luz、10周年記念配信ライブで“大切
な人たち”へ届けた感謝の気持ち 「
luzである限り、僕は君に自分の信じ
る音楽を届けたい」

【Streaming+】luz 10th Anniversary Project -REVIVE-

2020.7.23 Streaming+
まばゆき光を放つluzという存在が、この世に現れてから。今夏でちょうど10年が経つのだという。光陰矢の如し、とはよく言ったものである。
めまぐるしく移り変わってゆくソーシャルミュージックシーンの中にあって、彼はこの10年間ソロシンガー・luzとしてはもちろんのこと、Royal Scandalでのユニットワークや、XYZのオーガナイゼイションも含めて、常に積極的かつ革新的な表現活動にいそしんできた。とはいえ、やはりその軸足はソロワークスに置かれてきた、と考えて間違いないはずだろう。
おそらく、本来であればluzは今年も例年のように……いや、それどろか10周年ともなれば例年以上の規模で各ライブやツアーなどを行うはずであったと思われるが、コロナ禍の収束が見えてこない現況ではそれがままならないのも事実。
このたび開催されることとなったのがluzとしては初となる無観客配信ライブ『【Streaming+】luz 10th Anniversary Project -REVIVE-』だ。なお、このライブ当日に向けてはあらかじめルスナー(luzファンの総称)たちからこれまでに公開されてきたソロでのオリジナル楽曲やカバー楽曲を対象としたリクエストを募っていたそうで、その投票結果も公式サイト上にて既に7月10日には公開されていた。
10周年という実にめでたい節目でありながらも、この渾沌とした状況の中。蘇らせるという意味も持った“REVIVE”という言葉をluzが掲げ、支持者たちからのニーズに対して真摯に応えるライブを行ったということ。また、このライブの直前には新作動画として「大切な人たちへ -luz 10th Anniversary Arrange-」を発表していたことを踏まえても、luzが今回のライブを何の為に、誰の為にこのタイミングで敢行したのかは歴然としている。
luz
「REVIVEへようこそ。今日は僕とあなたにとって、きっと特別な記念日になるでしょう。さぁ、始めよう!」
開演時刻の19時を過ぎて、ステージ上に颯爽と姿を現したluzがまず放ったのは、この言葉だった。そして、ここから彼がハンドマイクを手に艶っぽく歌い出したのは「クイーンオブハート」で、曲の途中には「clap your hands! come on‼︎」と煽りを入れてみせるなど、伝わってくるライブならではの臨場感は生とまるで変わらない。
かと思えば、「R-18」では歌の合間にマイクをクルクルと華麗に回すダイナミックなパフォーマンスもみせつつ、次いでの「ビタースウィート」では小気味良い16ビートと躍動するスラップベースのフレーズにあわせてステップを踏みながら歌うだけでなく、カメラに向けて蠱惑的なウィンクをしてみせた。さらにそのあとにはブレイク部分で「迎えに来た」のキメゼリフを吐く一幕も。ちなみに、このとき配信画面上のチャットスペースで視聴者たちが軒並み悩殺されていたことは言うまでもないだろう。
配信ライブの場合、そこに生ライブほどの訴求力を持たせるのは難しいという捉え方もある一方、“全席最前列”的な感覚を生み出せる配信ライブにおいて、luzがここでみせたサービス精神満載な立ち居振る舞いは、むしろ配信ライブならではの利点を最大限に活かしていたと言っていい。また、生ライブと違いその場の空気感や雰囲気といったものによる演出効果を受け手に伝えづらく、歌唱力や演奏力のアラが目立ちやすい、というのも配信ライブの特徴ではあるのだが、この点においてもluzは自らの持つ実力と才覚で全てを見事にクリアしていたと断言が出来る。
たとえば、4曲目に歌われた「ボッカデラベリタ」は柊キライの作曲作詞による楽曲となるが、これを生歌で表現する場合には高度な滑舌能力が必要となってくるのは当然のことで、luzはそこにプラスして危ういエロさや病み感までをも漂わせてくるあたりがなんとも秀逸であったと感じるほかない。
luz
また、奏音69によるエキゾチックなアラビアンチューン「マジックリングナイト」では、カメラアングルの細かく巧みなスイッチングを計算したかのような演技的なパフォーマンスを展開し、生配信ライブとは思えぬライブDVDのような映像クオリティと、上品な色気を醸し出すようなボーカリゼイションで視聴者を魅了し、最後にはその場にクシャリと崩れ落ちるような動きまでみせ、まさに全身をもってこの曲の世界を体現してくれたのだった。
それでいて、アカペラから始まった「光彩」でのluzは少し青みがかったホワイトライトを浴びながらシンプルに歌そのものでひとつの物語を綴りあげ、シンガーとしての純度の高さも存分に感じさせてくれたあたりもさすが。
それと同時に、そんなluzがリスペクトの念を持ちながら自ら選抜しているという各バックメンバーたちの仕事ぶりも極めて素晴らしく、今回のライブではRENO(Gt/ex.ViViD)、MiA(Gt/MEJIBRAY)、MASASHI(Ba/ Versailles)、LEVIN(Dr/La'cryma Christi)といった4人の猛者たちが、卓越したテクニックと長年のキャリアに培われた芳醇なるサウンドをluzに対して惜しみなく提供してくれていたことになる。実際のところ、V系シーンについてある程度でも知っている人間にとってこのメンツはドリームチームそのものであり、演奏隊の打ちだすしっかりした土台があるからこそ、その上でluzは自由に伸び伸びと歌えているのではなかろうか。
luz
