イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出の舞台
3作品を東京芸術劇場で連続上映

東京芸術劇場は、東京芸術祭2020・芸劇オータムセレクション作品として、2020年11月6日(金)から11月8日(日)まで、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出舞台3作品の日本語字幕付き連続上映会をおこなう。本来、同劇場では同日程において、ヴァン・ホーヴェ率いる劇団、ITA(インターナショナル・シアター・アムステルダム)による破天荒な超大作『ローマ悲劇』(シェイクスピアのローマ悲劇三部作『コリオレイナス』『ジュリアス・シーザー』『アントニーとクレオパトラ』より)の来日公演がおこなわれる予定だったが、コロナ禍で中止となった。その代替としてITA から届いた企画が、本上映会だ。
上映ラインナップは、ジョン・カサヴェテス映画の舞台化で、客席を巧みに取り込み生のビデオ映像を駆使する独特のスタイルで演出した『オープニング・ナイト』、男と女のパワーゲームを描くシェイクスピアの問題作に現代を見事に照射した『じゃじゃ馬ならし』、そして舞台、映画、オペラ、バレエなどに作品化されたジャン・コクトーの原作、孤独な女性が電話口で取り戻せぬ愛を求める姿を描く一人芝居『声』の3作品。いずれもヴァン・ホーヴェ演出、ITAの珠玉の俳優陣の出演による傑作舞台で、東京芸術劇場プレイハウスに大型スクリーンを特設、日本語字幕付きで本邦初上映をおこなう。
ヴァン・ホーヴェは洗練された美しさと挑発的な鋭さを併せ持つ舞台作りで、世界中の演劇ファンを熱狂させているオランダの演出家だ(出身はベルギー)。2014年パリ・オデオン座初演の『橋からの眺め』は、ロンドン上演でオリヴィエ賞最優秀演出賞(2015年)、ブロードウェイ上演ではトニー賞最優秀リヴァイヴァル演劇作品賞と最優秀演出賞を受賞した(2016年)。以降、デヴィッド・ボウイの遺作となった音楽劇『ラザルス』(2016年)の演出をボウイから指名されるなど、世界を股にかけた快進撃が続く。日本ではSPAC春の芸術祭での『じゃじゃ馬ならし』(2009年)で本邦初登場、東京初上陸となった『オセロー』(2017年)が絶賛を浴び、「ナショナル・シアター・ライブ」では『橋からの眺め』『ヘッダ・ガーブレル』などの上映が人気を集めた。
だが、コロナ禍により、2020年2月に公式開幕したブロードウェイ新演出版『ウエスト・サイド・ストーリー』(振付:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル!)が3月に中断を余儀なくされ、また、2020年9月に新国立劇場で上演予定だった『ガラスの動物園』や東京芸術劇場の『ローマ悲劇』も公演中止となって、「ナショナル・シアター・ライブ」の『イヴの総て』(日本では2019年11月上映、2020年3月アンコール上映)を最後に、日本の演劇ファンは“ヴァン・ホーヴェ・ロス”に陥っていた。それだけに今回の上映企画は朗報となった。
◇東京芸術劇場 『イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出作品 上映会』 上映作品
『オープニング・ナイト』Opening Night
■原作:ジョン・カサヴェテス
■演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
■出演:Elsie de Brauw, Chris Nietvelt, Fedja van Huêt,Jacob Derwig, Katja Herbers ほか
■初演:2006年
■上映時間:90分
■本国公式作品解説:https://tga.nl/en/productions/opening-night
「オープニング・ナイト」が描くのは、新作「二番目の妻」の初日を間近に控え、波乱の日々を送る劇団の舞台裏。物語はプレビュー初日から始まり、3 日後の本初日の夜に終わる。昼間はうまくいかないシーンを稽古し、夜には公演を行う。「第二の妻」のシーンが、稽古、話し合い、役者同士の葛藤や個人的な会話を通じて、変容していく。劇団の看板女優マートル・ゴードンは、問題を抱えている。演じる役は、盛りをすぎているのに若さに執着する女性で、彼女は全く共感できず、なんとかその人物に希望を持たせようとする。それ以上に彼女が気にしているのは、舞台上で共演する男優に横っ面を張られることだ。そして、その俳優モーリスは、まさしく彼女の前夫なのだった。平手打ちは明らかに見せかけなのだが、彼女にはあまりにリアルに感じられるのだ。プレビュー初日の夜、サインをあげた若い女性ファンがその直後に車にはねられて死ぬのを目撃したマートルは、現実と芝居の区別がつかなくなる。事故の残像が頭を離れず、自分の役を死んだナンシーと重ね合わせていく。役をつかもうとして、空想の中に何度もナンシーを蘇らせるのだが、ナンシーは恵みを与えるのではなく、次第に呪いとなっていく。気づくとマートルは死んだ女性に依存し、共演者は彼女が狂気すれすれの状態にあると気づく。マートルがそこから抜け出す道はただ一つ。生存本能の命じるまま、彼女は若き自分のイメージを殺す…。
『オープニング・ナイト』  (c)Jan Versweyveld

