。うす曇りだった会場にも日が差し出す。
KANA-BOON
そしてテンポを上げた「シルエット」では、オーディエンスがうなずくようにリズムを取り、爽快感のあるサビでは開いたり閉じたりする多くの手が頭上で踊る。しかもここで、有観客ライブでは初披露となる11月25日(水)発表の新曲「Torch of Liberty」も投下。細かなクラップが刻まれる不敵な序盤から、彼ららしい愛嬌のあるサビへと展開して解放感も抜群だ。
谷口鮪(KANA-BOON / Vo.Gt)
また「好きに自由に踊ってください!」(谷口)と繋げるのは「アスター」で、独り言のように綴られる小気味いいライムが頭の中でぐるぐるとリピートする。
ここまでで会場は既にKANA-BOON色に染められたものの、「俺らがみんなの分も歌います」(谷口)と、後半戦もまだまだパワー全開!人気曲「ないものねだり」では、谷口の歌声にのって、おなじみの<ゆらゆらゆらゆら>のコールが聞こえないはずなのに聞こえてくるよう。
小泉貴裕(KANA-BOON / Dr)
そして「まっさら」で勢いは増していくつもの拳が突き上がる。上昇し広がりを感じる音像や谷口の「Wow、Wow」の叫びに触発されるように、再び曇っていた上空には夏のような強い太陽が出現。するとクライマックスに向け、谷口は「困難な時期ですよね。僕らは3人になって1年が経とうとしていて、何とかやってこれて、バンドも楽しくできてるし、新曲もできて……。こうやって僕らがやってきたように困難は乗り切れるのかなと思います。希望は捨てないでいて欲しいです」と語り、加えて「今日来ている人は自分の好きなものを守って未来に繋ごうとしている人だから、このライブに来たことを誇りに思ってください」と続け、締めくくりに「スターマーカー」をセレクト。
古賀隼斗(KANA-BOON / Gt)
ポジティブなメッセージを耳なじみの良いサウンドに乗せ、人々を気分よく弾ませてくれた。彼らがホーム・大阪で見せた堂々たるアクトに、2日目の「東の広場 PARK STAGE」もいい予感しかしない!
●HY
HY
KANA-BOON からバトンを受け取ったHYは、沖縄音楽のSEで現れると 「ハイサイ」(こんにちは)のポーズを作って早々に会場を南国のハッピーモードにチェンジし、代表曲「AM11:00」から今度はメロウなひと時へ。
新里英之(HY / Vo.Gt)
新里英之(Vo.Gt)の優しい歌声に、仲宗根泉(Key.Vo)のソウルフルなボーカルに、名嘉俊(Dr)の力強いラップに……と、HYの音楽の醍醐味がいきなり満載だ。そしてHYと言えば!の絶品MCも惜しみなく序盤から発動。
新里は最前列のファンに「あなたの気持ちを代弁していいですか?」と語りかけると、「ほんまHYに会えてよかったわ~。たこ焼きと同じくらいHY、好きやわ~」と関西弁で爆笑を誘う。また負けじと仲宗根も自身が始めたYouTubeの話で自虐ネタ。「(登録者30万人が目標なのに)今は6000人!」と悲しい表情と鍵盤の調べ。
仲宗根泉(HY / Key.Vo)
しかし、これが見事に<それでもいい>と始まる「366日」への動線となって、その落差に驚きながらも誰もが知る名曲へ。胸を締めつけるエモーショナルなバラードは一気に曲の中へと引き込み、観客は噛みしめるように聴き入りながら揺らめく。徐々に熱を上げる歌声はなんともドラマチックだ。
名嘉俊(HY / Dr)
見どころはさらに続き、次は「みんなのおかげで20周年を迎えることができました。今のHYを感じて欲しくて新曲を歌います」(新里)と、9月22日(火)、HYの日にリリースした「ココロホシゾラ」へ。曲の前に練習した手を結んで開く“キラキラジェスチャー”が星のように会場中で瞬いて、小さな幸せの大切さを伝える曲の多幸感は倍増。小さな子もジャンプして喜んでいる。と、思えば次の「ホワイトビーチ」では全員でサイドステップ。その動きは浜辺に寄せては返す波のようでもあり、彼らの奏でる音楽が沖縄の大自然を脳内で蘇らせる。
許田信介(HY / Ba)