「配信をご覧になってるみなさん、こんばんは。どうも、luzです! 僕は今日、7月23日におかげさまで27歳になりました。7月21日が活動を開始した日でもあって、僕にとって近いところにめでたいことがふたつも重なっている特別な月なんですが、今年は特に大切で10周年なんですよね。17歳から始めた活動が、ありがたく10周年を迎えることが出来ました。本当だったら、いつもみたいに画面越しではなく、すぐそばでライブをしたかったんですが、今回はいろいろな事情があって配信ライブというかたちでみんなと時間を過ごしているわけですけど。そもそも、今年はこういう時間を持つことも難しいと思っていたので、こういった中でもいろいろと尽力してくださったスタッフの皆さんや、メンバーの皆さんに感謝しています」
ここからはメンバー紹介がてら、各人とluzとの和気あいあいとしたやりとりが少しはさまれたのだが、バンマスであるRENOとの会話では「10年後の自分に、10年後もまだ歌ってるって言ってもきっと信じないと思う(笑)」という言葉がluzから出て来た場面があった。これに対し、RENOが「そうなの? 長く続ける気持ちはあんまなかったの?」と意外そうに返すと、「なかったです。趣味程度で始めたものでしたし、今までは長く続くものが何もなかったので。唯一続いてるのが歌なんです」と語ったluz。
luz
それだけに、ここから後半に向けての1曲目として選曲されていた「1925」は、luzにとっての初心を甦らせる“REVIVE”な1曲になったとも言えそうだ。
「……なんか、こういうのってちょっと緊張しますね。配信ライブって、初めてのかたちなので。皆、どういう風にコメントしてくれてるんだろう? ちゃんと、カッコよく映ってるのかなぁ?とか、つい気になっちゃいます(笑)」「今回は10周年ということで、アンケートを募って人気の10曲をやっているんですけど、自分の歌いたかったものが入っていて嬉しかったんですよね。次に歌うのは、luzとしてのきっかけになった“歌ってみた”の曲です。途中に「こんにちは」というフレーズがあるので、ぜひ皆にも届けてほしいです。ご協力をお願いします」
この10年越しの「1925」では、“活動を始めてくれてありがとう!”といったluzに対する温かい声援や感謝の声、“こんにちは”の文字がチャット画面をハイスピードで埋め尽くすことに。ネット回線を通じ、luzとルスナーたちの絆があらためて露になったと言えるのではなかろうか。
luz
「残り3曲。ここからラストスパートだ。思いっきりぶちかますぞ!」
ヘヴィに轟くギターリフにあわせて、luzが烈しい横スウィングのヘドバンを派手に繰り広げた「Labyrinth」。よりエモく熱いアレンジが織りなされていただけでなく「おい、配信とか関係ねーぞ。おまえらも“ライブにいる”んだよ。全力でかかってこい、やれんだろ! これはお願いじゃない。俺からの命令だ!」とluzが咆哮した「Dearest,Dearest」。ここでは画面前の観衆たちもいよいよ熱くなってきたようで、“親からの目線なんて気にしない”といったコメントも寄せられていたほど。
「次でラストの曲です。この10年、僕はいろんな気持ちやいろんな思いを感じながら、たくさんのものを背負ってここまで来ました。この先、何があるかはわからないです。どこまで続けられるかもわからないけど……僕がluzである限り、僕は君に自分の信じる音楽を届けたいと思っています。だから、これからも着いてこいよ。ここから先もついてこいよ。絶対、後悔させないから。だから、おまえらの全てを俺に捧げろ!」
半ば豹変するかのように、威厳的な表情をみせたluzが歌い出したのは、今回のリクエスト投票の第1位を獲得した「FANATIC」。ステージの背景に映し出されたVJによる映像演出の中や、チャット上には“教祖崇拝”だとか“キョウソスウハイ”の文字が入り乱れ、生ライブさながらのカオティックな構図が描かれると、楽曲の終焉とともに画面は一旦ブラックアウトしてしまう。
luz
ただ、これだけでは終わらなかったのが今回の配信ライブで、この後にはアンコール的な位置づけのアフタートークというものが設けられていた。luzだけでなく、バンドメンバーたちも全員がマスク姿で登場し、個々の間にはアクリル板が立てられたソーシャルディスタンシングを保った状態ではあったが、今回のライブが急遽1~2週間前に決定したものであったことを始めとして、幾つかの裏話や実際にパフォーマンスを終えての感想などがあれこれと話題に出されることとなったのだ。
「最後に、今日はサプライズを用意してあります。誕生日の自分が、あなたにプレゼントを持ってきました(笑)。本当に、今日は観に来てくれてありがとうございました。今、こうして10周年を迎えた僕の気持ちを最後に歌として贈ります」
ここで流されたのは、あらたにスタジオ収録されたとおぼしき「-大切な人たちへ -luz 10th Anniversary Arrange-Studio Ver.」で、ピアノ1台を前にluzがワンフレーズ、ワンフレーズを大事にしたためるように歌い綴っていくその様は、なんだかとても尊いもののように感じられた。
それこそ、「FANATIC」のように世界観を楽しみ演じながら歌うluzの姿もそれはもうことごとく鮮やかで素敵なのだが、こうして一切の飾り気をとっぱらったうえで彼が歌を介し伝えてくれる真心というものは、言うなればluzの内包する本質であると言えるはず。
まばゆき光を放つluzという存在が、この世に現れてからはや10年。願わくばこれから先の10年に向けても、引き続きluzには美しく気高い真心の篭った歌を我々へと届け続けて欲しいものだ。

文=杉江由紀 撮影=小松陽祐(ODD JOB)

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