アレキ、MAMA、TF、ポリ、電話ズらU
KP勢がオンラインで集結したフェス『
UKFC in the Air』

下北沢の老舗インディ・レーベル、UK.PROJECTのレーベル部門とマネジメント部門に関わりのあるアーティストが集結する、ツアー(として各地を回った年もあり)もしくはフェス(として開催された年もある)、『UKFC on the Road』。スタートから10回目を迎える2020年は、現在の新型コロナウィルス禍で開催が危ぶまれたが、無観客有料生配信イベント『UKFC in the Air』として開催された。

まず、UK.PROJECT代表・遠藤幸一と、FRONTIER STAGEのアーティストが出番直後に登壇するトークコーナーのMC・芦沢ムネトのふたりによる前説からスタート。今年はこのように無観客生配信で開催すること、数ある配信イベント・配信フェスの中にあって、今年のこのフェスの特色はFRONTIER STAGEの5バンドは50分という尺でたっぷり観てもらえること、などを伝える。
TOTALFAT・Shun、BIGMAMA・金井政人&東出真緒 撮影= @masaty_x
続いて、トップに出演するはずだったが、ボーカルのKENNYが体調不良で出演をキャンセルせざるを得なくなったSPiCYSOLの代わりに、何かスペシャルなものを──というわけで、TOTALFATのShun、BIGMAMAの金井政人&東出真緒の3人が登場。金井曰く「家族は助け合うものだろうと。SPiCYSOLをUKに誘った責任もあるし」ということで、3人で、SPiCYSOLの「Coral」をカバーする。Shun&金井のハモりに東出真緒のバイオリンが美しく絡む、とても新鮮な「Coral」だった。曲が終わるとShunが、「UKFC in the Air、始まります。一緒に楽しみましょう!」と、改めて開会を宣言した。
15:00 BIGMAMA(FRONTIER STAGE)
SEが終わると、間髪を入れずギター・柿沼広也がイントロを弾き始め、「UKFC in the Air、今日という日を特別に」と金井が言葉をはさんで、「SPECIALS」からスタート。曲間なしで「MUTOPIA」、さらに「荒狂曲“シンセカイ”」と、序盤はダンサブルでドラマチックな曲が続いていく。
歌声はエモーショナルだが表情はクールな金井と、バイオリンを弾く時もコーラスを入れる時もはじけるような笑顔の東出真緒が、好対照だ。最初に観た時(=7月20日、TOTALFATの配信ライブにBIGMAMAがサプライズ出演した時)は度肝を抜かれたサポート・ドラマー、Bucket Banquet Bisこと、ビスたんの姿(常にバケツをかぶっている)も、早くもこのバンドになじんでいる。
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
「ロック+クラシック」という、BIGMAMAのバンドの一側面の完成形のような「誰が為のレクイエム」、安井英人のスラップ・ベースが曲の核を形作っていく「アリギリス」と、ダークでカオスな2曲が並んだ、と思ったら、次の「ヒーローインタビュー」で、ラウドで軽やかな音像に一転。続く「秘密」、そして「かくれんぼ」では、まるでこの2曲でライブが終わるかのような高揚感が、PC画面に満ちる。
ちなみに、BIGMAMAは、8月21日に新木場スタジオコーストから無観客配信ワンマンを行ったばかりだが、セットリストはその時とまったく違っていて、両方でやっている曲は、ここまでの段階では「SPECIALS」だけだ。そのワンマンと本日の両方を観てくれるファンのことを、大事に考えていることが窺える。
オーディエンスによる「have a good night have a good smile〜」のシンガロングがきこえるような錯覚に陥る「Sweet Dreams」、「あなたの未来に希望の光を」という金井の言葉から始まった最新音源(2020年の母の日に配信リリース)「セントライト」を経て、前述のスタジオコーストが初披露だった新曲「The Naked King」、そしてラストはBIGMAMA屈指の高速チューン「CPX」と、曲が始まるごとに、コメント欄が歓喜の声に満ち、終了。
