Calvin Harris別名義Love Regenerat
orから紐解くハウス・リバイバル!
ここ数年のハウス・ミュージックのリバ
イバルを紹介
◆Calvin HarrisからLove Regeneratorへ
そんな彼が誰も気にせず純粋に音楽を楽しみ、自分にとって気持ち良いと思える音楽を作り始めた22年前の方法を再発見したかったという初期衝動に立ち返ったプロジェクトがラヴ・リジェネレイターだ。ルーツであるテクノ、ハウス、90’sレイヴを軸に、近年のハウス・リバイバルとリンクする作品を今年初頭からほぼ月一ペースで精力的に発表。当時のレイヴを感じさせるピアノリフに、後のドラムンベース、ジャングルの基礎とされるブレイクビーツ、そして要となるTB-303を基調としたアシッド・ベース。それらに90’s当時のサンプリング・センスをレイヤーしつつもアップデートした作品は、メジャーのみならずアンダーグランドシーンからも大いに支持された。
以前PARTY CHANNELで寄稿した話題の新曲のサンプリングネタの記事でもラヴ・リジェネレイターの当時へのリスペクトを感じさせるサンプリングについて書いたので合わせてチェックして欲しい。
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そして楽曲の浮遊感をより演出するのが何と言ってもSteve Lacy(スティーヴ・レイシー)による歌声だろう。
スティーヴ・レイシーはR&BバンドThe Internet(ジ・インターネット)のメンバーとしてギター・ヴォーカルを担当。彼らは2015年のアルバム「Ego Death」がグラミー賞にノミネート、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が結成したヒップホップコレクティブOdd Futureに所属し、ヴォーカルを務めるSydは多くのアーティストへの客演としても知られる。2016年に「フジロック」で初来日、以降の単独公演もソールドアウトさせるなど、ここ日本でも人気のバンドだ。
また、各メンバーのソロ活動も盛んでスティーヴ・レイシーはKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の歴史的傑作「DAMN」において“Pride”をプロデュースし、このアルバムはグラミー賞を受賞。驚くべきはこの楽曲をプロデュースした当時は10代で、全ての楽曲をiPhoneで制作している事も大きな話題になった。2019年にはこれまたグラミー賞にノミネートされたソロ・アルバム「Apollo XXI」を発表し、プロデュース能力だけでなく見事な歌声も披露、その類稀な才能を世に示したばかり。
そんな2人の天才によるコラボレーション、スティーヴ・レイシーのレイドバックした歌声がラヴ・リジェネレイターのトラックに乗る事でより浮遊感を増し、さらにはサイケデリックな雰囲気も引き出し、グルーヴィーでセクシーな往年のハウス・クラシックを想起させている。
そんなレーベルからカルヴィン・ハリスが自身のハウスへの想いを反映させた楽曲をリリースするのは実に感慨深い。実際、このリリースに彼自身特別な思いがあったそうで、デビュー以前にデモテープを送り始めた15歳の頃にDefectedにもデモを送り、契約には至らなかったものの「今回はこのデモを返すけど、自分を信じて。僕たちはいつか必ず何か一緒に作ることになるだろう」という手紙をもらい、以降サイモン・ダンモアと交流を深めていった。ある日カルヴィンがこの楽曲のデモ音源をインスタグラムに投稿すると「この楽曲をぜひDefected Recordsからリリースしたい」とオファーをもらって実現。約20年という時を経てカルヴィンの夢が叶い、この楽曲は4月のロックダウン時に行われたDefectedのオンライン・フェスティバルで初披露されることとなった。
カルヴィン・ハリスはこのプロジェクト始動の際のインタビューで影響を受けたアーティストを幾つかあげていたので、ここでは彼のサウンドを紐解くヒントとしてそれらを紹介していこう。
・Virtual Self (Porter Robinson)
・Paul Woolford (Special Request)
・Dance System (L-Vis 1990)
・Skream
・Eli Brown
中でも大きな起爆剤となった代表曲といえるのがCamelPhat(キャメル・ファット)が2017年にリリースした“Cola”だ。UKのDave WhelanとMichael Di Scalaによるキャメル・ファットと、Rudimental(ルディメンタル)やGorgon City(ゴーゴン・シティ)との共作で活躍するElderbrookとのコラボレーションは世界的にヒットし、2018年のグラミー賞にまでノミネート。これを機に数々のヒット曲を飛ばし続けたキャメル・ファットは、人気レーベルSolaレーベルを主催するSolardo(ソラルド)や同じく“Losing It”がシーンを飛び越えるヒットとグラミー賞ノミネートを果たしたFisher(フィッシャー)、そのフィッシャーのプロデューサーとしても噂されるChris Lake(クリス・レイク)と共に新世代ハウスを象徴するプロデューサーとしてリバイバルの波を担った。
