アメリカンルーツ音楽の
大御所を迎えた
ニッティ・グリッティ・
ダート・バンドの『永遠の絆』
本作『永遠の絆』について
収録曲は全部で38曲(現在、CDのバージョンによってはボーナストラック付きのものもある。2017年にリリースされた日本盤の紙ジャケット仕様は素晴らしい仕上がりである)で、ブルーグラスを中心にカントリーやトラッドの名曲がぎっしり収められている。一曲たりとも捨て曲はなく、ブルーグラスをはじめとした白人のルーツ系音楽を一般リスナーに広めようとする熱意が伝わってくる。
参加メンバーは、ブルーグラス界からジミー・マーティン、アール・スクラッグス、ヴァサー・クレメンツ、ロイ・ハスキー・ジュニア、ピート・オズワルド・カービーほか、カントリー界からロイ・エイカフ、マール・トラヴィスほか、アメリカンルーツ界からドック・ワトソン、マザー・メイベル・カーター、ノーマン・ブレイクほかといったすごいメンツである。残念なことにマンドリン奏者はブルーグラスのミュージシャンがおらず、NGDBのメンバーが弾いている。ビル・モンローの参加を祈って他に依頼しなかったのかもしれない。しかし、モンローはもちろん参加を固辞している。NGDBのメンバーはロックのアーティストだし長髪だけに無理というものである。
収録曲では、メイベル・カーターの歌う「今宵、君に泣く(原題:I’m Thinking Tonight of My Blue Eyes)」、ドック・ワトソンの「ブラック・マウンテン・ラグ」、ロイ・エイカフの「ザ・プレシャス・ジュエル」、マール・トラヴィスの「ダーク・アズ・ア・ダンジョン」など、名唱名演は多い。中でも5分近くにおよぶ「永遠の絆」が白眉で、歌も各楽器のソロも文句なしに素晴らしい。なぜか、アルバムを締めくくるナンバーはジョニ・ミッチェルの「青春の光と影(原題:Both Sides Now)」で、アール・スクラッグスの息子ランディのギターのみである。当時は彼も若手であったが、今ではナッシュビルの大物プロデューサーとなった。
このプロジェクトは大成功を収め、この後、89年に『永遠の絆 Volume2』(グラミー賞3部門受賞)、2002年には『永遠の絆 Volume3』がリリースされ、どれも大ヒットした。
TEXT:河崎直人