COBRAの“オイ!パンク”らしい
キャッチーさと
超パンクの精神が垣間見える
『CAPTAIN NIPPON』
超パンクなバンドサウンド
概ね3ピースでのバンドアンサンブルというシンプルな楽器構成で、ユニゾンが多いというその特性上、パンクバンドのサウンドはややもすると単調になりがちだ。逆に言うと、だからこそパンクにはキャッチーさが必要不可欠で、そういうバンドしか大成してこなかった…と言えるのかもしれないけど、COBRAにはその先を目指そうとしていた形跡がある。分かりやすい例はM11「BALLAD OF COBRA」。ミッドチューンがパンクっぽくないとは言わないが、この頃はまだ珍しい部類だったと思うし、YOSU-KOのモノローグは、少なくとも当時は他であまりお目にかかれない代物であっただろう。
そして、やはりM6「オレたち」のサウンドにも超パンクの姿勢が垣間見える。前述した通り、そもそもポップなメロディーを持つナンバーではあるのだが、リズムのシンコペーションで跳躍感や切れを出していることに加えて、後半のサビのリフレインではギターを出し入れしたり、ブレイクを入れたり、オクターブを上げたコーラスを入れたりと、単調にならないようにいろいろとやっている。この辺はパンクのDIY精神が発揮されたものと見ることもできるだろう。極め付けはM3「REAL Oi」だ。シャッフルというのも若干珍しいが、ブラスを加えている。この頃、すでにスカコアはあったはずで、ホーンセクションが入っていること自体がものすごく先鋭的であったわけではなかろうが、少なくとも当時の日本のパンクでは彼らくらいのものであっただろう。ソウル、R&B的要素だけでなく、フレンチポップスっぽいメロディーも今でも新鮮だ。COBRAのこうしたパンクだけに留まらない音楽要素の追及は、もしかすると、そののちのYOSU-KO、PONによるハウスユニット、COW COWに派生し、バンドの解散の引き金になったのかもしれないけれど、『CAPTAIN NIPPON』にパッケージされた彼らのチャレンジ精神は今も侮れないばかりか、それもまたのちのパンクシーンに有形無形の影響を与えたのではないかと考えられる。
TEXT:帆苅智之