そしてトドメはライブでしかやらない特別な曲「フェイバリットソング」。メンバーの「イーヤサッサ」の合いの手に合わせ、人々は沖縄伝統の踊り・カチャーシーで最高潮に!太陽も照りつけ、これぞフェス!といった光景が広がり、楽しさいっぱいのままでHYのステージは幕を下ろした。キャリア20年のベテランらしい圧倒的なコミュケーション力で繰り広げるライブは、初見の人たちの記憶にもしっかりと刻まれたことだろう。
高橋優
15:00過ぎ、曇天の会場に熱をもたらしたのは高橋優。先制攻撃とばかりにアグレッシブな「ルポルタージュ」を1曲目に選ぶと、巻き舌気味でふてぶてしくもあるボーカルや、かき鳴らすギターで観客をたきつけ、照明も点滅して会場のテンションも上向きに!そして 「大阪のみんな、会いたかったですよ!」と雄叫んで、今度は「虹」の伸びやかな歌声と、<前へ 前へ>の言葉ですべての人の背中を強く押す。これに呼応するようにオーディエンスは前方に伸ばした手をアップ&ダウン。見えない虹が会場にかけられる。
だが、MCタイムとなれば、どこか飄々としつつのいつもの早口。「実は人を前にして歌うのは7か月ぶりなんですよ。いや~長かったな」と感慨深げ。それにはさらなる理由があり、「昨年12月からの全国ツアーが中止になっちゃったんですよ。そのファイナルの地が大阪の予定だったんです。切なかったなあ」と吐露。
高橋優
また、そのリベンジを誓いながら自粛期間中に部屋でできたという「room」を皮切りに、ここからは10月21日(水)に発表するアルバム『PERSONALITY』収録の3曲を立て続ける。
3つのナンバーはそれぞれ違った個性で、多面的な彼の音楽の魅力を再確認。パブリックイメージを覆すような「room」は、デジタルサウンドも織り交ぜたダンサブルな横ノリ。色っぽい鍵盤の音色と競うように高橋の歌声も艶を増したりまくし立てたり……。
そして次はそれと対照的なバラード「自由が丘」を並べ、ピアノを背景に紡ぐモノローグのようなAメロから熱量の高いサビへの高まりに目も耳も釘付けに!誰もがじっと佇んで曲に集中。曲後にはジワッと熱い拍手が沸き起こる。また3曲目は、「いけますか? 大阪!」と、さわやかな「one stroke」でクラップも発生させ、掲げられた手はひらひらと舞う。
高橋優
すると「みんなの声はちゃんと聞こえてるからね!」と心が通じ合ったのを確信させるひと言を放って、ラストは人気曲「明日はきっといい日になる」へ。モニターには高橋の笑顔も映し出され、「心の声を聞かせてください!」の呼びかけに手拍子はますます大きくなる。不安を吹き飛ばしてくれる言葉とギターに、ファンはハートの充電完了!こんな時代だからこそ、強くしなやかな彼の音楽からいつも以上に大きな力を受け取ることができた。
MONGOL800
夕暮れ間近、MONGOL800は上江洌 清作(Ba.Vo)の「『OSAKA GENKi PARK』、あっそびっましょ~!」と、いつもの元気な掛け声で少し肌寒くなってきた会場に沖縄の熱風を連れて登場。まずは大定番の「あなたに」の痛快なビートとサビで大観衆に火をつける。もちろん誰もが手を振り上げて大歓迎の様相で、そのまま「Love song」でも駆け抜けるようなスピード感を満喫。なかにはマスクをもごもごさせ声を抑えつつリップシンクしている人の姿も……。
上江洌 清作(MONGOL800 / Ba.Vo)
加えて、これでもか!というように、自然と体が動き出すスカナンバー「DON'T WORRY BE HAPPY」を続けるから、タオルを高く掲げて踊る人も続出。刻まれるギターも歌うベースも重なる3人の声も問答無用の楽しさで、歌詞にあるとおり、まさに<Happy Sunday>の状態だ。そんななか、寝起きドッキリのような小声の「おはようございます」から始まった清作のMCもチャーミング。「みんなマスクしていて偉い!」と来場者を褒めたあとには、「(今日、観客は)声を出せない……MONGOL800にとっては致命的になりそうなんですが(笑)」と和ませ、「それでも一生懸命やるんで楽しんでいってください!」という頼もしいコメントで、「神様」から後半戦に突入する。
髙里 悟(MONGOL800 / Dr.Vo)