またイタリア出身でSDJM名義で2018年にBackstreet Boys(バックストリート・ボーイズ)の“I Want It That Way”をカヴァーしヒットを記録したメンバーのSimon De JanoとMattia Vitaleに加え、“Sex On The Beach”のポップス・ヒットで知られるSpankers(スパンカーズ)の元メンバーLuca de GregorioによるユニットMEDUZA(メデューサ)は2019年のデビュー作にしてグラミーノミネート大ヒット曲“Piece of Your Heart feat. Goodboys”を受けての新曲“Born To Love feat. SHELLS”をDefetedからリリースするなど、未だに現役レーベルとしてシーンに影響力を与えている。
カニエといえば18年の“I Love It”ではAlexander O’Neal(アレクサンダー・オニール)“What Is This Thing Called Love”のDavid Morales(デヴィッド・モラレス)リミックスのベースラインを無断で使用したとしてモラレス本人から抗議を受けたのも記憶に新しい。
他にもFrench Montana(フレンチ・モンタナ)の2019年作“Wiggle It”では90’sハウス・ヒットNightcrawlers(ナイトクローラーズ)“Push The Feeling On”が、2014年のNicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)がDrake(ドレイク)とLil Wayne(リル・ウェイン)をフィーチャーした“Truffle Butter”でMaya Jane Coles(マヤ・ジェーン・コールズ)の2010年代のハウスシーンを代表する1曲“What They Say”をサンプリング。ドレイクもまた名曲“Passionfruit”でデトロイト・ハウスの巨匠Moodymann(ムーディーマン)のライヴMCの声を曲中に使用、カニエと共にその審美眼を高く評価され、ヒップホップとハウスの密接な関係はより濃厚なものとなった。
今回の“Live Without Your Love”はスティーヴ・レイシーと共にBilal(ビラル)やRobert Glasper(ロバート・グラスパー)とも交流を持つR&BシンガーJesse Boykins III(ジェシー・ボイキンス三世)もライティングに参加しており、このコラボレーションがヒップホップやR&B的な観点からもハウスの歴史を再現する作品として自然な成り行きで派生したものだとも言えるだろう。
カルヴィン・ハリスはEDMの立役者としてのパブリック・イメージが強いが、近年のハウス作品の流れ以前にも、2015年のDisciples(ディサイプルズ)との“How Deep Is Your Love”、16年のRihanna(リアーナ)を招いた“This Is What You Came For”を大ヒットさせ、早い段階からハウスへのリスペクトを体現してきた。そして今年に入ってラヴ・リジェネレイターの新曲で温故知新を体現。ハウス・ミュージックの過去と未来を改めて繋いでみせた。私TJOのSpotifyでやっているプレイリスト「TJO Crates」ではこの記事で紹介した楽曲と、この新曲との親和性を感じる楽曲を追加したのでぜひ記事と一緒にその世界観を楽しんで欲しい。
<TJO Crates>
アーティスト
- Calvin Harris
- TJO
- レイヴ
- リフレイン
- Steve Lacy
- Death
- Tyler
- Odd Future
- Kendrick Lamar
- Simon D
- Porter Robinson
- ポーター・ロビンソン
- ポーター・ロビンソン
- シカゴ
- Camel
- Rudimental
- Fisher
- Chris Lake
- Backstreet Boys
- スパンカーズ
- Kanye West
- Skrillex
- Ralphi Rosario
- Ultra Nate
- Mr. Fingers
- Finger
- Louie Vega
- Hardrive
- Barbara Tucker
- Barbara
- Alexander
- David Morales
- David
- French Montana
- The Feeling
- Nicki Minaj
- ニッキー
- Moodymann
- ディーマン
- Bilal
- Robert Glasper
- Rihanna
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