短期間の活動にもかかわらず
ロックの発展に大きく寄与した
バッファロー・スプリングフィールド
の『アゲイン』
本作『アゲイン』について
収録曲は全部で10曲。ヤングの書いた曲は3曲。このうちスタックス風の「ミスター・ソウル」は別として、「エクスペクティング・トゥ・フライ」と「折れた矢(原題:Broken Arrow)」の2曲ではグループのメンバーは録音に加わっておらず、ヤングのソロ作にも登場するジャック・ニッチェがプロデュースとストリングアレンジを担当し、実質ヤングのソロプロジェクトになっている。サウンドコラージュ等を使った6分以上の実験的大作「折れた矢」では、レッキング・クルーの一部のメンバーが務めているとも言われている。
また、本作で初めてフューレイの書いた曲が3曲収められており、うち2曲(「ア・チャイルズ・クレイム・トゥ・フェイム」「悲しみの想い出(原題:Sad Memory)」)には、すでにポコのサウンドの萌芽が見られる。どちらもアルバムのハイライトとなる重要なナンバーである。「ア・チャイルズ・クレイム・トゥ・フェイム」ではドブロに名ギタリストジェームス・バートンが参加しており、バートンは本作でエンジニアを務めているジム・メッシーナの依頼で呼ばれた。メッシーナはこの後、バッファローのメンバーとなり、グループ解散後はフューレイとともにポコを結成する。ポコ脱退後は元ゲイター・クリークのケニー・ロギンスと双頭バンド、ロギンス&メッシーナを結成して一躍ブレイクする。「グッド・タイム・ボーイ」はフューレイらしくないソウルフルな曲で、アレンジはアメリカン・ソウル・トレインという覆面チームとなっており、ホーンセクションが起用されている。リードヴォーカルはマーティンが担当している。
スティルス作の曲は4曲。「エヴリデイズ」(ライヴ録音)はジャジーなナンバーで、彼の音楽性の広さが窺える。ベースはジム・フィールダー、ピアノはスティルス自身が弾いている。また、彼の代表曲のひとつとして知られる「ブルーバード」は、すでにスティルス節が炸裂というか、クロスビー・スティルス&ナッシュのサウンドになっている。曲の最後に登場するクロウハマーバンジョーはキャット・マザーのメンバー、チャーリー・チンの演奏。このアレンジは、はっぴいえんどにも影響を与えている。ラテン風味の「ロックン・ロール・ウーマン」は、彼の代表曲「イット・ダズント・マター」を思わせる旋律を持つ。彼の得意とする作曲パターンの雛形と言えるかもしれない。今聴いてもまったく古くなっていない名曲である。
彼らの音楽性がわかる
ジャケット裏の謝辞
僕が本作を入手したのは今から50年近く前(インターネットやスマホはない)であり、ここに記されたアーティストのレコードを探して聴くことが勉強でもあった。それにしても、ニール・ヤングもスティーブ・スティルスも未だに現役で音楽を創造し続けているのだから、やっぱり彼らはすごい。
TEXT:河崎直人