澄んだ声を持つ原石・熊川みゆ。物語
を空想する音楽家の背景に迫る

芯の強さを感じる、透き通った声を持った原石。熊本出身の昨年上京を果たした熊川みゆは、まだ何にも染まっていない魅力を持ったシンガーソングライターだ。等身大でありながら、過度に私情を挟むことのない物語調の歌は、透明感のある声と相まって誰の心にも届くだろう。『Phantasm』はそんな彼女にとって最初のパッケージ作品であり、これから大きな舞台へと羽ばたいていく彼女の最初の一歩である。<こんなに小さくても何かを生み出せる>(「Ancient story」)、きっとこの一節こそ彼女の原動力であり、音楽家としての可能性だ。初インタビューで彼女の音楽背景を辿ってみた。

空想を曲にする

ー小学校1年生の時に民謡を始めたそうですね。

小学生の時韓国ドラマが大好きで、その主題歌として使われていた韓国の民謡にこぶしやゆりが入っていたんですよね。それを聴いた演歌好きの祖父が、「民謡を習ったらどうか」と言ってくれたのがきっかけでした。最初は乗り気ではなかったんですけど(笑)、民謡を歌う中でステージに立つことが好きになり、歌の魅力にどんどんハマっていきました。

ー自分にとって音楽が大事なものに変わっていった理由はなんですか。

自分が得意なことって大好きになるじゃないですか? 民謡って昔の口調で書かれたいるので、意味も難しく、小学生の頃はわからないまま歌っていたんですけど。一生懸命歌っていたら、涙が出たよって言ってくれる人がいて、自分にもこんなことができるんだって感動したんです。それで音楽を凄く好きだって自覚して、中学からはギターを始めて作詞作曲もするようになりました。

ーギターを持ったきっかけは?

民謡も6年間やってきたので、そろそろいいかなって思っていたタイミングにYUIさんを聴き始めて。ちょうどその頃ギタリストとの出会いもあり、ギターって凄く良いなと思いました。そしたら小学6年生の時に壊れかけのギターがタンスから出てきて、「(家に)あるじゃん!」ってなって(笑)。それで弾き始めました。

ー熊川さんの音楽からはEd Sheeranの要素も感じますが、YUIの他にはどんな音楽を聴かれていましたか。
Ed Sheeran大好きです。あとはTaylor Swiftや、Avril  Lavigneもよく聴いていましたね。
ーソロのシンガーに惹かれますか?
そうですね。やっぱり自分がシンガーソングライターなのが大きいと思います。みんなで音を作るところに青春感があって、バンドも良いなって思っていた時期もあるんですけど、シンガーソングライターは全部自分で歌詞と曲を書いて歌うので。自分だけのものを作れるところ、自分だけの表現ができるところに惹かれます。
ーどの曲も弾き語りで歌えるようなシンプルに強いメロディがありますが、曲作りはどんなところから始まりますか?
私の場合は、風呂場でできることが多いですね(笑)。ギターを弾いている時にできてくる曲もあるんですけど、お風呂場が一番曲作りに最適な場所です。
ーその段階でもう歌詞も出てきますか?
出てくる時もありますが、そこから変わることもあります。私は曲作りの中で歌詞が一番難しいと思っているので、凄く考えます。メロディに合う言葉を探しながら、その曲の主人公がどんなことを考えているのかを詰めていくように歌詞を書いています。
ー曲の主人公を考えるということは、自分の曲作りは物語を作っている感覚に近い?
まさにその通りです。あくまでも自分のことではなく物語として聴かせるというか、自分の実体験を元に書くとしても、外から客観的に見ているような、オブラートに包んでほわっとさせて歌っている感覚があります。
ーそれは何の影響で?
小さい時から物語を書くのが好きで、自分が考えた物語を学校でもノートに書いていて。そのノートが11冊くらいあったんですけど。
ー小説家になりますね。
本当に小説を書きたいと思っていた時期もありました。でも、あんまり人には言わなかったので、そのノートを友達に見られた時全部捨てちゃったんですよね。後になってから、もったいなかったなって思いました(笑)。
ーそれ、本当にもったいないと思います(笑)。昨年配信でリリースした「青空なんて飛びたくなかった」では、ミサイルが飛んでいく様を擬人化して歌っていますね。あれはまさに、絵本のような曲ですね。
朝のニュースを見ていた時、ミサイルが飛んでいったところを見て凄く衝撃的だったんですよね。北海道の上空を飛んでいるニュースだったんですけど、学校でも友達がその話しをしていて、私は「ミサイルはどういうことを考えてるんだろう」って考えて擬人化させた曲を作りました。あれは小学生の時に物語を作っていたことの影響が出ていますね。今回のアルバムタイトルの「Phantasm」も、一般的なのは「亡霊」という意味ですが、「空想」という意味があって。私は「空想の産物」というような意味でつけています。自分は想像するのが好きで物語を書くように曲を書くので、聴いてくれた人にも自分なりに何かを想像することに繋がればいいなという思いを込めて今回の作品を作りました。
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