40年も前の話、“「ヒゲ」のテーマ”
の原曲シングル発売当時をレコード会
社ディレクターが回想

※大手レコード会社の洋楽部門での豊富な経験を持つ筆者によるブログ「洋楽天国」提供記事をお届けします。
40年も前の話
「ヒゲダンス」のシングルが発売されたのは1980年の2月25日。「ヒゲ」のテーマとして発売された。
ザ・ドリフターズの加藤茶と志村けんが中心となって、1979年から始まったTBSのテレビ番組「8時だョ!全員集合」の後半コントのコーナーでダンスが披露され、バック・グラウンド・ミュージックである「ヒゲダンス」が大ヒットした。
オリジナルはソウル・シンガー、テデイー・ペンダーグラスの「ドゥー・ミー」。作詞作曲とプロデュースはケニー・ギャンブルとレオン・ハフ。モータウン・サウンドの後に出てきたソフィスティケイトされた黒人音楽(ソウル・ミュージック)で、フィラデルフィア・サウンドと呼ばれた。豪華なホーンとストリングスは音楽業界に衝撃を与えた。
オーケストラの名前はMFSB。マザー、ファーザー、シスター、ブラザーの略だが、業界の口悪い連中は「Mother Fucker Sock it to me Baby」と揶揄した。音楽TV番組「ソウル・トレイン」のテーマをスリー・ディグリーズをフィーチャリングしたシングルはビルボード・シングル・チャートで1位になった。
当ブログの筆者は当時CBSソニー(現ソニーミュージック)でフィラデルフィア・サウンドのレコード会社、フィラデルフィア・インターナショナル・レコードの担当ディレクターだった。70年代前半からオージェイズの「裏切り者のテーマ」、スリー・ディグリーズの「天使のささやき」が大ヒット。残念ながらアメリカで最もヒットしたビリー・ポールの「ミー・アンド・ミセス・ジョーンズ」とハロルド・メルヴィン&ブルー・ノーツの「二人の絆」はヒットしなかった。テデイー・ペンダーグラスはハロルド・メルヴィン&ブルー・ノーツのリード・ボーカルだった。
当時CBSソニーとして、ドリフターズの事務所である渡辺プロやTBSに売り込みに行ったわけではない。ソウル・ミュージック好きの志村やスタッフが輸入盤を聴いて考え出したアイデアなのだろう。CBSソニーとしては、反響の大きさにすぐシングルを出した。タイトルはヒゲを使えず、原題どおり「ドゥー・ミー」だった。

「なるほど!ザ・ワールド」はフジ・テレビ系列で1981年10月から始まった紀行クイズ番組。フィラデルフィア・サウンドのトランプスの曲「トランプス・ディスコのテーマ」がオープニング・テーマになった。1975年に発売されたトランプスのデビュー・アルバムに収められている。トランプスはフィラデルフィア・サウンドのスタジオ・ミュージシャン、プロデューサー、アレンジャーで構成された大規模のディスコ・バンドだった。輸入盤のLPしかないのに、番組の王プロデューサーはテーマに決めた。これもCBSソニーがお願いしたわけではない。番組が始まったら数多くの問い合わせがあり、即シングルを発売した。
40年前の良い思い出話。
>>2020年4月6日「洋楽天国」より

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