直後のトークコーナーには、柿沼と安井が登壇、アクリル越しに芦沢ムネトと言葉を交わす。柿沼、「UKFC、お客さんがいる時と同じ緊張感でした」。安井は「暑いんで脱いでいいすか?」と上着を脱ぐ。下に着ていたのは2012年の『UKFC』のTシャツ(Sサイズなのでピチピチ)。コメント欄が沸く。安井、「これ、観光バスで名古屋・大阪に行った年です」。振り向いたTシャツの背中には、その時にFRONTIER STAGEに出演していたBIGMAMA、[Champ◯◯◯e]、POLYSICSTHE NOVEMBERS、 The telephonesなどのバンド名が。
16:00 postman (FUTURE STAGE)
FUTURE STAGEの実質的なトップは、postman。2016年に、BIGMAMAが各公演のオープニング・アクトを公募して行った10代限定ツアー『Welcome to BIGMAMA University』、その名古屋公演に抜擢されたのがきっかけで、UK.PROJECT/RX-RECORDSと契約。これまでにミニ・アルバム2作、EP1作、フル・アルバム1作をリリースしている。名古屋在住の平均年齢22歳。『UKFC』には2年ぶり・2回目の出演になる。MCで寺本颯輝(Vo.Gt)も触れていたが、今日の出演アクトで最年少だそうだ。
ムスタング・タイプのギターを提げ、NIRVANAのTシャツを着た寺本颯輝が「UKFC in the Air、postman始めます!」と宣言し、「揺らめきと閃き」でスタート。7月1日にリリースしたばかりの、初のフル・アルバム『HOPEFUL APPLE』収録曲だ。伸びやかな歌メロと前につんのめり気味のリズムのコントラストが鮮やか。続く「GOD」は、その1作前のミニ・アルバム『Night bloomer』から。緩急の激しいザクザクしたギター・サウンドが響くミドル・テンポの曲で、寺本颯輝の着ているTシャツと弾いているギターに直結するテイストの曲だ。
postman 撮影=河本悠貴
「こんな愛にまみれた家族の一員で、今年もやれているのがとても誇らしいです」というMCをはさんで、初めて人前で披露したのは、一昨年の『UKFC』の頃だったという「夢と夢」。「明日 夢から覚めても僕らはまだ夢を見続けられるかな」というサビが印象的な、postmanの楽曲の中でも屈指のメロディの強さを誇る曲である。「今 どんな夢を追いかけてる? 僕にも大きな夢があるんだ」というラインに続いての間奏で、寺本颯輝、「次はFRONTIER STAGEへ行きたいと思ってます!」と叫ぶ。
ラストは、『HOPEFUL APPLE』のオープニング・チューン、「探海灯」。「溢れた想いが今尚奏でるは名もなき小さな勇気の船 そいつがあればどんな嵐も越えて行く 地図なんていらない」と、荒れる海原へ出て行く決意を歌ったこの曲は、今日の、というよりも、このバンドの決意表明のように響いた。曲を終えたメンバー4人ともに、長い時間、無観客のフロアーに向かって深々と一礼していた。
16:25 TOTALFAT(FRONTIER STAGE)
『TOTALFATプレゼンツ・Kuboty卒業スペシャルイベント』と化した『UKFC on the Road 2019』から1年、今回はFRONTIER STAGE二番手のTOTALFAT。SEとして流れていたバック・トラックにそのまま乗り、しばし音を奏でてから、始まったのは「Place to Try」。そしてオーディエンスに「♪Leave your umbrella」のシンガロングを求めてからの「晴天」、「みなさん家でタオルを回す準備はいいですか! はじけようぜ!」(Jose Vo.Gt)と、過去の『UKFC』でも何度もフロアをタオルの海状態に陥れてきた「夏のトカゲ」と、スタートダッシュで3曲畳み掛ける。
「みなさん夏っぽいことしてますか? フェスもない、出かけるのも難しい、でもあきらめちゃダメ、夏はまだ終わってない!」(Shun Vo.Ba)と、7月20日に通販限定でCDリリース、8月21日には配信も始まった『WILL KEEP MARCHING』収録の「My Secret Summer」へ。Shun、イントロでは口笛を、それ以降は歌をマイクに載せていく。
