【前Qの「いいアニメを見にいこう」
】第30回 「BNA ビー・エヌ・エー」
現実とのシンクロにびっくり

(c) 2020 TRIGGER・中島かずき/『BNA ビー・エヌ・エー』製作委員会 びっくりした。「BNA ビー・エヌ・エー」に。「キルラキル」「リトルウィッチアカデミア」「プロメア」のTRIGGERが手がけた新作オリジナルアニメシリーズで、スタッフはそれら作品の混成軍的な感じ(……まあ、そもそもスタッフ重複してたよね、って気もするけど)。監督が「リトル~」の吉成曜で、シリーズ構成が「キルラキル」の中島かずき。「キルラキル」「プロメア」の監督である今石洋之も、キーとなる話数で重要な活躍をしている。5話(オマージュ満載の野球回! サイコー!)とか。
 地上波の放映では折返し地点まで到着したところだけれども、Netflixでは最終話まで配信済み。私はそちらで、新型コロナウイルスを避けるための自主的引きこもりタイムのうちに、ひと足お先に全話見ました。で、冒頭の感想なわけ。
 何にそんなに驚いたのか? それはもう、社会派要素ですよ。私、エンタメ作品の中にあるそういう要素に反応しがちなアニメファン。このコラムの「天気の子」に触れた第20回(https://anime.eiga.com/news/column/maeq_iianime/109246/ )だとか、「ぼくらの7日間戦争」に触れた第24回(https://anime.eiga.com/news/column/maeq_iianime/110088/
)などをお読みいただければ、ご理解いただけるかと。その意味でこの作品にはアンテナが大反応。今作はいわゆる「ミュータントもの」なわけですが、エンタメにおいて描かれるミュータントとは、それすなわち、人種等さまざまな属性のメタファなわけですよ。というわけで、作り手が意識しようとしまいと、大なり小なり差別/被差別の問題が作中に描かれざるを得ないわけですが、この作品は全12話の中でがっつりとその問題に取り組んでいる。直球の迫害も描かれれば、無意識の優越感でもって行われる差別もあり、はたまた、被差別者が犯罪に手を染めたり、暴力的な反差別運動に走ったりするといった社会構造的な問題にも目配りがある。
 シリーズ構成の中島さんを筆頭に、スタッフにアメコミなどの海外エンタメに造詣が深いスタッフも多いし、TRIGGERは海外展開に意識的なスタジオだから、当然といえば当然なのかもしれないけれども、やはりこうした、今の時代を生きる私たちにとっても他人事ではないトピックをきちんと取り込んだエンタメがアニメでちゃんと作られていることにはうれしくなってしまう。
 そして、最終話。詳細は避けるけれども、そうした社会への目配りをしてきた作品だからこそ、このタイミングで描けたとしかいうほかない、短いけれども強烈なシーンがある。私は椅子から転げ落ちるくらいびっくりしました。現状とのとてつもないシンクロ。時代との共振を意識したエンタメには、ときおりこういう瞬間があるのがたまらない。これが、私がそういうエンタメを強く推す理由のひとつなのですよ。地上波で追いかけるみなさまにおかれましては、ぜひ期待して、最後まで追いかけていただきたい。
 ……まあ、その、率直なことをいえば、やっぱり現実の社会問題を扱ううえで、手つきがちょっと危なっかしいなと感じる部分は、どうしてもある。「プロメア」にも感じたことだけれども、今、現実にある複雑な社会問題をエンタメの枠内で扱おうとすると、既存のエンターテインメント的な快楽原則になかなか上手く当てはまらないというか、そこに収めようとすることで、こぼれ落ちてしまうものはあるんですね。「そこをどうにかするのが作り手の技術だろう! 海外のエンタメはやれてるじゃないか!」と考える人たちの気持ちもわかるけど、そこは批判すべきところはしつつも、芽を潰すのではなく、育てる方向で声を上げていただきたいなと思う次第。だって、もっとそういう、社会と向き合ったアニメが沢山見たいから。私が(おい!)。
 といったところで、また次回~。あ、今後しばらく(……かな?)、連載ペースが隔月になります。というわけで、次は7月にお会いしましょう。そのころには、多少は今の状況が落ち着いてるといいっすね~。……無理かな~……。

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