Cho_Nansはフィジカルに固執しない活
動でポストコロナの寵児となるか――
amkwとワカメヒロキに訊く

「メンバー全員が長男である」ことを前提に、バンドマン、サウンドエンジニア、空間演出、ダンサー兼マネジメントといった面々が集って結成された、異能の音楽集団・Cho_Nans。昨年・2019年にアルバムリリースと初ライブを果たすなど本格的に始動した彼らが、7月5日に配信ライブ『Cho_Nans「C_N_2_L」STREAMING』を控え、それに先駆け新曲「あなたのせいにしましょう」もリリースする。今回は中核メンバーであるamkwとワカメヒロキ――それぞれflumpoolLEGO BIG MORLでも活躍中の両名に話を訊き、ライブや新曲の話題はもちろん、活動形態上、新型コロナ以降に起きている様々な変化に適応しやすい存在とも言えるCho_Nansが、今どんなモードでいるのかを探る。
――昨今の状況下、Cho_Nansはどんなふうにお過ごしですか。
ワカメヒロキ:まずツアーが飛んだことがショッキングですよね。他のバンドみたいにしょっちゅうライブがあるわけでもないのに。(各メンバーが)それぞれの仕事もしながら向かっていたのが「ツアー無いんや」みたいな、結構無気力感はありました。
amkw:ほぼ家にいたからなぁ。それはそれで楽しかったですけどね(笑)。有意義に時間を使える期間でもあるなと。
ワカメヒロキ:まあ余裕がある方がいいよ、人生には。
――僕もすっかりリモート生活ですけど、ちょっと怠け癖というか、仕事のペースやリズムとかは変わっちゃってる節はあるかもしれないです。
amkw:うん。でもなんか、ようやくこのリズムに慣れて、コロナ禍でも色々とできるようになってきたっていうのが今ですね。だから意外と、このまま続いても有意義に過ごせそう。マジで前半はクソ怠けましたけどね(笑)。
――コロナ以前になりますけど、年末に初ライブがありました。あれはどんなライブでしたか、あらためて。
ワカメヒロキ:俺はレゴでの経験値と照らし合わせることしかできへんけど、異質というか。レゴと一緒やなっていうポイントがあんまりなかったです。趣味の延長っていう部分と商業的なバンドの間の、一番楽しい所にちゃんとおれてて。でも経験値だけは無駄にあるから、体は動く。ステージングはしちゃうんですよ。
amkw:あー俺もそんな感じやったかも。あと個人的には、思ったより自然に「ライブ」になったなと思いました。もうちょっと空間や空気感を作り込んでいく感じになるんかもなと思ってたんですけど。でもそれが悪いわけではないですし、着地点としてそこ行ったか、みたいな感覚です。
――お客さんからのリアクションも想像以上だったという話をされてましたよね、終演後に。
amkw:そう。そういうのにほだされて、すごい上がっちゃったというのもあるし。
ワカメヒロキ:Cho_Nansのライブ、Cho_Nansの音楽に一体感というワードがあるなんて、初めて気づきました。
――多分、曲を作るときには「一体感を生もう」みたいな意思はほぼ介在してないですよね?
ワカメヒロキ:「この曲で一体感を生もうぜ」っていう曲は……
amkw:ないなぁ。ライブしてみて「この曲は生まれるね」っていうのはあるけど、そこで初めて確認できた感じ。
ワカメヒロキ:1曲目はブラインドが降りてて、2曲目で開いたじゃないですか。そんときにお客さんがグワーッと前に来て、俺は結構マジでびっくりして。まあ俺も煽ったけど、そうなるとは思ってなかったから煽ったのに。
amkw:たしかに。始まる前にメンバーと、みんな緊張してるだろうから音楽を楽しめるテンションまで持って行ってあげよう、みたいなことを話し合ってたんですけど、全くそれが無くて。
ワカメヒロキ:すごかったよな。ああいうお客さんって、ちゃんとミュージック・ラバーなんやろうし、俺らが心配したとこで「ナメんな」って感じやろうね(笑)。
――一度ライブをやってみたことで、もっとこういう見せ方もできるなとか、フィードバックできたこともありました?
