「ダークヒーロってかっこいい!」『
劇場版BEM~BECOME HUMAN~』ベム役小
西克幸が明かす 「今叶えたい願い」
とは

10月2日(金)より全国公開となる『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』。『妖怪人間ベム』生誕50周年を記念して、2019年に制作・放送されたTVアニメ『BEM』の劇場版となってスクリーンに降臨する。原作の持つ設定やメッセージ性を残しつつも全く新しい解釈で舞台設定やキャラクターを大胆に変更し、スタイリッシュなビジュアルで、現代のアニメ界に蘇ったTVアニメ『BEM』の2年後の舞台が描かれる。本作では50年の時を経て、ついにベムの願いが叶えられる! SPICEではベム/ベルム役の小西克幸にインタビュー。ベムを演じるうえで意識したことや劇場版の見どころ、さらに子どもの頃に観ていた『妖怪人間ベム』の思い出についてたっぷりと語ってもらった。

ーー ベム役をやる前に、1968年に誕生し、その後アニメ・実写ドラマと様々なリメイクを経てきた『妖怪人間ベム』という作品にどのような印象を持っていましたか?
怖い、という印象を強く持っていました。僕が子どもの頃に観ていたのは再放送の『妖怪人間ベム』でした。当時住んでいた和歌山では、アニメの再放送をたくさんやっていて、終わっては始まりという感じで、『妖怪人間ベム』もしょっちゅう観ていた気がします。オープニングで妖怪人間が細胞分裂して増えていくといった描写があったのですが、かっこいいなと思いながら観ていた記憶があります。男の子って、小さい頃は妖怪とかそういうもの好きですよね。僕自身ももれなく好きでした(笑)。
ーー ビジュアルを楽しむという感じだったのでしょうか?
それもありますが、でも印象に残っているのはテーマ的な部分の方が強いと思います。見た目が自分と違うというだけで、気持ち悪いとか不気味だといい、善悪を判断したりする。そういう人間の姿を見て「怖い」と思っていました。
ーー ビジュアルが怖いというのではなく、人間が怖いとすでにテーマをしっかり捉えていたのですね。
インパクトがあったのですごく覚えています。もちろん、学校とかでベムの変身するときの掛け声「ウー・ガンダ!」を物真似して遊んだりもしていました。ダークヒーローっていつの時代もかっこいいですよね。
ーー ダークヒーローに惹かれがちですか?
デビルマンとかもカッコ良かったし、ベムは特に、自分たちの利益にならなくても戦う姿というのかな。仮面ライダーやウルトラマンのようなTHE ヒーローも夢があってすごく憧れるけれど、人知れず陰で戦って人間を助けている『妖怪人間ベム』はかっこいいなって思っていました。
ーー 小さい頃からしっかりとテーマを捉えていたとは、ベム役になるべくしてという感じですね。
特に最終回が印象的でした。子どもの頃の思い出だから、うろ覚えな部分もあるかもしれないけれど、人間たちが火を持って「妖怪人間を殺せ!」とベムたちの屋敷に行くシーンがあって。ベムたちは人を傷つけたくないから、逃げようとするけれど、屋敷の周りは人間に囲まれている。逃げるためには人間を殺さなければならないから、屋敷に留まることを決意するんです。焼け残った後には、ベムの帽子やベロの靴が落ちていて、ベムたちの消息は不明。姿形が違うという理由だけでこんなにも凶悪になる人間って怖いなって思った、すごく印象的な最終回でした。
ーー 強烈なインパクトの『妖怪人間ベム』が2019年にTVアニメ『BEM』として蘇ったわけですが、どんな印象を持ちましたか?
まず、見た目が全く違うって思いました。ビジュアルがスタイリッシュだし、変身して妖怪人間になった姿も不気味なクリーチャーというのではなく、シャープな感じだと思いました。音楽もジャズを基調としていて、全体的におしゃれになったと感じました。ベラは学校に入り人間の中で生活しているし、ベロはヘッドフォンなんかしちゃって、そこまで人間たちに深入りしていないという印象を受けました。そんな二人をベムは静かに見守って、ピンチになったら手を差し伸べて助けてあげるお父さんのような存在で。そんな構図の違いもおもしろいと感じました。
ーー 人間になりたいけれどなれないという悲しく切ないテーマ、世界観がありますが、TVシリーズそして劇場版も含めて、アフレコ現場はどのような雰囲気なのでしょうか? シリアスな感じですか?
敵役で登場するヴィランは、音響監督から「おもしろい敵がいい」というリクエストもあって、みなさんアドリブをいっぱいいれてテンション高く演じています。ほんとに自由で楽しそうでうらやましいくらいです(笑)。なので、アフレコ現場は作品の世界観とは違って、明るくワイワイしている感じです。
