三浦透子、「波がたった」のMV&最新
アルバムの全容を紐解くオフィシャル
インタビュー(Vol.2)を公開

三浦透子の初のオリジナル作品『ASTERISK』より、映像作家Pennackyによる「波がたった」のMVが公開にされた。
作詞・曲・編曲を手掛けた澤部渡(スカート)氏をはじめとしたバンドメンバーが登場、テレワークの日々ならではの撮影手法でそれぞれ演奏映像を提供。少し翳りのある文学的な歌詞にシンプルなアレンジのサウンドが際立つポップソングにのせて、ノスタルジックな心象風景が映しだされている。

また、アルバムの全容を紐解くオフィシャルインタビュー“Vol.2”も公開に。それぞれのアーティストと取り組んだ楽曲ごとの想いなど、作品を掘り下げたインタビューとなっている。

三浦透子 Official Interview Vol.2「ASTERISK」
想像力を掻き立てる“ボーダーレス”な声で在りたい
――『ASTERISK』は今年(2020年)の3月中旬に完成しました。レコーディングはいかがでしたか?
楽しかった! レコーディング、好きなんです。
――具体的には、どのあたりが?
マイクとの向き合い方が楽しいですね。楽器のような感覚で面白くて。口元に近づけたら声が大きくなるし、離れたら遠くなって。マイクの種類を変えると、同じ発声をしても音が全く違ってくる。それがまた歌い方の発想に反映されて。本当に楽しいですね。
――『ASTERISK』というアルバムタイトルを付けた経緯を教えてください。
まず、2017年のカバーアルバム『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』の時、アルバムタイトルに対してすごくいろんな反響をいただけたので、天の邪鬼なんですが、今回は反対にすごく短いタイトルにしたかったんです。
記号ひとつでもいいなあと思っていたら、アスタリスクの記号と出会って。掛け算というのもアルバムに合っているし、ギリシア語で「小さい星」という意味もあったので。
曲を提供していただくという一方向のベクトルではなく、私と曲を寄せてくださったアーティストの皆さん同士が互いに光を放ちながら、掛け合わされて、増えていく。そんな双方向なイメージが湧いて、しっくりきたので。
――ここからは一曲ずつお話を聞かせてください。「uzu」は童謡のような心地よさを持つハミングですね。作曲の森山直太朗さんとは、どんなコミュニケーションを?
曲のことを具体的に話すというよりも、私の人となりを知ってもらうような会話をしてくださって。いろんな言葉をかけていただきました。
――仮歌録りの予定だった日のテイクが、そのまま採用されたそうですね。
「ちょっと試してみよう」ということでスタジオに入ったんですけど、「今日生まれた声は今日しか録れないんだ」と思ったら、「これでいいよね」というか「これがいいよね」という歌が録れて。
――この曲をどう捉えましたか?
最初にハミングというアイデアを聴いた時は、「大丈夫かな?」という不安もありました。でも、直太朗さんがスタジオで弾いてくれたギターを聴いていたら、すぐに楽しくなって。
私はあくまで、自分の声を“楽器の一パート”と認識しているので、楽器同士でセッションしているような感覚がとても楽しかったです。「音楽を作るって、こういうことなんだな」って。
――「愛にできることはまだあるかい」は、あらゆる意味で存在の大きな歌ですね。すでに多くのリスナーに愛されているし、何より、三浦さん自身、「天気の子」のデモ録りで最初に歌った曲でもあるし。
もう一度、新たな形でこの曲を歌うのは、不思議な感覚でした。
でも私という存在を「見つけてもらった」曲だったし、こうして自分の足で新たな一歩を踏み出すタイミングなので、自分の始まりと音楽への姿勢が最も顕著に映し出されている曲として、歌っておきたかった。歌もさることながら、アレンジも、いまの自分の中心にある音楽性だと思います。
――野田洋次郎さんという人物は、三浦さんの目にどう映りましたか?
うーん……分かりません。レコーディング以外、プライベートな時間でお話ししたこともほとんどないですし。そもそもヴェールの向こう側を見せない方なのか、もしくは目に映っている姿がそのもの全てなのか分からないくらい、とにかくスタジオでは常にオープンな状態で接してくださいました。
――管弦と鍵盤によるアレンジが素晴らしいですね。
アカデミックですよね。ものすごく頭を使って力も歪みも計算しながら暴れている。細部まで皆さんのこだわりが詰まっている。レコーディングの様子を見学した際の印象は、歌入れにも大きく反映されました。
お芝居も歌も、自分が満足するかどうかが全てじゃない。自分が「もう一回やったほうがいいかな?」と思っても、他の人から見たら最良という時があるので、それは尊重したい。でも、「気の済むまでこだわってもいいんだぞ!」って、背中を押されたような演奏でした。
楽器の一部でいたい一方、この曲はあくまで声が(存在として)真ん中にないと成立しないし、歌う上での手がかりも本当に少ないオケなので、その分、今回のなかでは一番いろいろな声色を試せる曲でした。
――そして「蜜蜂」は、サンタラの田村キョウコさんが作詞、砂田和俊さんと田村さんが作曲です。サンタラは以前からフェイバリットだったそうですが。