ワカメヒロキ:やっぱりうちは空間デザイナーがメンバーにおるってことが最大のメリットやから、予算感にもつながってくる話やけど、もっとあれもできる、これもできるっていうのは出てきそうですね。あの小ちゃいステージではやれることも限られてたけど、次は配信やから、配信だからできることもやるし、この先にコロナが落ち着いてツアーとかができるなら、アイディアはもうちょっと出せるかな。あとはダンサーがメンバーにおるのもデカイし。
amkw:(前回のライブは)ちょっとスペースがなかったから、本領を発揮できてなかったけど。
ワカメヒロキ:(笑)。だから、反省点はなかったけど、もっと良くなるだろうなっていうのはあります。
――今は次の配信ライブに向けていろいろと練っていってる感じですか。
amkw:配信だからできる見せ方とかは色々と挑戦したいなと思ってます。普通のライブやったら使えないスペースを使えたりもするので、それは楽しみにしてほしいです。
ワカメヒロキ:そうやな。結局、配信ライブってライブの代わりにはならへんから、場所もそうやしアングルもそうやし、ちゃんと別物の作品として観てもらえるように話し合ってる感じです。
――そこでいうと、Cho_Nansはもともと法田寺で無観客ライブをやったりもしているし、映像演出をできる人がメンバーにいるから、配信で何かを見せるという行為との親和性はすごく高いんですよね。
amkw:そうですね。こんなん言ったら怒られますけど、僕としては配信の方が向いてるんちゃうかな?っていうか(笑)。やりたいことをマックスできるんちゃうかなとは正直思ってます。ライブライブするのもたまにはいいけど、これがもし上手くいくなら一定のペースでやっていってもいいかな。そっちの方が空間をいろんな角度から面白く見せられるとしたら、すごく可能性があるんじゃないかと思ってます。
Cho_Nans「C_N_2_L」STREAMING
――当面は配信に軸足を置きつつ、次は一定数お客さんを入れたりとか、多分どのバンドもそういう段階を踏んでいかなきゃいけない中で、デメリットがデメリットにならない活動をできる存在ですよね。
ワカメヒロキ:たしかにそこは、うちは他のバンドよりアドバンテージはあるかも。だからちゃんと観てほしいねんな、デジタルチケットで。価値を高めて用意するつもりやから。
amkw:まだお客さんには見えてない部分もあるやん? 「配信で金払って観るってどうなん」みたいな。
ワカメヒロキ:あー、コロナがなかったら、もっとそうやろうな。
amkw:そう。だからここで良いライブが残せれば、可能性はすごく広がりますよね。
ワカメヒロキ:配信ライブという単体のカルチャーとして「面白いやん」って思ってくれたらいいよね。今の打ち合わせの通りにいけば、ちゃんと映像作品としても素晴らしいものになるはずなんやけどな。
amkw:いま素晴らしく見えるものは、俺らの力というよりはKNDOさんの力やけど(笑)。
――シンプルな仕掛けでインパクトある映像を撮ることに長けた方ですもんね。
amkw:マジですごいですよね。
ワカメヒロキ:あと、ライブのセールスポイントとしては新曲をやりますっていうとこですね。ライブ初披露は2曲。
――そのうちの未発表の新曲「あなたのせいにしましょう」も聴かせていただきましたけど、いつ頃制作したんですか?
