アメリカ庶民の苦悩を
淡々と歌う
ジョン・プラインのデビュー作
『ジョン・プライン』
フォークリバイバルとボブ・ディラン
当時、ロックンロールやブルース好きはやんちゃな人間が多く、フォークソング好きは概ね裕福な家庭育ちであった。だから、当時の大人たち(日本でも同じだった)はロックンロール(=エレキギター)を不良の音楽だと決めつけ、認めたがらなかった。60年代中頃、ディランはビートルズをはじめとするブリティッシュのビートグループに影響され、フォークからロックへと転向する。ディランの転向は、当初高学歴の富裕層からは反発を受けるが、彼の文学的な歌詞やフォークロック(ロックンロールのようにうるさくない)サウンドはほどなく受け入れられていくことになる。
ディランのロックへの転向は、グリニッチビレッジやボストン界隈で活動する多くのフォークリバイバリストにも大きな影響を与え、フォークシンガーたちはブルースロックに進む者、ブルーグラス、カントリーロック、ポップロックへと転身する者などが現れて、呼び名もシンガーソングライターへと変わっていく。
政治的なスタンス
そもそもフォークソングのルーツは、貧困や差別、組合活動などについての歌を、全米を放浪しながら歌い続けたウディ・ガスリーにある。その反骨精神をシーガーやディランは生前のガスリーから受け継いでおり、政治的であるのは当然なのである。ただ、前述したように東部で活躍したフォークシンガーの一部は裕福な家庭の育ちであり、そういった歌手にとっては歌の内容が政治的なものからラブソングなどの個人的性質を持つ歌へと変わっていく。やがて、これらの多種多様な歌がアメリカンロックに進化していくのだ。アメリカンロックとは、突きつめればロックンロール(カントリー+ブルース、R&Bのミクスチャー)とフォークソング(進化系としてフォークロック、カントリーロックを含む)のフュージョンなのである。