FEATURE / どんぐりず「マインド魂」
進化し続けるどんぐりず。最新作「
マインド魂」からそのクリエイティブ
の核を紐解く
トリップホップ、UKドリル、グライム……新曲「マインド魂」を形作るサウンド
最初の頃は何言ってるんだ? と思っていた「確かな信頼、安心の実績」というキャッチ・コピーに勝手な自己解釈を付けて納得している自分がいる。作品を重ねる毎にいい意味で期待を裏切られ、そして期待以上の高揚感を届けてくれる。もう完全に“沼”だ。
また、以前は曲の中にストレートな「おふざけ」があったが、2019年以降はリズムやテンポ、使用楽器などの変化と同様に、そのユーモアもより多層的、そして複雑な文脈に変化したように思える。順を追って聴いていけば理解できるだろう。効果的にディレイや多重録音を使用するようになったかと思えば、急にスケールを逸脱したり、コード進行も複雑。さらに曲のテンポを変化させ、違和感を感じさせるような楽器の取り入れ方も秀逸だ。
ここまで深みのある作品を生み出し、そして大きな評価を得る至った理由のひとつとして、彼ら自身の音楽に対する飽くなき探究心が挙げられるだろう。個人的に彼らのSNSを以前から追っていたが、ピアノ、ギター、そしてDTMまで、ありとあらゆる楽器の可能性を探っていたように思える。また、メンバーのチョモランマはコード・オタクというだけあり、音楽理論に対する造詣も深い。こういった要素もどんぐりず大化けの要因として考えられる。
とりあえずこのレベルで晒すわ。うまくなるから見とけ! pic.twitter.com/4VcoMMfSlP
— チョモランマ銀行 (@chomobank) July 18, 2020
— チョモランマ銀行 (@chomobank) June 9, 2020
MVから紐解く「どんぐりずワールド」
ブリッジ部分から森は登場。時計回りにふたりが回る映像から一転、洞窟の中へ。先述の通り<ゆうとりますけど>の一言のみを繰り返す間、シーン転換もなく、森の体の動き、表情のみで進行する、かなり攻めた表現方法だ。曲の展開と共に一気に畳み掛ける終盤は、カメラ・ワーク/シーンも忙しなく切り替わり、ビビッドな色彩、そしてサイケデリックなエフェクトで急速的に高揚感を煽りつつ終幕。お見事だ。
また、彼らのMVで外せないのが、自らのアイデンティティである「群馬」の情景だろう。全てのMVは彼らを育んできた群馬にて撮影されており、自宅やSNSにも頻繁に登場する広場といった親しみやすい場所から、ダム、洞窟、河川敷まで、よく見つけてくるなと思わんばかりのスポットも使用している。とっておきの遊び場で、仲間と真剣に遊ぶ。彼らのMVを観ていると、そういった彼らの表現の核のようなものが見えてくるようだ。
一貫した“美学”と“自由”――多くの人間を魅了する理由
今作に至るまで、作詞・作曲のみならず、編曲からミックスまで自らで行い、カバー・アートも森が手がけている。余談だが森の画は個人的にかなり好きで、早く色々なグッズにならないかと密かに期待している。先述のMVも含め、どんぐりずに関わる全てのクリエイティブを自らが手がけることによって、そこには何にも囚われない自由と、そして一本筋の通った美学が生まれている。きっとそこに我々リスナーは琴線を震わされ続けるのだろう。
Text by あんどりゅー(https://note.com/andrew_gomikuzu/m/md28154bfe4e7)
【リリース情報】
どんぐりず 『マインド魂』
Label:どんぐりず
Tracklist:
1. マインド魂
■ どんぐりず オフィシャル・サイト(https://dongurizu.com)
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