ロック界の革新者、エディ・ヴァン・
ヘイレンが残した偉大な功績

 ヴァン・ヘイレン(米バンド)のギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレンさん(エディ)が6日、がんの闘病の末、死去した。65歳だった。

エディさんが確立した革新的なギタープ
レイの数々

 エディさんはドラマーの兄、アレックス・ヴァン・ヘイレンらと共にロックバンド「ヴァン・ヘイレン」を結成。ロック史に名を残す名曲を数多く発表した。そして、エディさんの革新的で華のあるギタープレイは世界中のリスナーを魅了し、数多くのミュージシャンにも多大な影響をもたらした。

 エディさんは「ライトハンド奏法(右手でギターの指板を叩き独特の美しい音色を出す)」など、多くのギタープレイをスタンダードな奏法として確立させた、ロック史の最重要ギタリストと表すにふさわしい人物と言えるだろう。

 1978年発表のヴァン・ヘイレンのデビューアルバム『Van Halen(炎の導火線)』では、英ロックバンド、キンクスの「You Really Got Me」を、当時としては強烈な歪みのサウンドの大胆なハードロックアレンジカバーを発表。同曲内のギターソロでは「ライトハンド奏法」を披露した。

 また、同アルバム収録曲の「Eruption(暗闇の爆撃)」では、超絶技巧の速弾きに加え、トレモロピッキングの「ハミングバードピッキング」、独特の倍音を出力する「ピッキングハーモニクス」、そして前述の「ライトハンド奏法」と、様々な技術を駆使した革新的なギタープレイをみせ、エレクトリックギターのポテンシャルを拡張させた。「Eruption」は、“ライトハンド奏法の登竜門”という捉え方もあり、今なお輝きを放っている。

多様かつ独自のサウンドメイク

 また、エディさんは、ロックギター独自の歪んだサウンド、対比したクリーンサウンド、クランチサウンドなど、ありとあらゆるトーンを網羅し、ロックギターサウンドの表現力を最大限まで引き出した。

 アルバム『Balance』収録の「Can't Stop Lovin' You」では、クリーントーン、鋭いサウンドのリードプレイ、芳醇に歪んだバッキングサウンド、弦のスクラッチサウンド、多彩なハーモニクスなど、それらの色鮮やかなプレイが見事に凝縮されている珠玉の1曲。サウンドやプレイ面はもちろんのこと、エディさんの奏でるメロディラインは多くのリスナーの心の琴線を揺さぶる。

 エディさんはギタープレイのみならず、アルバム『1984』収録の「ジャンプ」ではシンセサイザーのサウンドを取り入れるなど、ポップな音楽性も提示した。また、同アルバム収録曲「パナマ」では、アメリカンハードロックを代表するような壮大さと力強いサウンド、高い技術力を併せ持ったプレイをみせた。さらに同アルバム収録「Hot For Teacher」では、高い難易度のライトハンド奏法、強烈なギターリフ、絶妙な緩急を醸すクリーントーンのバッキングなど、フレキシブルなプレイを聴くことができる。

 アルバム『Diver Down』ではロイ・オービソンの「Oh, Pretty Woman」を豪快なギターサウンドのハードロックアレンジでカバー。同アルバム収録の「Cathedral(大聖堂)」では、ギターのボリュームをリアルタイムで操作しながら音量のダイナミズムをつける「ボリューム奏法」を用い、荘厳で神聖な音階の楽曲をテクニカルに表現した。

 また、エディさんはマイケル・ジャクソンさんの楽曲「今夜はビート・イット」にギターソロに参加し、圧倒的な存在感のリードプレイをおさめた。

 エディさんのギタリストとしての表現力、サウンドメイク、華のあるライブパフォーマンス、ギタープレイの新たな可能性を切り開いた革新性、どれをとっても“唯一無二のギターヒーロー”そのものと言えるのではないだろうか。

 また、エディさんは、それまでのギタリスト像としてシリアスな表情で演奏するというイメージもくつがえした。エディさんのプレイ中は笑顔が多く見られたのである。その姿から音楽、ライブを楽しんでいる様子が伝わってきたのが印象的だった。

 エディさんは世界を代表するロックギタリストとして様々な奏法を笑顔で弾き倒し、ロック界に革命をもたらした。これまでになかった手法をスタンダードとして確立させ、ロックギターの可能性を広げ続けた。それは世界中に飛散し、数多くのリスナー、プレイヤーの心を豊かにさせてくれた。歴史上偉大なギタリスト、エディさんのプレイは、永遠に色あせることはなくフィードバックし、これからも世界中で鳴り続けるだろう。【平吉賢治】

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