TOTALFAT 撮影= @masaty_x
そしてメンバー3人と同じように、両袖をカットしたTOTALFATのTシャツ姿のフミ(POLYSICS)がゲストとして登場。彼女にベースを任せ、Shunはハンドマイクで「スクランブル」へ。アタック感の強いフミのベースと、いっそうのびのびと響くShun&Joseのハモリが、曲を新しく生まれ変わらせている。次は同じ高校の後輩バンドBIGMAMAからカッキーこと柿沼広也が参加、ツイン・ギター編成で「X-stream」。柿沼、イントロもAメロもサビもそれ以外も、容赦なく弾きまくる。
「俺たちもUK.PROJECTに来て、長い年月が経って、これが家族なんだなと。一緒にすごしてきた時間と、これからの時間に感謝を込めて、この曲を送ります」と、始まったのは、忌野清志郎のカバー「世界中の人に自慢したいよ」。これも『WILL KEEP MARCHING』からの曲。意外なカバーだったがうまくハマっている、音源でも、もちろんこのライブでも。(ぜひ、原曲と聴き比べてみてください。)
「ここいらで一発、どでかいパーティーを始めようぜ!」というJoseの叫びでオーディエンスが察し、瞬時にコメント欄が「PARTY PARTY」の書き込みで埋まった「PARTY PARTY」。「来年は、お客さんを入れて、2年分取り返すつもりでやりたいよね。絶対、次の時代を手繰り寄せるためにがんばっていくんで、必ずみなさん、ライブハウスで会いましょう!」というShunの言葉から始まった「Good Fight& Promise You」。
その2曲を経てのラストは、「夜明け待つ」だった。緊急事態宣言中の5月20日、TOTALFATも他のバンドも、ツアーが次々と延期になったり、中止に追い込まれたりする中で配信リリースしたこの曲を、最後に持ってきたかったのだと思う。「当たり前が奇跡だと 気づけた僕たちが どうか笑って 明日も生きていけるように 明日を導けるように」というラインが、本当に切実に響いた。
17:30 ウソツキ(FUTURE STAGE)
今年で7回連続出演となるウソツキは「夏の亡霊」でスタート。2018年9月リリースのサード・アルバム『Diamond』の収録曲であり、2年前の『UKFC』で、リリースに先駆けて披露した曲でもある。「ああ 夏の亡霊に取り憑かれてる 夏の幻を今も探してる 君なんて好きじゃないのに 君なんて嫌いになりたいのに」という詞がせつないメロディに載る曲だが、ボーカル&ギターの竹田昌和、ずっと笑顔で歌っている。楽しそう。
「決して嘘はつかないバンド、ウソツキです」というおなじみの挨拶に、「画面の前のみなさん、楽しむ準備はできていますか? だまされる準備はできていますか?」という言葉を足してから、ドラム林山拓斗のキックが四つ打ちで鳴り始め、「一生分のラブレター」へ。バンドの音が一気に華やかにダンサブルになり、竹田昌和はさらに笑顔爆発。「みんな」や「あなたたち」ではなく、「きみ」ひとりに向けて放たれたラブソングを、「私」ひとりとして聴き手が受け取る、ゆえにライブの場だと「ウソツキ対多数」ではなく「『ウソツキ対ひとり』が多数」になる、というウソツキのコミュニケーションの取り方は、配信ライブというフォーマットとも相性がいいのかもしれない。
ウソツキ 撮影=AZUSA TAKADA
「『UKFC』をご覧のみなさん、いかがおすごしでしょうか。夕方なんで、ビールとか用意して、気楽に観てもらえたらうれしいです。僕ビール飲めないんですけど」というMCから、「今は曲作りをやっていて。ここで新曲を披露しようと思います」と、「ギャラクシーロマンス」という曲へ。バック・トラックを使った壮大な音の重ね方といい、ちょっと意外な曲展開といい、ウソツキの新しい一面を見せる曲だ。
