L→R Suke(W.Ba)、Misaki(Vo)、Kenji(Gu)、Ikuo(Dr)

L→R Suke(W.Ba)、Misaki(Vo)、Kenji(Gu)、Ikuo(Dr)

【The Biscats インタビュー】
何にも媚びず、
自分たちがカッコ良いと思う
ロカビリーを全力でやる

“カッコ良い女”というのが
自分の中にテーマとしてある

ハイブリッドということでは、ロカビリーチューンに男性ラップを配した「Rocka Venus」は衝撃を受けました。

Kenji
The Biscatsになる前はDJとかもいたんですよ。ロカビリーバンドでいながらEDMの要素を取り入れたりするようになって、そうなると自然とラップでしょう!みたいな感じになって、その流れが「Rocka Venus」につながったんです。この曲はシャッフルだろうが、8ビートだろうが、バスドラの位置が変わらないので、ラップが乗るんじゃないかということでやってみたんですけど、なかなか大変でしたね。
Misaki
ちなみに、この曲のラップをしているのはKenjiです。
Kenji
まさか自分がラップをすることになるとは思わなかった(笑)。

そうなんですか!? ラップはゲストシンガーだと思いました。

Kenji
僕もそうしてもらいたかったです(笑)。同じハネでもヒップホップのハネとロカビリーとでは全然違うので、めっちゃ大変でした。自分に染み付いているタイム感でラップをすると、どうしてもリズムの縦軸に合わせてしまうんですよ。でも、ヒップホップのラップは波があって、それでいい感じになる。そのニュアンスを掴むのが難しかったです。

メンバー自らラップというのはいいですね。リーゼントでスーツを着て、グレッチを持った人がラップをするとは誰も思いませんから。

Kenji
ですよね(笑)。そういう意味でも挑戦して良かったと思うし、いい経験になりました。

今後もハッとするものをたくさん見せてくれる予感がして本当に楽しみです。それに、昭和歌謡の名曲をロカビリーに昇華した「ロックンロール・ウィドウ」も注目です。

Misaki
この曲をやろうと思ったのは、The Biscatsのフロントとしては自分の中で“カッコ良い女”というのがテーマとしてあって。「ロックンロール・ウィドウ」は山口百恵さんが今の自分よりも全然若い時に、すごくセクシーに、カッコ良く歌ってらっしゃって、自分もそんなふうになりたいなと思って、今回カバーさせていただくことにしました。
Kenji
ロカビリーシーンを見渡すとドイツにThe Baseballsというバンドがいて、彼らは世界でヒットした曲をロカビリー風にアレンジしているんですよ。そこからヒントを得て、日本で売れた曲でもそういうことをしたいという話になり、だったら「ロックンロール・ウィドウ」がいいんじゃないかと。「ロックンロール・ウィドウ」をロカビリーにアレンジしていくのはすごく楽しくていい刺激になりました。

続いて、プレイ面について話しましょう。それぞれ今作を録るにあたってプレイやサウンド面などで大事にしたことは?

