chelmicoはなぜ愛される?“ゆるさ”
の先にある5年目の飛躍

chelmicoがchelmicoである理由。チャー
トシーンに迫る“ゆるさ”のアイデンテ
ィティ

彼女たちの名はchelmico(チェルミコ)。MC RachelとMC Mamikoからなる2人組のラップユニットだ。

2020年1月17日にリリースしたシングル「Easy Breezy」がTVアニメ「映像研には 手を出すな!」OPテーマに起用され注目を浴びると、2月28日リリースのデジタルシングル「Limit」は、フィットネスジム『JOYFIT』とのコラボソングに抜擢された。2020年最初のブレイクアーティストになるとの呼び声も高い彼女たち。その魅力はいったいどこにあるのか。今年リリースの2つのシングルから、chelmicoの魅力を紐解いていく。

そろりと始まった、アーティスト・che
lmicoのアクティビティ

chelmicoの2人が音楽活動をスタートさせたのは、いまから6年前の2014年。ひょんなことがきっかけで「シブカル祭。」のステージへと上がったのが最初だ。当時は2人とも音楽に携わる気がなく、思い出づくりのような感覚でステージへと臨んだが、2人の思惑とは裏腹にchelmicoのパフォーマンスは好評を博した。やがて評判を聞いた各所からライブのオファーが届くようになり、少しずつプレイヤーであることにハマっていった彼女たちは、「自分たちの言葉で表現したい」という想いを強くする。
chelmicoの2人がオリジナルのリリックと一部作曲を担当した「ラビリンス’97」

2015年5月、2人はリリックと作曲を担当した「ラビリンス’97」をリリース。楽曲提供を受けていたこれまでとは違う形で、アーティストとしての一歩を踏み出した。しかし、こうして生まれた同楽曲が、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍するchelmicoの現在の魅力を表現したものであるかと言われれば、自信を持って「YES」とは答えられない。もちろん同楽曲もアーバンでクールなスタイリッシュさが目を引くナンバーではある。けれども、いまの“chelmicoらしさ”とは、少し毛色の違う曲であるような気がしてならないのだ。

2020年の飛躍を支える普遍的なchelmic
o“らしさ”とは

では、現在のchelmicoを構成する“らしさ“とは、どのようなものなのだろう。僕はそれを、「ファッションアイコンとしての佇まいを持ちながら、独特のゆるさを貫く姿勢」だと考える。

つなぎやジャージ、パジャマなどを身にまといながら、リラックスした等身大の自分たちを表現する2人。リリックに込められるのは、ある種、あきらめにも近い感覚から生まれるポジティブなメッセージだ。2人は過去のインタビューで「無理をしないことが大事」と語っている。こうしたスタイルこそが、活躍著しい彼女たちの“らしさ”となっているのではないだろうか。
そのようなスタイルは、2020年リリースの2曲からも感じることができる。1月発売のシングル「Easy Breezy」のMVでは、ジャージのようなファッションで快活なパフォーマンスを見せてくれている。リリックには「開き直ればどんな状況でもなんとかなる」という彼女たちらしいメッセージが込められた。まさにいまのchelmicoのスタイルを象徴するキラーポップチューンだ。同楽曲は、NHK総合にて絶賛放送中のアニメ「映像研には 手を出すな!」のOPテーマに起用された。YouTube上にアップされたMVの再生回数は約630万回(2020年3月7日現在)。この数字は過去アップされた作品と比較しても突出したものとなっている。
chelmico「Easy Breezy」【Official Music Video】

さらに去る2月28日には、テレビ朝日系音楽番組「ミュージックステーション」に同曲で初出演。本番のパフォーマンスはもちろん、放送外のエピソードトークまで含めて、“らしさ”に溢れた内容だった。実はchelmicoの2人はライブが苦手だったのだそう。こうした意識も「自分たちが楽しめばいい」という自然体な心構えへの転換で乗り切ってきたという。ビジネスパートナーではなく本当の友だち同士が音楽をやっているという空気感は、公私ともに仲の良い彼女たちだからこそ織りなせる代物だ。ステージ上の2人の間からは、特別な音が流れてくる。生放送での歌唱からそう感じた視聴者も多かったに違いない。

chelmico × JOYFIT コラボソング「Limit」

そして、こちらは2月28日リリースのデジタルシングル「Limit」のMV。やはりここでも際立つのは、2人の独特のゆるさである。同楽曲は、フィットネスジム『JOYFIT』とのコラボソングに起用された。ストイックさが必要とされるトレーニングと彼女たちのゆるいスタイル。正反対のもののようにも思える2つがコラボした異色のナンバーだ。

JOYFITによると、

運動は大事とか、継続は力なり、とか。わかってるけど、 何かアガらない。そもそも若者だってひまじゃない。 たった一度のこの人生、 行きたい場所も会いたい人も食べたいものもたくさんある。 フィットネスは本来 カラダを、自分を、自由にすること だから。もっとゆるくて自由でマイペースな ジムとの付き合い方もあっていい。

のだそう。こうしたイズムから、ゆるくマイペースなスタイルで注目を浴びるchelmicoが起用されたようだ。

MVの中の2人をファッションアイコンとして見るのであれば、最近の彼女たちとは違ったテイストのようにも感じられる。セットアップスーツのようなフォーマルな衣装でパフォーマンスする姿は、ここまで話してきたchelmicoの“らしさ”とは一線を画するものだ。しかし、MV全体を見ると、やはりそこには独特のゆるさが見え隠れする。タイアップでこういった曲をリリースできることが、彼女たちのスタイルが市民権を得ている裏付けと考えられるのではないだろうか。本来、1曲の中で最もキャッチーとされるサビをタイアップ曲に用意しないアーティスト。それがchelmicoなのだ。
まもなく「ラビリンス’97」のリリースから5年が経過する2人。時間の経過とともに歌唱やリリックといったアーティスト性の部分は洗練されてきているが、対照的に醸し出す空気や佇まいはゆるさを増している。無理をしないからこそ推進力の衰えない彼女たち。「分断するシーンの境目を照らしたい」と話すchelmicoの魅力が、ようやくチャートシーンに追いついた。

chelmico

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Rachel個人Twitter
Mamiko個人Twitter

chelmicoはなぜ愛される?“ゆるさ”の先にある5年目の飛躍はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

アーティスト

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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