はい。一番、仲良くしている友達が教えてくれたんです。しかも「絶対、歌ったら合うよ」という風に薦めてくれて。信頼のおける友達です(笑)。それからカラオケでは、サンタラの「好き」という曲を必ず歌うようになって。
7曲のなかにブルースっぽい曲がひとつあったらいいなあと思っていたので、うれしいです。これまで歌ってこなかった曲調ですね。特に「天気の子」のイメージとは真逆というか。
砂田さんにお会いして、「長く歌い続けられる曲」とお願いしました。もしこの先も歌い続けることが出来たら、最初のオリジナルアルバムに、歳を重ねても歌える曲が入っていたら素敵だなと思って。もちろん、全ての曲がそうなれば何よりですし。
自分の声の素材感に逃げないで、しっかりと「歌い上げる」ことを意識しました。
――「おちつけ」は、TENDREからの提供曲です。
ちょうどビートが感じられる曲がほしいと思っていたところでデモを聴かせていただいて。とてもよかったのでお会いさせていただいて。
元々はTENDRE用の曲だったそうですが、河原(太朗)さんとお会いした際、「爽やかなんだけど、皮肉めいた曲もいいですね」というわがままなリクエストを伝えたら、「俺、意地悪じゃないからな」と言いつつ、がらっと歌詞を変えてくださいました(笑)。
――「波がたった」は、スカートの澤部渡さんですが、三浦さんはスカートのミュージックビデオにも出演されていて、以前から親交があるとうかがっています。
ファミレスでわいわい言い合う仲です(笑)。好きなお笑いのかたのライブでばったり会って。「こんなところで会う!?」ってなって。
自分の趣味を知られている人に曲を書いてもらうのは、正直、ものすごく照れくさかったし、恥ずかしさもあったんですが、「どんな曲を書いてくれるんだろう?」と楽しみでもありました。
高いキーで強く張った音を出しつつも、爽やかな表情を意識したかったので、ブレスの入れ方も意識しました。難しかったけど、澤部さんの人柄が感じられるあたたかい歌詞とメロディで、大好きです。
――「ブルーハワイ」は、曽我部恵一さんからの提供曲です。『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』でも、サニーデイ・サービスの「東京」を歌われていましたね。
サニーデイサービスの音楽もたくさん聴いてきたので光栄でした。カバーを経てオリジナルを歌うという流れも面白いと思って、「ぜひ」とお願いしました。
曽我部さんは私のカバーも聴いてくださっていたそうで「リクエストを聞かないで作ったほうが面白いかな?」と言ってくださったので、楽しみに待っていたらこの曲が届いて。
この曲を歌う時、必ず浮かぶ映像のような景色があって、その中で歌っているような気分でした。「遊びに行こうか」という曲にも、「遊びに行くのやめて、一日部屋で過ごそうか」という曲にも取れる、不思議な曲ですよね。
歌詞に“赤い車”が登場するんですが、ちょうど撮影のために運転免許を取ったばかりで、しかもその撮影で使う予定だった車が本当に赤色だったので「え? 見透かされてる!?」ってびっくりしました(笑)。
本当に不思議なことに、今回の作家の皆さんは、私の核のどこかの部分をちゃんと拾ってくださっていて。「ブルーハワイ」も、まさにそういう曲でした。
――最後の「FISHANDCHIPS」は、赤い公園の津野米咲さんです。
いまご一緒しているディレクターさんと初めて会ったのが“赤い公園”のライブだったんです。まだ私が高校生の頃で、その後、一緒にお仕事をすることになるなんて、思ってもいませんでした。津野さんとは六本木の純喫茶でお会いして、ツァイ・ミンリャン監督の映画の話で盛り上がりました。ちょっとアジアンテイストを感じさせる曲調ですね。
サビの歌詞は、私について書いてくれているような気がします。自分が歌って違和感のない曲というのは、今回、全ての曲に共通していると思いますが、針のようにぐさっと刺さる鋭い言葉もするっと紛れ込ませてユーモアとして昇華させているあたりに、米咲さんの人柄が感じられました。自分の曲だけど、繰り返し聴き返しています。
ある意味、一番「遊んでもらった」曲だと思うし、この曲で「あ、終わったの?」みたいな感じでアルバムを終わらせたかったので、最後に置かせていただきました。
――三浦さんは、ご自分の声について、どう捉えていますか?
これは人から言われた言葉なのですが“ボーダレス”かな。特定の年齢や性別にとらわれず、どこにでも振れられるという。
声に限らず、私自身も、「男性だから。女性だから」、「大人だから。子供だから」というカテゴライズではなく、常に誰とでも「人と人」として向き合える存在でいたい。
何でもないけど、何にでもなれるというか。自分で言うのもおこがましいんですが、曲を書いてくださる方々やリスナーの皆さんの想像力を少しでも掻き立てるような素材になれたらうれしいですね。
――では最後に、『ASTERISK』のリスナーに向けてメッセージをお願いします。
提供をしていただいた曲を歌う歌手。そのスタンスを楽しむという意味において、いまの自分の最適解になったと思います。
私なりに蒔いてみた7つの種が、どうみなさんに届いて、芽が出て、花が咲くのか、とても楽しみです。どの曲が好きだったか、ぜひ私に教えてください。

Interviewer=内田正樹

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