『じゃじゃ馬ならし』The Taming of the Shrew
■原作:ウィリアム・シェイクスピア
■演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
■出演:Hans Kesting. Helina Reijin, Hugo Koolschijn, Eelco Smiths ほか
■初演:2005年
■上映時間:115分
■本国公式作品解説:https://tga.nl/en/productions/het-temmen-van-de-feeks
2017 東京芸術祭来日公演「オセロー」主演、劇団を代表する名優 Hans Kesting と、「声」「オブセッション」の Helina Reijin が熾烈なバトルを繰り広げるカップルを演じる。2009 年 SPAC 春の芸術祭で来日した問題作。
パドゥアの豪商 パブティスタには二人の娘がいる。妹のビアンカはかわいいが、姉のカタリーナは手に負えないじゃじゃ馬だ。パブティスタは 姉のカタリーナが嫁ぐまでは、ビアンカは結婚させないと宣言。ピサの裕福な商人の息子で学生のルーセンシオは、ビアンカに恋する。音楽と詩の家庭教師としてパブティスタ家にもぐりこみ、ビアンカに接近する。一方、ヴェローナのゴロツキ、ペトルーキオはリッチな妻をゲットして一攫千金をたくらみ、パドゥアに乗り込む。もう一人のビアンカの求婚者、ホーテンショーがペトルーキオの目をカタリーナに向ける。彼女の口汚いののしりと火のような気性のことを忠告されたペトルーキオは、闘志を燃やす。ついに、彼女の愛を勝ち得たペトルーキオ、そして彼女を手に入れるのにかかった費用は、ホーテンショーともう一人のビアンカへの求婚者 グレミオがかぶるのだった。
『じゃじゃ馬ならし』 (c)Jan Versweyveld

『声』The Human Voice
■原作:ジャン・コクトー
■演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴエ
■出演:Helina Reijn
■初演:2009年
■上映時間:70分
■本国公式作品解説:https://tga.nl/en/productions/la-voix-humaine
ニューヨーク、セント・ペテルスブルク、トロント、ダブリン、シドニー、ウーツェン、バルセロナ、香港ほかで上演されてきた、感動の一人芝居。一人の女性が、別れた男に、もう一度やり直せないか、最後の願いをこめて電話をかける。しかし次第に、彼が既に別の女性を選んでしまったことに気づく。Helina Reijin が、この女性の哀しみ、失った愛への未練に観客をいざなう。「台本があまりにも腑に落ちて、稽古初日からこの女性の物語のとりこになってしまった。すべてが私も身に覚えのあることのように思えて。ただのラヴ・ストーリーではない、これは、ここに存在する権利を求める彼女の必死の叫びだ」 Helina Reijin。
『声』  (c)Jan Versweyveld
◇ITA(インターナショナル・シアター・アムステルダム)について
アムステルダム市立劇場とトネールグループ・アムステルダムが 2018年1月に合併し、ITA(インターナショナル・シアター・アムステルダム)の名のもとに 18/19年のシーズンから活動開始。オランダからトップレベル現代演劇を創作し、世界の劇界をリードする存在。年間600回の演劇・ダンス公演の上演や、社会プログラムを行い、幅広い観客に世界の新たな理解の仕方、見方を提示している。

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