SPICEアニメ・ゲーム班オススメ!今
だからこそ観たい!家で楽しめる特撮
三選 Vol.11

4月7日に発令された「緊急事態宣言」に伴い外出の自粛、自宅待機が続いていますが、そんな時こそお家で楽しめるアニメ作品を見るチャンスに変えていこう!ということで、SPICEアニメ・ゲームジャンルのライター・編集陣が総力を決して「今お家で楽しめるアニメ三選」をお届けします!(配信状況は執筆時のものです)

Vol.11選者:タカハシヒョウリ
ロックバンド「オワリカラ」のボーカル・ギター、音楽家、作詞作曲家、文筆家。その様々なカルチャーへの深い偏愛から、連載やコラム寄稿、番組出演なども多数。
tiwtterアカウント @TakahashiHyouri
オススメ作品(1)
『ウルトラマンタロウ』
(Amazon Prime Video、Hulu、U-NEXT、ひかりTV、楽天TV)
『ウルトラマンタロウ』Blu-ray BOX 12月22日発売!
「タロウ!ウルトラマン・ナンバー・シックス!」の掛け声と共にウルトラシリーズ6作目「ウルトラマンタロウ」が放送開始されたのが1973年。円谷プロダクション10周年記念作品として制作された本作は、過去作以上にバラエティに富んだ作風、スラッと頭身が高くヒーロー然としたタロウのルックス、次々登場する”ウルトラファミリー”の客演、前後編をまたいでドラマを盛り上げる強敵の数々…、レストランの全部盛りパフェのように趣向を凝らしたキャッチーさで子供たちの人気を博した。
しかしそのシリーズきっての明るい作風や、防衛チームZATのユルい珍作戦が、初期のウルトラシリーズのファンからは「子供だまし」として否定的に扱われることも多かった作品でもある。しかしどうして、あらためて見返してみると完成度の高い、10周年作品にふさわしい力の入った作品になっているのだ。大人になってから見ると、コミカルなストーリーの中にもビターな味わいが隠された物語も多く、「ユルい、ユルい」と思っていたZATの面々も”あの世界”なりにプロフェッショナルな仕事をしていたのだと気付かされる。こめかみに青筋を走らせるようなことはしない、しかしキメるところはキメる。実は一番仕事が出来るヤツ、それが「ウルトラマンタロウ」だ。「脱力系力作」という独特の立ち位置は、ウルトラシリーズ随一の抜けの良さ。
昨年はタロウの息子のタイガが主人公のシリーズが放送されるなど、現在も高い人気を維持しているウルトラマンタロウ。僕の世代だと夏休みの再放送でタロウを見た!、という人も少なくないだろう。今、あらためて頭を空っぽにしてタロウの活躍と、子供たちがチャンネルを変えないようにあの手この手を尽くす作り手の本気を味わおう。
オススメ作品(2)
『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(1969)
(Amazon Prime Video、Hulu、YouTubeビデオ)
ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃(プレビュー)
ウルトラマンがタロウなら、ゴジラはオール怪獣大進撃!「ゴジラ名作選」のような企画では決して名前があがることのない本作だが、僕はこの映画が大好きだ。子供の頃にレンタルビデオ屋で見つけたこの映画に、妙な懐かしさと憧れを感じた。たしかに、ミニラは突如ひょうきんなおばちゃん声で喋りだすし、ゴジラたちが住む怪獣島は異次元にあるとも子供の夢の中にあるとも判然としない、ゴジラ映画の王道を著しく外れた奇妙なトリップ映画である。しかもゴジラ映画が「チャンピオン祭り」というお子様ランチ的な併映形態に移行した1本目の作品で、それまでから大幅に予算削減されているため目玉の怪獣登場シーンの半分がバンク(過去の映像の使い回し)だ。新怪獣のくせにミニラをボコボコにする所しか見せ場が無いガバラは、縦に長いカエルの化け物でややパッとしない。(そもそも夢の中の話なら、こいつは実在すらしない怪獣なのだと思うと可哀想でもある。)
それでもオール怪獣大進撃には、エバーグリーンな輝きがある。監督はゴジラシリーズの人気を確立した名監督・本多猪四郎であり、ゴジラ映画の斜陽の中でもいじめられっ子少年の成長譚として、1本のジュブナイル映画として記憶に残る作品に仕上げたのはさすがの一言だと思う。放課後の昼下がり、おやつを食べて陽だまりでウトウトと見た白昼夢のようなマイナスイオン怪獣映画である。しかし、隣に住んでいる発明家のおじさんが天本英世っていうのが実に良いじゃないか。僕も、天本英世とすき焼きを囲みたいものだ。
オススメ作品(3)
『ボクらを作ったオモチャたち』(2017~)
(Netflix)
最後は良質な海外ドキュメンタリーが充実しているNetflixから、こちらのシリーズ。各年代に子供達を夢中にさせてきたオモチャの歴史を仔細に紹介する番組で、すでにシーズン3まで配信されている。スター・ウォーズ、タートルズ、バービー、レゴ…、日本人に馴染みが深いところではキティちゃんや、トランフォーマー、パワーレンジャー(日本の戦隊シリーズの海外版だ)などのオモチャたちの盛衰を、海外ドキュメンタリー独特のテンポの良いキッチュな編集と、驚異的な記録映像の数々で見せてくれる。
初めてデパートのオモチャ売り場に足を踏み入れた時、大きなフロアを埋め尽くすオモチャたちに「こんなにあったら、一生かけても遊びきれないよ!」と勝手に困ったのは僕だけではないはずだ。オモチャの発する一瞬一瞬の輝きに魅せられ、目移りするようにさまよい歩いた。それは日本でもアメリカでも変わらない。そんな世界中の子供たちをトリップさせたオモチャたちの誕生には、時にキナ臭い大人たちの成功と失敗のドラマが隠されている。特にオススメなのはタートルズの回。たった2人の若者が考え出した4匹の亀が、下水道からマンホールを飛び出し、年間1億個を売り上げる”世界の亀”に。パワーレンジャーの回も、日本の特撮作品がいかにアメリカで受け入れられていったかの経緯が良くわかる作りになっている。アメリカのオタクたちが発する「よく意味はわかんないけど、全部大好き」「巨大ロボが出て街で暴れてる…最高!」という自分が言ってるのかと錯覚するような言葉が素敵だ。

シリアスな空気、重いムードが世の中を覆ってしまう時こそ、何か「抜け」のような物が必要だと思う。インドア派を自負する自分でも、これだけ引きこもっているとどこか気が滅入ってくる部分がある。こんな時こそ、頭を空っぽで楽しめることを探したいし、自分でもそういった物を届けたくなる。世の中が黒くなるなら白く白く、現実が重くなるなら軽く軽く、それは映像やエンタメにしか出来ないことだ。というわけで今回は、配信サイトで観れる「頭をカラッポにして癒される、リターン・トゥ・小2作品」3本を選ばせてもらった。ぜひ、ちょっと脱力してフフッと笑ったりワクワクしてもらえたら嬉しい。
文:タカハシヒョウリ

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