ワカメヒロキ:2ヶ月前?
amkw:そのくらいやね。
――一番外出自粛だった時期ですね。
ワカメヒロキ:そうです。僕も暇やったしバーッと歌詞書いて送り返して、みたいなやりとりで。まあ、そこはコロナ関係なくいつも通りなんですけど。
amkw:外出自粛前に(辻村)有記と俺がよく庭飲みしてたんですけど、そのときに何曲かある中で「これええやん」ってなったのが最初です。
――そのいくつか作ってあった中から、amkwさんのジャッジの決め手は今回どこだったんですか。
amkw:やっぱりテンション感というか、重心の位置みたいなものがすごく良い感じに、筋が通ってきた感があるなと思ったんですよ。有記からも「これやと思いますよ、元気さん」みたいな感じで聴かされたので、有記的にも見えてきてる感はあるんやと思います。この6人でやってるのが見える曲というか、それはライブをやったのが大きかったかもしれないですけど。
――すごくアップテンポというわけではないけど軽やかで、ところどころにフックがちゃんとあって。
ワカメヒロキ:今回はだいぶ好評な気がします。
amkw:個人的には……曲ができただいぶ後ですけど某事件があって、時代とリンクしたなと思ってますけど。
ワカメヒロキ:曲名、「多目的」にすりゃよかったな(笑)。
――(笑)。女性目線でちょっとアダルトな歌詞というのは音からイメージしたんですか?
ワカメヒロキ:そうですね。なんか色っぽい曲やなと思って。でもCho_Nansは他にも色っぽい曲、たくさんあるんですよ。だからそれと差別化するためにはどうしようかと思ったときに、元気と有記が歌うなら女性目線は似合うなと。過去にも書こうとしたことはあったんですけど、キンタさん(LEGO BIG MORL・カナタタケヒロ)ではちょっと似合わんくて。でもCho_Nansのボーカル2人はその守備範囲があるなと思って。
――レゴだとこういうパターンの歌詞はほぼないですもんね。
ワカメヒロキ:女性目線はないですね。キンタさんって真っ直ぐな人で、それを嘘と捉えちゃう人やから。役者になりきれない不器用さがあって、それが強みでもあるけど。
amkw:有記はそういうの上手そう。
ワカメヒロキ:うん。だからこういう女性目線の曲で、これを女性アイドルに提供したら別に面白くないかもしれんけど、おっさんが6人集まって歌うギャップも面白いかもなって。やっぱりCho_Nansの美意識の中に色気というか湿っぽさはありますよね、常に。
――韻を踏んでたりとか、「ミッフィー」って出てきたりするあたり、遊び心も印象的ですけども。
ワカメヒロキ:(笑)。そこは有記にもめっちゃ言われましたわ。
amkw:ずっと言ってるな。
ワカメヒロキ:そうやって良い意味でふざけられるのもCho_Nansのメリットです。
――過去の曲も含め、レゴでは書かないようなことをあえて書いてみようっていう意識もありますか。
ワカメヒロキ:あるんですよねぇ。本当はダメなんですけど。そんな言葉を選んでたらあかんねんけど、俺はボーカルじゃないから、歌う人の顔を浮かべちゃうじゃないですか。元気が歌うのかキンタが歌うのかで言葉は変わってきちゃいますよね。
――ある意味正常じゃないですか? 作家目線というか。
ワカメヒロキ:うん。それがジャニーズとかやったらまた変わるやろうし。わざわざそんなルールを自分で設けなくてもいいんやろうなとも思ってるんですけど、でもそれを楽しめてるうちは、あんまり筆は止まらないかも。だって、俺、別に歌詞で煮詰まって時間が足りんこととかないよね?
amkw:マジ早い。なんでそんな早い?って思う。
――上がってきた歌詞もすんなり受け入れられる?
ワカメヒロキ:これは嫌やとか言われたことないかも。
amkw:たしかに。……まあ、そこに関して俺が決めるのはおかしな話なんやけど(笑)、Cho_Nanのテンション感みたいなものを逸脱したことはないかもしれん。
ワカメヒロキ:なんの権力もないのに俺ら全員がそこに従ってるのは、何か元気に弱みでも握られてるのかもしれん(笑)。
amkw:ただの初期メンバーってだけなんですけどね(笑)。でも良い具合に俺は作詞も作曲も何もやってなくて、三権分立じゃないけど、意見を言ってるくらいがちょうどいいんじゃない?