ーー 劇場版では、親友のバージェス役をKis-My-Ft2の宮田俊哉さんが演じています。声優初挑戦の宮田さんの演技はいかがでしたか?
第一声から「声優さんみたい」と感じるくらい上手でした。ドラマであれば表情で表現すればいいところを、アニメでは声で表現してキャラクターに立体感を出す必要があります。基本的な演じ方はそれほど変わらないとは思うのですが、声優という仕事は表現方法が独特なので、慣れていないと難しいと思います。でも、そういうのもひっくるめて本当に上手でした。
ーー 宮田さんにインタビューしたときには、褒められるとリップサービスを疑っちゃうけど、褒めてもらえたら素直にうれしい。でも、褒められすぎて調子に乗ったらどうしようともおっしゃっていましたね(笑)
じゃあ、褒めまくっちゃおうかな(笑)。でも、上手とかハマっているとかは、作品を観る人が一番よくわかると思うんです。宮田さん自身がアニメの世界が好きということもあり、演じ方がよくわかっているんだなという印象でした。『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』の世界に、違和感なく入ってきてくれたと感じました。すばらしく上手でした。
ーー ベムのような口数の少ないキャラクターで個性を出すことは難しい感じがします。
はい、難しいです。でも、口数が少ないということもベムの表現方法のひとつですし、セリフを言わなくても例えば悲しい表情や音楽がのるだけで、ベムの悲しさが伝わります。アニメーションの画を描く人、音楽をのせる人、そして僕が演じることで、ベムというキャラクターが構築される。いろいろなスタッフさんとの相乗効果でよりキャラクターが際立っていく、総合芸術でひとつのキャラクターを作っているというイメージですね。アフレコのときに画が出来上がってなくても、音楽が流れていなくても、ベムを作る人たちを信じて完成形を想像しながら、ベムの一部である声を一生懸命演じました。
ーー TVアニメ版と劇場版で演じ方に違いはありましたか?
ものすごく明確な違いはありません。でも今回ベムは、ベルムとして人間社会の中に入って生活をしています。だけど、ベルムはベムの延長線上だから、新たに人間っぽいベルムというキャラクターを作るのではなく、ベムが人間社会で生活したらどうなるかというのを想像しながら演じました。だから、にこやかな部分は出ているけれど、バージェスみたいに弾けてない。感情の起伏はあるけれど、割と控えめに演じてみました。
ーー ベムの願いはひとつ「早く人間になりたい」。小西さんがなりたいものを一つ挙げるとしたら何ですか?
仕事をいっぱいしている人気声優です。人気者になりたいんです。声優といったら小西だよねって言われたいです。死ぬまでこの仕事をしていたいので、なんでもやりますよ。だって、大人気になったら各方面から引っ張りだこになるでしょ、そしたらいろんなことができるじゃないですか。
ーー 声優さん以外でも例えば歌ったり、踊ったり、といろいろなことをやりたいということですか?
歌ったりはいいけど、踊るのはな〜。もう47歳なので、膝が、ね(笑)。でも人気者に必要なことだったら、やれって言われたらやろうかな。とにかくたくさん仕事がしたいんです。
ーー エネルギッシュですね。これまでいろいろな役柄を演じていますが、まだまだやりたい役はあるのでしょうか?
漫画が大好きなので、好きな漫画には全部出たいって思っているくらいです。
ーー なるほど。では最後に、公開を楽しみに待つファンの方たちにメッセージをお願いいたします。
物語はベムを中心に動いていきますが、それぞれが選択肢の中から選び覚悟を決めなければいけない場面がたくさんあります。1回目はベム目線、2回目はバージェス目線、3回目はソニア(CV:内田真礼)目線でなどと、いろいろなキャラの視点から観ると作品が多面的に広がっていってよりおもしろく感じると思います。僕自身、ソニアが今後どうなるのか、すごく気になっています! 視点を変えて見るだけで、新たな発見ができる作品、そういう仕掛けに気づいて欲しいですね。登場シーンが少なくてもベルムの奥さんのエマ(CV:水樹奈々)や子どもたちはすごく重要な役どころだし、効果音や画がお芝居していたりというのがどのキャラクターにもあるので、何度でも楽しめる作品です。
取材・文:タナカシノブ 撮影:黒豆直樹 ヘアメイク:川端麻友(fringe)

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