「(配信ライブで)今、遠くにいる人が、出会ってくれたらうれしいけど、音楽ってやっぱ、ライブじゃないですか。だから、あえてライブハウスで……たぶんUKのみんながそう思ってると思うけど、僕らの大好きな音楽を守るために、今ここで、イベントをやっているんだと思います。これからもウソツキは、『音楽、俺ら大好きだぜ』っていうことを伝えていくから、来年なのか、再来年になるのかわかんないけど、またライブハウスで会いましょう」
というMCを経て、「名もなき感情」でライブは締められた。短いが、終始、気持ちのこもったステージだった。
17:55 POLYSICS(FRONTIER STAGE)
3人になって、というべきか、3人に戻って、というべきか、とにかく現体制での初めてのライブがこの『UKFC in the Air』になったPOLYISCS。ハヤシ(Vo.Gt)とフミ(Ba)が向かい合って立ち、真ん中奥にドラムのヤノ、というフォーメーション。
初ワンマンの頃から1曲目はこれで幕を開けていた「Buggie Technica」でスタート。というのは、意外ではなかったが、次がハヤシの歌もギターも全体的に「どうかしてる」響きだけでできている「Ah-Yeah!!」、ナカムラリョウが入って4人になった頃に作ったのを3人バージョンにリアレンジした「You Talk Too Much」、続く「Crazy My Bone」ではハヤシがギターを置いてシンセを操作しながら歌う──と、非常にレアな曲が続いていく。なんというか、「フェスの場でも勢いだけで押さないPOLYSICS」という風情。無観客であること、映像で見せていくライブであること、それゆえの選曲とリアレンジなのかもしれない。
POLYSICS 撮影=河本悠貴
その後も「DTMK未来」、ヤノが立ってパッドを叩く「DNA Junction」「Distortion」、そして新曲「Stop Boom」と、テクノ/ニュー・ウェイヴ色の強い、レアな曲の連打。「United」なんて、俺、ライブで聴いたことあったっけ、とすら思うレベル。
後半、「MAD MAC」あたりからパンク&ラウドなノリが音に加わり始め、「Broken Mac」「スリーオースリーオーマーン」を経て、最後は1曲目と並ぶライブ定番曲「URGE ON!!」でフィニッシュ。「URGE ON!!」では、バイザーがふっとんだハヤシ、爆発しっぱなしみたいな、すさまじいギターを聴かせた。
ポリがこういうライブをやること自体は、初めてではない。曲間なしでノンストップ、MCもなし、というライブ、以前にもフェスとかでやっているし。それに、そもそも、昔からある曲を、いろんな時代から持ち寄って演奏したわけだし。
ただし、1本のライブとして、このような切り口で、曲をリアレンジして並べ、構成したこの日のステージは、とても新鮮だし、驚きに満ちていた。かつて3人だったバンドが、また3人に戻った、というのではなく、まるで違うバンドになったような……とまで言うと大げさに聞こえるかも知れないが。でも、「新形態に進化」くらいのインパクトがある。『UKFC』のためにこういう構成にした、というだけではなく、今後のポリはこういう方向、ということなのかもしれない。次のライブをみれば、どちらなのかがわかるだろう。早く観たい。
あ! そういえば、「TOISU!」、一回も言わなかった。
19:00 EASTOKLAB(FUTURE STAGE)
夏が終わりに向かっているこの時期にずっぱまりなリリックの「Contrail」。膨大な情報量のバンド・サウンドが、渦のように日置逸人(Vo.Syn.Gt)のボーカルを包む「Rainbow」。音数も手数も必要最小限、と言っていいくらい抑えたアレンジで始まり、曲が進むにつれて、色彩を帯びるかのように音が豊かになっていく「Ten」。ボーカルとシンセとベースとドラムとギター、それぞれが絶妙にバラバラなようでいながら絶妙に絡み合っていく「Hug」。ファルセットのボーカルと2本のギター、その幻想的な響きがどんどん高まっていき、クライマックスで曲が終わる「Dive」。
