【ラブリーサマーちゃん
インタビュー】
曲を作ることは私にとって自浄作用
自分の曲が自分以外の人にとって
無価値でもそれはそれでいい
「ミレニアム」に《大して明るくはない未来だって/そんなに悪くないだろう》という歌詞がありますが、これはいい言葉ですね。
ありがとうございます。大して明るくない未来を明るくしようと頑張っている人を尊敬しますし、憧れるけど、どういうスタンスでいるかは個人の自由なので、私は“そのうちにいいこともあるだろう”みたいな感じで生きていこうかと思います(笑)。
でも、ロックに限らず、サブカル全般はそういうものじゃないですか。それ自体が社会を動かすものではないけど、“それでもやるんだよ”というのがサブカルだと思いますし、そこに感動するんじゃないでしょうか。
うんうん。でも、私は“何が何でも絶対やってやる!”みたいなアツい気持ちを持っている人間じゃなくて。何だかんだ言っても音楽のことが好きなので、嫌なことがあっても往生際悪く続けると思いますが、“絶対にやらなきゃいけないんだ!”っていう使命感はまったくないです。今は楽しいのでやってます。
そこで言うと、「LSC2000」のライナーノーツにも書いていたと思うんですけど、曲を聴いてくれたり、ライヴに足を運んでくれたりする人がいるというのは、活動する上でのモチベーションになってはいるんじゃないですか?
私が音楽活動をしてて一番幸せだと思うタイミングは、自分で作ったデモが完成して、それを聴いて“あっ、いいじゃん! 私、これ好きだな”って思った時なんですけど、その喜びみたいなものは曲が出来上がった時点からどんどん減っていくんです。でも、誰かが私の曲を聴いたり、私のことを観たりして、何か思っているんだということを知った時って嬉しいんですよね。それがあるから音楽活動をやっているとは言わないし、“自分が気に入る曲を聴きたいから”というのがダントツでモチベーションとしては大きい理由ですけど、聴いてくれている人の言動とかに毎回励まされてます。
直接の動機づけにはなっていないものの、少しはリスナーの声が背中を押してくれている?
“少し”というか、毎回かなり勇気づけられたり、“音楽をやってて良かったなぁ”って思ってますよ。すごく力になっていますね。
11曲目「ヒーローズ をうたって」の“ヒーローズ”はデヴィッド・ボウイの「Heroes」のことだそうですけど、多くの人が「Heroes」を聴いて感動したように、ラブリーサマーちゃんの楽曲を聴いて同じように感じているリスナーもいるでしょうし。
んー…自分の曲の存在価値を他の人に求めるのはすごく嫌なので、“誰かの○○○○になったらいいな”とかはなるべく思わないようにしているし、自分の曲が自分以外の人にとって無価値でもそれはそれでいいんですけど、気が弱っている時は誰かから認められたいと思ったりもして。そんな時に私が今まで好きだった音楽に対して感動が本当にあったように、私の曲も誰かの感動になっているんだろうなって思ったり。それは希望ではなく、事実として実際にそういうことが起こっていると思うと…生きる活力になっている日もあります。悔しいですけど。
悔しい?
はい。人が認めてくれるからそれをやるみたいなことがすごく嫌なんですよ。曲作りに慈善事業的な意味合いを持たせたくなくて。例えば、私が好きなロックスターが孤独について歌っているとして、その人から“自分と同じような寂しい10代を送ってきた人に向けて、その孤独の外に出してあげたいと思って曲書いてます”って言われると、興醒めするんですよ。そういう作為で作られた曲って本当に孤独を歌えているのかなって。恩着せがましいし、こっちが舐められている感じがしてすごく嫌なので、私は絶対に“誰かのために○○○○したい”とか“誰かの○○○○になったらいい”とか、そういうことは言いたくないんです…けど、たまに思っちゃうんですよね(苦笑)。
分かりました。では、最後にネタバレしない程度にシークレットトラックについて訊きたいんですが。やっぱり、こういうのを入れたくなりますか?
最初はサービス精神だったんですよ。生真面目に作った作品にプラスしたおまけがちょっと笑えたら、お客さんが“買って良かった”って思うかなって。そんな感じで作り始めたんですけど、やっぱり真面目に音楽制作をしていると疲れるじゃないですか。その息抜きというか、“煙草休憩”みたいな感じで暇な時に隠しトラックを作るようになってしまって、その供養場所ですね(笑)。
なるほど(笑)。今回の隠しトラックのような楽曲がまったくないのも寂しいですよね。
でも、ビシッと終わらせる人はめっちゃカッコ良いですけどね。まぁ、面白いし、今回の隠しトラックもちゃんといい曲ですからいいですよね。
ですね。それでは最後の質問です。アーティストとしてはこの先をどんなふうに考えていますか?
次の作品のことなんですけど、前作まで…特に『LSC』は自力で全てのトラックを完成させた曲も入ってましたし、そんなにバンドメンバーとの付き合いも長くなかったので、ソロミュージシャンの作品という感じが強かったと思うんですけど、今回は1曲目から11曲目まで全編通してバンドでレコーディングを行なって…しかも、同じメンバー5人でレコーディングしたんですね。私の力が一番強く介入しているし、私の好みの音しか入っていないので、私の作品であることは間違いないんですけど、バンド感が強くなってるところは確かにあって。今回はそれが良いふうに出て、カッコ良くまとまったと思います。でも最近、編曲、歌唱、作詞作曲、ミックス、演奏も何もかも自分でやってCDとしてパッケージングするミュージシャンの方たちのことをすごく好きになったんですよ。Momさんとか、横沢俊一郎さんとか。そのふたりを見ていると個性が色濃く出ているし、とってもパーソナルな作品を作っていると思ってて。なので、次は全部自分の作品を作ってみたいと思ってます。
取材:帆苅智之