Editor's Talk Session

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【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:コロナ禍を
背景にしたライヴハウスの発展

配信ライヴは相当工夫をしないと
お客さんが増えることはない

岩田
バンドマンのみなさんの配信ライヴに対するモチベーションは上がりきってないんですかね?
篠塚
バンドマン側として言うなら、上がりきってない人がかなりいるっていう印象ですね。もともとオンラインに強い活動をやってた人とか、ライヴよりもYouTubeでの活動を中心にしていこうと思っていたバンドとか、あまり変わらずにオンライン上で活動している人もいますけど、それって配信に特別な思い入れがあるとかじゃなく“当たり前のこととしてやっている”って感じだと思うんですよ。だからこそ、コロナ禍で浮上してきた配信ライヴって文化はライヴバンドとか、生演奏にこだわっている人たちの第二の選択肢だったり、救済措置であるべきなんじゃないかなって。でも、その生演奏にこだわってきた人たちが、たった半年で自分が信じてきたものを一転して無観客での配信ライヴへのモチベーションを上げるっていうのは…やっぱり、なかなか難しいんじゃないかなと。
二位
すごくパーソナルな考え方なんですけど、ライヴはお客さんあってのものだと思うので、少ない人数だけど20人でも30人でもお客さんが入ってくれたら、バンドもライヴの感覚が変わるじゃないですか。でも、そうするとお金の面でバンドもお店も割りに合わないから、その分を配信もしてちょうどいいくらいにしたい。そうすれば今まで通りに経営が成り立つんですよ。もちろん方針でお客さんを入れちゃダメってなったら、それは無観客で対応するし、逆にキャパ以上に配信チケットが売れることもあるから、それはそれで意味があるんじゃないかと思うんですけど。それでもひと月の統計で見たらまだまだ全然赤字なので、この状態はいつまでも続かないって冷々しながらやってるんですけどね。
千々和
最近はお客さんを入れている配信ライヴを観ることもあるんですけど、やっぱりパフォーマンスが全然違いますね。
二位
少しでもいてもらったら嬉しいですよね。昨年の段階では、お客さん30人の日とかあったとしたら“おいおい! どうした!”って感じだったじゃないですか(笑)。こうも変わるかなってね。まぁ、ライヴハウスはライヴハウスで、どうやったらいい状況が作れるかっていうのを考えて、それぞれスキルも磨きつつやっていかないと。前回も言ってたんですけど、配信すればするほどライヴハウスの体たらくを垂れ流しにする可能性があると思ってすごく緊張しながらやっていますが、自分のところでやってたアコースティックライヴが50人マックスでソールドアウトで盛り上がって、会場で観てたらすごくいい感じなのに、配信で観ると半分も伝わってないって思ったんですよね。それは完全にライヴハウスの責任だと思うんですよ。演者は100パーセントでパフォーマンスをやっていて、目の前のお客さんを楽しませているんだけど、アコースティックっていうシチュエーションをうまい具合に配信に乗せられていない。これがテレビ番組だったらセットとかそれ用の照明を作ったりしていい感じで観れるし、視聴者もそれに慣れているわけだから、ライヴハウスから配信している映像はものすごくシンプルという以前に、怠けているように感じるんじゃないかと思うんだよね。だから、相当工夫をしないとお客さんが増えることはないなって。
岩田
ART HOUSEでは先ほど機材を揃えたっていうお話もありましたが、配信ライヴの観せ方に力を入れていくっていう段階なんですか?
西本
そうなんですけど、まだそっち側に振り切れない自分がいて。そもそも超現場主義なんで、コロナが流行る前からオンラインで配信をやっている会社の方からお声がけいただいたりしていたんですけど、“そんなん誰がすんねん! ライヴハウスは現場やろ!”みたいな感じだったんですよ(笑)。ライヴハウスの人間としては“配信ライヴって何なん? いらんやろ”みたいなのが根っこにあるんですよね。まぁ、最初は嫌やって思いながらも、“やるんやったらとことんやる!”っていう気持ちで今は一生懸命やっているんですけど。でも、二位さんがおっしゃる通り、ライヴハウスで起きてることが100やとしたら、配信でいかに100に近づけようとしても難しいというか。実際、自粛で動けなかった時期に配信していた時は興味本位だと思いますけど、閲覧数は結構あったんですよ。でも、みなさんの生活が動き始まると配信ライヴは二の次になっていく気がするというか、もう飽きられてるんと違うかなって。ぶっちゃけ9月からオンラインファンクラブを始めてますけど、8月の時点で“遅かったな”って思ったんです。
二位
うんうん。そういう意味では5月でも遅かったって思いましたもん。
西本
あははは。だから、“ここで盛り上げるぞ!”っていう考え方とは違う部分があって。さっきも話題に上がってましたけど、やっぱりバンドとお客さんのテンションを上げたいというか。新しい居場所を作ることによって、配信ライヴをやる意義が出てくるんじゃないかって思ってるんですよ。
二位
従業員の意見はどうなんですか? 従業員は今までやったことのない仕事をやることになって、“僕、それをやるためにここで働いてるんじゃないんだけど”みたいな態度ないですか?
西本
配信にしても、オンラインファンクラブにしても、僕の頭で想像している段階の時は従業員に表面的なところしか話してなかったので、“ライヴハウスはそんなんちゃいますよね”“目覚ましてくださいよ”みたいなテンションは感じてました。“コロナで西本がおかしくなったぞ”みたいな(笑)。でも、サイトが実際にオープンして喜んでくれてる人の声が聞けると、“間違ってなかったのかもしれないな”って何となく思ってもらえてる気がします。まぁ、ギリギリですけど(笑)。
二位
難しい問題ですよね。配信を本気でやるってなったら、スイッチャーを入れて、カメラマンもふたりくらい入れて、今までの1.3倍くらいの従業員を使うわけだし。
西本
そうなんですよ。現状、売り上げは全然上がってないのに、従業員の数だけ増えていってますね。
篠塚
それ、西本さんっぽくて、嬉しくなりますね。

OKMusic編集部

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