以上の全5曲すべて、6月3日にデジタル・リリースされたミニ・アルバム『Fake Planets』からの曲で、EASTOKLABはこのライブに臨んだ。リリースしたばかりだからとか、配信ライブというフォーマットへの適正を考慮したとか、そういう理由もあったのかもしれないが、それ以上に、シンプルにこの作品に自信があったからではないか、と、5曲を観終わって思った。ずっとひとつのフェスを観ているのに、この時間だけいきなり違うところに連れて行かれたような、不思議な、そして心地よい感覚に満ちた時間だった。
EASTOKLAB 撮影= @masaty_x
「Hug」を終え、シンセを離れてギターを持ったところで、日置逸人、短いMCを入れた。「画面で観てくださってる人たちと、イベントに関わってるすべての人たちに、感謝します。ここに立ててうれしいです。僕らから、少しでも明るい未来を想像して、Diveという曲で終わろうと思います」。
そう言われてから聴いて、この曲、簡潔に端的に希望を描いた、すばらしい歌詞であることに改めて気がついた。音のインパクトに気を取られてそのへん把握していませんでした、これまで。失礼しました。
なお、バンドのオフィシャル・ツイッターによると、出番を終えて片付けの後すぐに、[Alexandros]の配信を観ながら名古屋への帰路についた、とのこと。彼らに限らず、今年の『UKFC』は「出番を終えたらすぐ帰るべし」という厳格なルールが敷かれていたそうで、コロナ禍の中での開催という事情が事情なだけにやむを得ないが、例年の最後にステージに雪崩れ込むようなノリに慣れている出演者たちは、寂しかっただろうなあと思う。
19:25 the telephones(FRONTIER STAGE)
「UKFCを踊らせにやって来たぜ! 配信だからって関係ねえ! さあみんな家で両手をあげてくれ! しょっぱなから新曲で踊ろうぜ!」(石毛輝Vo.Gt)
と、スタートしたthe telephones。その新曲「Here We Go」は、メンバー全員でユニゾンでサビを歌う、サッカーのスタジアムに似合いそうな、高揚感に満ちた曲。続く「Monkey Discooooooo」では、石毛、「サルのように踊ろうぜ!」「首ぶっ壊せ!」「踊ろうぜ!」と、通常のライブの時以上に、画面の向こうのオーディエンスにあおる。
「RIOT!!!」を経て「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!」では、ノブ (Key)がマイクを持ち、「(カメラに向かって)おうち? おうちにいるの? おうちにいても踊れるんだぜ!」と、踊ったり寝そべったりわめいたりしながらアジテーションしまくった末に、「きこえる! 踊ってる音がきこえるー!」と絶叫。
「UKPと関わりを持って12年くらいになり、そろそろ我々も新境地に入っていこうかなと。そんな気持ちをこめて新曲を作りました。今日初披露です」と紹介から始まった「New Phase」、確かにこんなふうにブラック・ミュージックに直結した横ノリな曲は、the telephonesにはなかったかもしれない。次の「Tequila,Tequila,Tequila」も横ノリでミドル・テンポ。ドラムの松本誠治とベースの長島涼平の活動再開後の演奏の充実っぷりが伺える。「もう1曲新曲やるぜ!」と始まった「Do the DISCO!」は、わりと通常のテレフォンズ寄りだな、と思ったら、途中でいきなりダブっぽくなる。確かにどの曲も、新しいフェイズに突入している。
the telephones 撮影=AZUSA TAKADA
「俺のアンプのところにTOTALFATのピックが置いてある」と石毛が言うと、「俺んとこにはBIGMAMA金井のピックがある、これを観ている人にプレゼントする! 消毒して送る!」などとノブが乗っかったりする、ゆるくて楽しいMCを経ての後半は、「I Hate DISCOOOOOOO!!!」から。フェイスシールドを付けて「ディスコー!」と絶叫したノブは、続く「Urban Disco」では勝手に「消毒タイム」に入り、除菌スプレーを噴射しまくる。
「観てるみんなと、UK.PROJECT、そして今日の会場のスタッフに、愛とディスコを贈るぜ!」と始まったラスト・チューン「Love&DISCO」は、おそろしい物量の多幸感に満ちていつつも、同時に、とてもせつなく響いた。そのえも言われぬ空気、画面の向こうのそれぞれのオーディエンスも、感じ取ったのではないかと思う。
