花村想太、平間壮一らキャスト20名が
登壇 ミュージカル『RENT』2020年版
製作発表レポート

ファン待望の日本版『RENT』が、実に3年ぶりに上演される。初日まで1ヶ月を切った2020年10月8日(木)夜、都内にて本公演の製作発表が開催された。その模様はYouTube東宝演劇チャンネルでライブ配信されるという、異例の製作発表となった。ここでは現地の様子を写真と共にレポートする。
『RENT』は1996年にニューヨークのオフ・ブロードウェイで誕生して以来、世界中の人々に愛され続ける人気ロックミュージカルだ。物語の舞台は1991年のニューヨーク。HIV、ドラッグ、貧困……それぞれに悩みを抱える若者たちが出会い、愛し合い、葛藤しながらも懸命に生きる姿を描くエネルギッシュな作品だ。
この日製作発表に登壇したのは、2018年に開催されたオーディションで選ばれた以下20名のキャストたち。歌唱披露、キャスト挨拶、質疑応答の順で進行された。
マーク:花村想太(Da-iCE)/平間壮一
ロジャー:堂珍嘉邦(CHEMISTRY) /甲斐翔真
ミミ:遥海/八木アリサ
コリンズ:加藤潤一/光永泰一朗
エンジェル:RIOSKE (COLOR CREATION) /上口耕平
モーリーン:フランク莉奈/鈴木瑛美子
ジョアンヌ:宮本美季
ベニー:吉田広大※
ICHI、コリ伽路、奈良木浚赫、小熊綸、吉田華奈、吉原シュート
■歌唱披露
感染症対策のため、全員シールドマスクを口元に装着していた。
キャスト陣が上手袖からステージに登場するやいなや、立て続けに劇中から3曲の歌唱披露が行われた。まずは本作で最も世に知られているであろう名曲「Seasons of Love」。20名のキャストの力強くも切なる想いの込もった歌唱が、会場中に響き渡った。何度聴いても胸打たれるメロディと歌詞はもちろん、カンパニーの一体感が感じられる美しいハーモニーが『RENT』の世界へと誘ってくれる。
(左から)上口、RIOSKE、光永

(左から)奈良木、宮本、ICHI、コリ

続いてはロジャー役の堂珍・甲斐とミミ役の遥海・八木による「Another Day」。劇中でロジャーとミミが出会って間もない頃、互いに惹かれ合いながらもすれ違ってしまうという心苦しいシーンの曲だ。ここでは甲斐✕八木、堂珍✕遥海がペアとなってデュエットを披露した。ビジュアルや歌唱も全くタイプの異なるそれぞれのロジャーとミミ。本番でもダブルキャストの醍醐味が感じられそうで楽しみだ。
(左から)甲斐、八木
(左から)遥海、堂珍

最後に披露されたのは「What YouOwn」。マークとロジャーの男同士の友情が感じられる爽快なナンバーだ。本作初出演の花村✕甲斐と、3度目の出演となる平間✕堂珍というペアで、本番さながらの熱の込もった歌唱と演技で魅せてくれた。
(左から)甲斐、花村
(左から)平間、堂珍

