天才フランク・ザッパの
記念すべきデビュー作、
マザーズ・オブ・インベンションの
『フリーク・アウト!』
本作『フリーク・アウト!』について
収録曲は全部で14曲。サイドAとB(当時のLP)に収録された11曲はロックとR&Bをモチーフにしたノーマルなナンバーだけれど、ストーンズ、アニマルズ、バーズ、ママス&パパスあたりをパロディー化したようなサウンドが展開されている。また、タイトルの「Anyway The Wind Blows」はディランの「Blowin’ In The Wind」を、「I’m Not Satisfied」はストーンズの「Satisfaction」をもじったものだろう。ただし、メロディーを引用しているわけではない。また、3曲目の「Who Are The Brain Police」は頭脳警察の名前の由来となった。
サイドCとDにあたる4曲はザッパの先鋭性を物語る前衛的な要素を持ち、この1枚を聴かせたいがために、前半の11曲を収録したのではないかと勘ぐってしまいそうになるほどだ。呪術的なパーツや民族音楽的なパーツがコラージュされていたり、パンク〜ポストパンク時代に登場する破壊的なイメージが提示されていたりするなど、サイケデリックロック時代に突入しようとしていたアメリカ西海岸のロック界の中で、ザッパの異端ぶりがよく分かる。このまったく新しいロックサウンドの提示は、次作『アブソリュートリー・フリー』(‘67)ではもっと過激な表現へと進化し、早くもひとつの完成を迎えるのである。
フランク・ザッパのアルバムには難解なものも少なくないが、60〜70年代の作品は傑作が多いので、ぜひ聴いてみてほしい。
TEXT:河崎直人