なお、この曲と3曲目の「RIOT!!!」は、メジャー移籍前のthe telephonesが、唯一UK.PROJECTからリリースした音源『Love&DISCO.E.P.』からの曲である。特に「RIOT!!!」をライブで聴けるのは、ここ数年、『UKFC』だけだと思う。
ちなみに、「金井のピックプレゼントは金井本人からオッケー貰った」と、その日のうちにノブがツイッターで報告していた。

20:30 the shes gone(FUTURE STAGE)
この日最後のトークコーナーで、[Alexandros]の川上洋平が「今、人気あるんでしょ。」と触れたほど、まさに破竹の勢いのthe shes gone。2月からのツアーが、新型コロナウィルスによって途中で阻まれて以降も、通販限定CD『春の中に』を急遽発売したり、7月26日に初めての無観客生配信ライブを行ったりと、歩みを止めずに活動してきた。10月28日にはサード・ミニ・アルバム『FACE』をリリースすることが、すでにアナウンスされている。『UKFC』には昨年が初登場、これで二度目。
「行くぞUKFC!」と兼丸(Vo.Gt)が叫び、「嫌いになり方」でスタート。終わってしまった恋への、往生際が悪いことこの上ない思いを、8ビートのギター・サウンドに乗せて歌うこの曲から、兼丸の歌メロをマサキ(Gt)のタッピングが彩る「シーズンワン」へつながっていく。ここ最近、生のライブも配信ライブも含めて、観るたびに力強さが増している印象だが、今回もそれを更新していく、堂々たるパフォーマンスである。
the shes gone  撮影=@masaty_x
「誰かのためじゃなく、観てくれている、あなたのための曲を──」という兼丸の言葉から始まった3曲目は、ファースト・シングルであり、このバンドが本格的に世の中に見つけられるきっかけになった「想いあい」。YouTubeにMVがアップされてから約2年3ヵ月が経つ2020年8月末現在で、再生回数は1,155万回を超えている。
「僕らが歌を歌うからには、ライブをするからには、観ているあなたのために、今抱えている不安を、一緒に抱えて、ずるずるひきずって、戦っていこうと想います」という言葉から歌われた最後の曲は、「ふたりのうた」だった。「君」と一緒にいられる日々の大切さを歌った正面からのラブソングだが、「気付いてる?/当たり前は存在しないこと/君との今日も 当たり前じゃないこと」というラインは、それを超えて、the shes goneとオーディエンスのことを差しているかのように響いた。
「2020年残り、あなたが求めていなくても、望んでいなくても、僕らから会いに行きますんで。またね、the shes goneでした」。兼丸は最後にそう言った。
20:55 [Alexandros](FRONTIER STAGE)
新型コロナウィルス禍の今、自宅のベッドルームや仕事の休憩時間などにリラックスして聴けるような作品を、と、過去の曲を「Bedroom ver.」としてリアレンジ、リモートでレコーディングし、新曲も加えたミニ・アルバム『Bedroom Joule』。6月21日に配信になり、8月26日はCDでもリリースされたこの作品に収録されている「Run Away (Bedroom ver.)」を、トリの [Alexandros]は、1曲目に持ってきた。サングラス&白Tシャツ姿の川上洋平(Vo.Gt)が、ハンドマイクで、囁くように歌う姿が新鮮である。2曲目「ムーンソング」から本来のバンド・サウンドになり、続くファーストアルバム『Where’ s My Potato?』収録の「She's Very」から、そのバンド・サウンドが、ガツンとラウドに爆発する、という、徐々にギアを上げていくようなオープニング。
「まさか今年開催されるとは思ってなかったので、めちゃくちゃうれしく思っております。そして、僕の目の前にタブレットがありまして、みなさんからのコメントがあります」と、足元のタブレットの前にかがみこむ川上洋平、これ以降も、MCのたびにオーディエンスのコメントに触れる。白井眞輝(Gt)はスマホでコメントを注視している。