■キャスト挨拶
歌唱披露後は、20名のキャストが一言ずつ挨拶をする時間が設けられた。ここでは主要キャストの挨拶を「キャスト名/役名(出演歴)」としてご紹介する。
花村想太(Da-iCE)/マーク(新キャスト)
2017年に僕は初めて『RENT』という作品に触れました。この作品を観て「ミュージカルのステージに立ちたい」という夢を持った一人なので、その夢が今叶おうとしていることが本当に幸せです。命賭けてやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
平間壮一/マーク(2015&2017エンジェル)
YouTubeを御覧の皆さん、みんなご飯食べながら見たりしてるんですかね? 時間を割いていただいてありがとうございます。短い時間ではございますが、僕たち、楽しい話できるかなあ(笑)。わかんないですけど、楽しんでもらえるように頑張るのでよろしくお願いします!
堂珍嘉邦(CHEMISTRY) /ロジャー(2015&2017ロジャー)
『RENT』は自分にとってたくさんターニングポイントになっている作品でもあります。今回はきっちり最後まで走り抜くことを目標にやっていけたらなと思っております。今日は楽しんで御覧ください。
甲斐翔真/ロジャー(新キャスト)
本当に世界中で愛されるこの作品に出演できることを、とても嬉しく思います。初めてミュージカルのオーディションを受けたのがこの作品なので、いろいろあって幕が開くかどうか不安だったのですが、どうにか開きそうで、そしてこうして製作発表という形で皆さんに発信できることが本当に幸せです。ぜひ今日は楽しんでください。
遥海/ミミ(新キャスト)
ミュージカルをやると思っていなかったのが正直なところなんです。でも初めてのミュージカルが『RENT』で、言葉にできない感情が多くて。ミュージカルは本当にわからないことが多いのですが、稽古も始まって皆さんにたくさん支えていただいて、自分なりのミミを演じられるよう頑張っていきたいと思います。
遥海のトーク中、マイク位置がズレるハプニングが発生。すぐさまフォローする堂珍の紳士な姿にときめいた方も多いのでは。
八木アリサ/ミミ(新キャスト)
今日初めてカラオケじゃないところで歌を歌うということで、すごく緊張しました。初舞台・初ミュージカルで皆さんとご一緒できてとても嬉しいなと思いますし、2020年に『RENT』をお届けできそうなのでとてもワクワクしています。
加藤潤一/コリンズ(2012&2015 コリンズ)
新しい皆と愛を紡いでいい作品にして、この世の中で頑張っていきたいと思います。YouTubeで配信を観ていらっしゃる皆さんも、お時間ありましたらぜひ観に来てください。よろしくお願いします。
光永泰一朗/コリンズ(2017 コリンズ)
僕はキャストとして選んでいただくずっと前から、一人のRENT-head(『RENT』の熱狂的ファン)でして、ものすごく大好きなんです。そんな作品の舞台に立っていられるということで、今日の「Seasons of Love」でも泣きそうでした。90年代のニューヨークでエイズという病気が全くわからず混乱していたものが、2020年に全世界で起きたコロナの状況にすごく通ずると思います。なので、時を越えて今に繋がるメッセージがこの作品に必ず詰まっていると思うので、精一杯伝えられるように頑張っていきたいと思います。
RIOSKE (COLOR CREATION) /エンジェル(新キャスト)
僕にとって初めての舞台でありミュージカルなのですが、最初にこのオーディションが受かったという話を聞いたときに、ずっと本当に大好きな作品だったので信じられなくて。世界的に愛されている作品に出演するということは、自分の中でも結構ハードルが高く、プレッシャーも多かったんです。でも稽古が始まって、『RENT』ファミリーというこんなにも愛がたくさんある場所のおかげで、毎日幸せに稽古をしています。今の自分の幸せな想いを皆さんにお届けできるのを楽しみに、これからも頑張っていきます。
上口耕平/エンジェル(新キャスト)
観に来てくださった皆様が2020年を振り返って2020年を数えたときに、「いろんなことがあったけれど、あのとき『RENT』を観てよかったな」と思ってもらえるような、そんな作品を目標に挑みます。よろしくお願いします!
フランク莉奈/モーリーン(新キャスト)
私は2011年にミュージカル界に飛び込んで、それからずっと『RENT』という作品に出ること、モーリーンという役を演じることが長年の目標でした。2020年という大変な年ですけれど、今年出演させていただくことをすごく嬉しく思います。毎日この作品の持つ力に、私自身励まされながら稽古をしています。素敵なキャストの皆さん、スタッフの皆さんと力を合わせてお客様にこの作品を届けたいと思います。
鈴木瑛美子/モーリーン(新キャスト)