Ikuo
さっき「take away」を挙げた時にも話しましたけど、ドラムの音色は今っぽくして、でもノリは絶対にロカビリーということはアルバム全体を通して意識しました。ウッドベースの質感はロカビリーに絶対に必要なものなので、それと今風なドラムの音を両立させるというのを一曲一曲慎重に決め込みましたね。例えば「ハートのエース」みたいなゴリゴリした曲はバスドラの低音感をしっかり出しつつベースのローも大事にしないといけなかったし、「ロックンロール・ウィドウ」はフロアタムを使って8分を刻んでいてドラムのどっしりした感じを出した上でウッドベースのローを邪魔しないような音色にしたりとか、キャッチーな「Rocka Venus」は明るい感じの音色にしたりとか。そんなふうに音色が肝に思うことが多いレコーディングでしたね。あと、「恋はあせらず」は曲中でドラムソロがあって。そこも音色だけを聴いたら現代音楽に近い質感にしつつバンドとしてのまとまりとか、リズムのノリ感はロカビリーというところに落とし込みました。ソロ自体も簡単なフレーズにして、ドラマーとしてアピールするんじゃなくて、楽曲の彩りとして映えるものを大事にしたソロになっています。
Suke
ロカビリーのベースってランニングフレーズのイメージが強いと思うけど、「ハートのエース」とか「ロックンロール・ウィドウ」はあえて動かない、シンプルなベースにしました。「恋はあせらず」はジャズのフレーズを使っていたりするし、「take away」はカントリーの雰囲気を出したりしていて、そうやってメリハリを付けることを意識しましたね。あとは、ランニングパターンでいきたいけど、コード進行の関係で王道的なパターンがはまらない曲もあったんですよ。そういう時は自分にとって気持ち良いところを探して、いい感じに収まるようにしました。80年代にロカビリーがリバイバルブームになった時に楽曲の幅が広がって、コード進行もメジャー/マイナーが入り混じったりするようになったんですよね。それも参考にさせてもらいつつ自分なりに昇華しました。
Kenji
ギターも音色の面でロカビリーと時代性のバランスを大事にしましたね。今の一般的なギタリストの音色よりはクリーンだけど、往年のロカビリーよりはちょっと歪んでいて、クランチくらいかなという感じになっています。「ハートのエース」のギターはサイコビリーみたいなイメージ…サイコビリーくらいの激しい音にして、熱い気持ちで弾きました。サウンドプロデューサーとして編曲にもかかわってくださった真崎修さんと音作りに関しても試行錯誤して、いろいろ教えていただいたりしたんですよ。その時に微々たる調整…本当に目盛り1いくかいかないかくらいで、音がバッと変わることを知ったんです。それはすごく勉強になりました。

ゲインは高めでいながらロカビリーのギター特有の張りを保っているという絶妙のトーンを味わえます。それに、表情豊かなギターソロも聴きどころです。

Kenji
僕はコテコテのロカビリーフレーズを弾くんじゃなくて、ちょっと違ったところから要素を持って来たいと思っているんです。ギターソロはそういうことを意識して弾きました。特に難しいことはせずに、 Chuck Berryみたいなフレーズで攻めたほうがいい曲はそうしたけど、曲によってはロカビリーにとらわれないソロを弾いています。

正解だと思いますし、「take away」のフィドル・バイオリンっぽいフレーズや「Rocka Venus」のアコギのトレモロピッキングなどを聴くと、ギタリストとしてのスキルの高さも分かります。

Kenji
ありがとうございます(笑)。「take away」はカントリーっぽさを出すためにスティールギターとか、フィドル・バイオリンとかを意識してフレーズを考えました。「Rocka Venus」は「ラ・バンバ」みたいな空気感を出したいというのがあって。それで、エレキギターで夏を感じさせるソロを弾きつつ、後ろにアコギのトレモロピッキングも鳴らすというところにいったんです。確かに結構いろいろやっているけど、それぞれの楽曲で表現したいことが明確だったから悩まなかったし、それをかたちにするために練習する必要があればするという感じだったんですよ。自分がやるべきことが明確だったから、すごく楽しかったです。
Misaki
歌に関しては、いつも歌う時は曲の主人公になり切るようにしているんですね。今回は自分で詩を書いた曲も結構あって入りやすかったというのもあって、よりそれぞれの楽曲にフィットした表情を出せたんじゃないかと思います。あとは、さっきも話したように“カッコ良い女”というのがテーマとしてあったので、かわいい「take away」以外の曲は色気とかカッコ良さ、艶っぽさとかを出すことは意識しました。

表現力の高さが光っています。それぞれの曲の歌のニュアンスなどは事前に決めてから歌録りに臨んだのでしょうか?