「これ、無観客ライブだと思ってないんで。カメラの向こうには何万人というお客さんがいる、有観客ライブ、だからがんがんあおるし、がんがん踊らせるし、がんがんシンガロングさせますから」という川上洋平の言葉から、ベースの磯部寛之がリッケンバッカーに持ち替えて「Dracula La」へ。イントロでドラムが響き始めると、書き込まれるコメントが「おーおー」一色になり、ものすごいスピードで流れていく。文字によるシンガロングだ。「もっと! サーバーぶっ壊せ!」と、それをあおる川上洋平。
[Alexandros] 撮影=河本悠貴
「もっと歌わせたいな。家でも声出していいんじゃないかなと思います」と、「Mosquito Bite」。こちらもイントロのリフが始まるや否やコメントが「おーおー」で埋まり、後半ではこの曲ならではの、そして[Alexandros]ならではの、いかついにもほどがあるバンド・サウンドを聴かせる。
「さっきtelephonesを観て、フェスって楽しいな、久々に仲間に会えてうれしいな、と思って。その最初のライブが『UKFC』でよかったなと思った」
というMCから、『Bedroom Joule』収録の新曲「rooftop」。「次はお客さんと会えるように」という気持ちをこめて書いた、という川上洋平の言葉どおり、コロナ自粛真っ只中の自分たちの気持ちが赤裸々に歌われる。
「さっきtelephonesかっこいいって言ったけど、10年前のUKFC初出演の時、全部のバンドにケンカ売ってました。この曲をやるとその時の気持ちが蘇ります」という言葉から放たれた最後の曲は、2010年のファーストアルバムでの発表以来、ライブのピーク・ポイントを担ってきた「For Freedom」だった。10年間、常に進化・変化してきたバンドだが、こうして改めてこの曲を浴びると、10年前の段階で、すでにすべてを持っていたバンドだった気もしてくる。
[Alexandros] 撮影=河本悠貴
そしてアンコール。「LAST MINUTE」のイントロのSEが鳴り、メンバーが現れ、スッと演奏に入る。ハンドマイクで、メロディひとつひとつに魂を込めるように、丁寧に歌う川上洋平、その歌に聴き入っているうちに、演奏がオリジナル・バージョンから離れ、どんどんラウドに、カオスになっていく。アウトロに至っては、もう別の新しい曲と化していた。すごいグルーヴ。曲が終わり、メンバーがステージを去っても、川上洋平は床に置いたギターとエフェクターを操作して、ノイズを放ち続けた。
ライブ後の芦沢ムネトとのトーク・コーナーで、いきなり立ち上がって「ワタリドリ」を熱唱するなど、これだけのライブをやり終えてもまだまだ歌い足りない様子の川上洋平。「楽しかったですね。配信ライブはこれで5本目なんですけど、フェスっていうか、対バンじゃないですか。また全然違う熱量というか、出演者みんなそれぞれの思いがこもってるし、それぞれのファンもいるわけだから、いろんな気持ちが入り混じってる。その感じが、フェスだなと」 と、『UKFC』への愛着を、改めて言葉にしていた。
2021年は、コロナが収束し、ごく普通に、2019年までと同じように、ライブ会場で、アーティストとオーディエンスが一緒に楽しめる形で開催できることを、信じて待ちたい。
また、たとえば2020年10月に待望のニュー・アルバムが控えている銀杏BOYZ、2月28・29日のツアー追加公演を無観客生配信で行ったsyrup16g、しばらく活動が止まっていたが(木下理樹のツイートの様子では)コロナ禍さえなければ、そろそろ動き出してもおかしくないArt-School、そして新鋭teto等の、今年は出演していないアーティストも、できれば2021年の『UKFC』で観ることができるとうれしいし、UK.PROJECTならではの、まだ見ぬ新人バンドの登場にも期待しています。

取材・文=兵庫慎司 撮影=各写真のクレジット参照
※本稿は生配信を自宅から視聴したレポートです

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