2020年にコロナという病が広がり、今こうして製作発表を開催している『RENT』。幕を開けられるかもしれないというのが奇跡に近いことで、でもだからこそこの時期に『RENT』を届けられるということが本当に意味のある、素晴らしいことだと改めて実感しています。モーリーン役も様々な方が演じてきて、いろんな形のモーリーンがいて、すごく不安も大きくありますが、今こうして『RENT』ファミリーの中に入ってからはずっと心がオープンなんです。すべてを受け止めてくれるという安心感が、優しい皆さんのおかげであるので、この気持ちをずっと忘れずにモーリーンという女性を作り上げていきたいと思います。
宮本美季/ジョアンヌ(2015&2017 ジョアンヌ)
毎回毎回、本当に違う『RENT』という世界を新しいカンパニーで作っていくんです。この2020年という年はソーシャルディスタンスで人と繋がれない、皆が押さえつけられ我慢して……という生活を送っています。そんな中、人間にはこんなにも激しい感情がいくつもあって、繋がるということがこんなにも素敵なことなんだと、お稽古を通して日々感じております。なので、今年ならではの『RENT』をお届けできるよう頑張ります。
吉田広大/ベニー(新キャスト)
ベニーの持つ目標に向かう強さ、憎たらしさ、その中で垣間見える仲間に対する優しさを、自分なりに表現できたらなと思います。そして『RENT』という作品全体を通して、僕ももっともっと愛を知っていくのだろうし、その愛を皆様にお届けできるのを楽しみにしています。
■質疑応答
質疑応答では報道陣からの質問と、事前に公式Twitterで募集されていたファンからの質問が展開された。その中から一部を紹介したい。
【報道陣からの質問】
Q.本公演の演出を務めるアンディ・セニョール Jr.さんは海外にいらっしゃるため、リモートで稽古を行っていると伺っています。リモートでのお稽古はどのような感じでしょうか? 大変なことや新鮮なことなど、印象に残っていることがありましたら教えてください。
平間:いやあ、もう全部新鮮ですね。このマスクをしながら稽古するのもそうですし、心を開いて距離を縮めながら稽古したいところを、一つ壁があることによって「う〜っ」てなったりしながらも、皆それに耐えて稽古しているという。また、そのことが皆を一つにしているのかななんて思いますけどね。やっぱり今だからこうやって稽古ができるし、今しかできない稽古だと思うと、また特別な『RENT』になるのかなと思いながらやっています。
堂珍:直接演出家の人に会ってお稽古できない分、経験しているキャストがそれを補えるものがあればいいなと思って、毎日そういう気持ちでいます。基本的にはやることは稽古だし、一緒なわけで。その壁を乗り越えながら、幕を開けるまで皆でいけたらいいなという想いですね。
【公式ツイッターで募集した質問】
Q.今回の『RENT』がミュージカル初観劇なのですが、作品の見どころやおすすめシーンなどあれば教えてください。
花村:そうですねえ……全部ですね。
平間:間違いない!
花村:本当にいろんな感動の積み重ねがあるので、どこをかいつまんで観るとかじゃなくて……全部です!
平間:僕が初めて観たミュージカルのとき、セリフを聞いておけばいいんだろうなと思っていたんですけど、実は歌がセリフだということを初めて知ったんですね。だから曲を「音楽だ〜」と思わずに「何喋ってるんだろう?」と観ていただけると、最後まで置いていかれずに楽しめると思います。
花村:あ〜! それ言おうと思ってました!(笑)
終始緊張した様子のキャストと、それを優しい眼差しで見守るキャストたちの様子から、『RENT』カンパニーのまるで家族のようなあたたかい空気感が伝わってくる会見だった。
最後はキャストを代表して花村と平間より、それぞれのRENT愛の込もった言葉で締めくくられた。
花村:「Seasons of Love」でも言っていたように、人生って一瞬の積み重ねだと思うんですけれど、そこに感動というスパイスが加わると一生心に残るものになると思います。その永遠になる瞬間が『RENT』にはたくさん詰まっているんです。ただ、僕たちがどんなに死ぬ気でやっても観てくださる方がいなければ……このご時世で大変恐縮ですが『RENT』という作品を素晴らしい存在にするために、力を貸してください。お願いします!
平間:愛という言葉は、人によっていろんな形があります。色も違うし、匂いも違うかもしれない。人の死が実は愛だったり、自分にとって何かを教えてくれることだったりという考え方もできます。何か整理がつかないことがあったとき、この『RENT』という場所が皆さんの気持ちを受け取れる場所でありたいなと思っています。今の段階では自分たちが楽しくて苦しくて、稽古を頑張っていきます! という思いではあるんですけれど……皆さんの前に立つときには皆さんの愛を受け取れる場所であるよう頑張っていくので、こんな世の中ではありますが、無理だけはしないように、劇場に足を運んでください。

出演経験豊富なベテラン勢に、初出演のフレッシュなキャストが加わった『RENT』カンパニー。きっと2020年版ならではの新しい風を巻き起こしてくれるに違いない。本公演は、東京・シアタークリエにて2020年11月2日(月)〜12月6日(日)、愛知県芸術劇場大ホールにて12月11日(金)〜12日(土)に上演予定だ。
取材・文・写真 = 松村蘭(らんねえ)

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