ワカメヒロキ:ほんまにそうやと思う。
――ある意味、第一ファンみたいな立ち位置。
amkw:ああ、そうやと思う。めっちゃ面倒臭いファン(笑)。
「あなたのせいにしましょう」
――今回はMV撮影もリモートとのことですけど、それはどのように?
ワカメヒロキ:KNDOさんにそれぞれが撮って送って――。
amkw:マジで自由やったんですよ。「好きに撮ってください」「あなたのせいにしてるニュアンスのあるものを5個くらい送ってください」「あとは僕がなんとかします」って言って。天才か!と思った。
ワカメヒロキ:最初はバルーンに全員が入って演奏をしようかとも言ってたんですよ、ソーシャルディスタンスで。で、それをもっとミニマムにして、消臭ビーズに映像を写したら神秘的になるんじゃないか?っていう。今のコロナの状況も加味してるし、面白いですよね。ビーズがバルーンに見えてきて、その中にそれぞれが収まってて、同じ空気にはいない。
amkw:お金もかからず、みんな家から一歩も出ずにできますよ、っていうことでそうなったんですよ。だから一番お金かかってないよね。
――ビーズの一粒一粒に映像が映ってるのは、どういう仕組みですか?
amkw:映像が映ってる上にビーズを並べて、それを上からカメラで撮ってるんですよ。それを動かしたりしたものを編集してそうなってるので、やっぱあの人天才やなって思う。0円で、しかも俺らがスマホで撮った映像だけで。
――まさに、メンバー内にこういうスキルを持った人がいる強みが出ましたね。
amkw:ほんまに強みですね。最強やと思う。
――この曲が世に出て、その後ライブがあって。他にもこの先なにか企んでいることとかありますか。
ワカメヒロキ:多分、他のアーティストもいろんな企みがあったんやろうけど、全て一回リセットされたと思うんですよ。スタート位置がフラットになった。で、この配信という形に適しているのがCho_Nansだとするなら、たしかにこの配信ライブは一回きりじゃなくていいなと思いました。それは正直、7月5日のライブの手ごたえ次第なんですけど、月に1回なのか2ヶ月に1回なのか、そこにいけばCho_Nansに会えるっていう場所は作ってもいいかもなと思ったり。
――都度、視覚的なイメージを変えたり場所を変えたりしながらできますしね。
ワカメヒロキ:そう。スパンは全然わからないですけど。
amkw:普通のバンドやったらライブハウスツアーをして最後はホールで、みたいなのを、Cho_Nansはネットでやるっていうのもいいかなと個人的には思ってます。それで最大限に表現ができるわけだから。
ワカメヒロキ:そうそう。生のライブではできんことが配信だとできるっていう。それぞれのアーティストに合った表現が増えていく中で、配信が俺らに適してるというのはメリットなんやろうな。
――間違いないと思います。
ワカメヒロキ:この記事を読んでくれてる人には、正直よくわからんっていう人が多いと思うんですよ。Cho_Nansもよくわかってないし、配信もよくわかってないみたいな。でもその人にこそ観てほしいから。
――配信ライブだったら、現時点でほとんどの人が未体験なわけで、変な古参みたいなのもいないですから(笑)。
ワカメヒロキ:たしかに(笑)。その初めての経験がCho_Nansというのはすごく適してると思うんで、迷わずGOですね。
amkw:グッズもいろいろ遊び心がある感じだし、あと、ライブ前には「初心者にも優しい全曲解説」の映像があるので。
――チケットを購入したらもらえるURLから見れるんですか?
amkw:そうです。
ワカメヒロキ:チケットを買ったらライブの1〜2時間が見れるだけじゃなくて、ライブが始まる前の何時間かも特別映像を用意して、終わったあとも打ち上げがあって。
amkw:早めに入ったら見れる映像、あれ、めちゃめちゃ大変やったから。編集を僕がしたんですけど、1時間15分くらいの動画にテロップつけるのに、50時間くらいかかった(笑)。だから……見てほしいなあ。
ワカメヒロキ:元気がそんだけ頑張ったんならな(笑)。

取材・文=風間大洋

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着