Misaki
今回に限らずいつもそうですけど、ある程度は決めます。でも、スタジオに行ってから何パターンか自分で歌ってみて、その場にいる人たちに相談しますね。ひとりでガチガチに固めて、レコーディングまで歌い込んで、それを録るという感じではないです。

引出しの多さや柔軟さがうかがえます。そんな本作を聴いてThe Biscatsはロカビリーの枠を超えて多くのリスナーの支持を得るバンドになる可能性を感じました。

Misaki
頑張ります! どんどん新しいことをプラスしていきたいですね。ロカビリーの絶対に押さえないといけないポイントは押さえた上で、どんどん幅を広げていきたい。そうやってロカビリーが好きな人たちに認めてもらいつつ、ロカビリーに馴染みがない人にもカッコ良いと思ってもらえるバンドになることを目指します。今後の活動としては5月から6月にかけて全国8カ所でのアルバムツアーがあります。The Biscatsになってから初めてのツアーなので、ハイブリッドなロカビリーの世界観を見せつけたいですね。あと、私たちはファッションにもすごくこだわっているので、そこにも注目してもらえると嬉しいです。
Kenji
僕らもそうですけど、ロカビリーバンドは“Cats”という言葉を使うことが多いじゃないですか。それはジャズが好きな人を“Hepcats”と呼んだことから来ていて、ロカビリーを象徴する言葉になったんです。自分たちの中には”もう1度ロカビリーをリバイバルさせたい”という強い気持ちがあるし、“これがロカビリーなんだぞ!”というのを世に知らしめたくて“The Biscats”というバンド名にしたし、デビュー作も“Cat’s Style”というタイトルにしたんです。だから、今後はそれを実行していくのみという気持ちですね。ロカビリーの魅力をより多くの人に知ってもらえるように、突き進んで行こうと思っています。
Suke
最近は僕らより下の年代の子達でロカビリーが好きな人が増えてきているんですよ。ロカビリーは時代を超える魅力を持っていることを確信しているので、僕らが感じたロカビリーのカッコ良さを若い世代の子たちに伝えて、その子たちがまたより下の世代に伝えていくというかたちに持って行きたいんですよね。そうなれるように頑張ります!
Ikuo
ライヴの話になりますけど、僕はライヴの時はスタンディングでドラムを叩いているんですよ。だから、ライヴを観てもらうとCDとはまた違った魅力を感じてもらえると思います。立ってドラムを叩くというのは、なかなか他のバンドでは観れないですよね。そういうところでもThe Biscatsならではのカッコ良さを味わってもらえると思うので、ぜひライヴに来てほしいです。
Misaki
あと、このバンドでは海外にも出ていきたいというのがありまして。コロナ・ウィルスの状態によってどうなるか分からないけど、4月にラスベガスに行く予定なんです。『VIVA LASVEGAS ROCKABILLY WEEKEND』というイベントがあって、去年も出させてもらったんですけど、もう何万人もロカビリー好きが集まるんですよ。世界ではそういうロカビリーの大きいフェスとかが開催されていて、すごく可能性があるので、そういう場にもどんどん挑戦していこうと思っています。

取材:村上孝之

ミニアルバム『Cat's Style』2020年3月25日発売 ROCK'A BEAT TOKYO
    • TMER-20001
    • ¥2,200(税込)

『The Biscats TOUR 2020 “Cat’s Style”』

5/16(土) 東京・青山RIZM
5/24(日) 宮城・仙台MACANA
6/06(土) 北海道・札幌COLONY
6/12(金) 愛知・名古屋Heart Land
6/13(土) 大阪・Beyond
6/20(土) 富山・Sound Power
6/26(金) 広島・CAVE BE
6/28(日) 福岡・福岡CB

The Biscats プロフィール

モデル、ファッションプロデューサーとしての顔を持つ Misaki を中心として、2019 年に結成。同年4月にラスベガスで開催された『VIVA LASVEGAS ROCKABILLY WEEKEND #22』で日本を代表してパフォーマンスを行ない、国内外の幅広い世代に支持される。20年3月、新レーベル『ROCK’A BEAT TOKYO』よりミニアルバム『Cat’s Style』 をリリース。The Biscats オフィシャルHP

「ハートのエース」MV

「take away」MV

OKMusic編集部

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