静かなイントロから奏でられる曲は、清作の低音が柔らかく包み、強さも優しさも感じさせ、<神様お願いがあるのです>の歌詞がどこか幻想的にも響く。また、そこから反動をつけての「face to face」は疾走感がたまらないうえ、彼ららしい耳心地いいメロディも気分を上げてくれる。
MONGOL800
そして日が傾くのを感じながら再びMCタイムへ。「(今年のライブは)今日が2本目」(清作)と少しばかりしみじみするが、「こんなに暑かったらもう夏フェスと呼びましょう(笑)。沖縄と同じくらいアツいです!」と、日中の最高気温が27℃近くになった会場で夏気分を煽り、最後に大空間にヒットナンバー「小さな恋のうた」を放つ。歓声がない分、いつもよりしっかりと聴こえる3人の声と言葉は胸を打ち、最後列の人たちも拳を上げずにいられない。ミュートのシーンでは清作がオーディエンスにマイクを向けて心の声を拾うと、「ありがとう。また遊びましょう!」と、再会を誓って名曲でゴールテープを切り、2020年の“モンパチの夏フェス”は終了した。
コブクロ-Road to 2025 SPECIAL LIVE-
コブクロ
日も暮れた18:00頃、FM802のDJ・大抜卓人によって、その存在の大きさや大阪出身のミュージシャンへの影響が語られると、いよいよ2日連続出演かつ今日のヘッドライナーで、大阪が誇るスター・コブクロの出番!「最高の呼び込みありがとうございます。こんなに気持ちよくステージに立てたのは初めてです(笑)!」(小渕健太郎)とご機嫌で姿を現すと、大阪マラソンのテーマ「大阪SOUL」で地元愛に満ちてライブはスタート。
みずみずしい2人の声、厚みあるバンドサウンド、振られるペンライト、きらめく照明と何とも華やか。そして次の「Million Films」では2人特有の美しいハーモニーとメロディでじんわりとさせ、これもまたコブクロ印の爆笑MCへ。小渕が「(今年の有観客ライブは)昨日が初めてで……きっと今日が最後です(笑)」と、久々のライブの喜びを冗談も交え述べると、すかさず黒田俊介が「コブクロのスケジュール、勝手に決めんなよ(笑)」とツッコミ、そこからはネタだろうか? と思うほどの絶妙な掛け合いであっという間に観客の心を解きほぐす。
とは言え、曲となれば彼らの歌の力はやはり絶大!「卒業」「桜」という「歌で勝負!」とも言える2曲を続ければ、切ない別れの情景も桜吹雪が舞い散るシーンも鮮明に描き出し、心を揺さぶる。そんな春の時間を味わったあとは、「2025年の『大阪・関西万博』テーマソングを書いてください!とご指名をいただきました」(小渕)と嬉しい報告を挟んで、10月14日(水)発表の新曲「灯ル祈リ」もお披露目。困難の多い今の時代に2人が伝えたいことを込めた重厚で壮大なバラードは聴く者の動きを止め、曲後には拍手がなかなか鳴りやまなくなる。
コブクロ
しかし、終盤に入っても強力MCタイムは続行され、途中、黒田は勢い余って次の曲名もポロリ。これには今度は小渕が畳みかけてツッコミ、話が次々と広がって小渕による演歌歌手とハトのモノマネも飛び出す。観ている方は笑い声を抑えるのに必死だ。そして、その次の曲というのは、コブクロを敬愛するflumpoolの山村・阪井が、昨日「お祭り広場 GENKi STAGE」でカバーした「轍-わだち-」。黒田のボーカルと小渕のギター、さらに手拍子が一つになって高揚感も十分なのに加え、スピードもボリュームも緩急つけて1曲分以上の聴きごたえ。しかもその幸せな空気は最終の「どんな空でも」の一体感で何倍にも膨らむ。全員が大きく手を左右に振り、<いつしか晴れるよ>の言葉がグッと染み渡って、ついに終わりの時に。感動と笑顔にあふれた最高の約50分間に、会場からは2人への感謝と称賛を意味する大拍手が惜しみなく贈られた。
コブクロ
春以降、思い切りライブを楽しめる機会が少なかった2020年。制限の多いなかでの開催ではあったが、この会場に鳴り響いた音楽と熱い気持ちは、今日訪れた人々を存分に癒したに違いない。
取材・文=服田昌子 撮影=田浦ボン

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