山本一慶インタビュー「客席の笑い声
もこの作品の一部です」 主演作 ロ
ンドン・コメディ『Run For Your Wi
fe』再演へ

2019年7月に上演され好評を博したロンドン・コメディ『Run For Your Wife』の再演が決定! 主役のジョン・スミスを演じるのは本作が初のシチュエーションコメディ挑戦となった山本一慶。戯曲の面白さに魅了され、自らも再演を願っていた本作に寄せる思いをじっくりと語ってもらった。
──初演から再演へ。改めて同じ作品、同じ役に向き合う気分とは?
初演の時は僕自身もこういう生粋のコメディをやるのは初めてだったので新たな挑戦ではあったんですけど、戯曲を読み進めるうちに普通のお芝居でやることと特に変わらないんだな、というのを感じました。コメディだからって率先して笑かしに行くとか、変なこと、ふざけたことをしなきゃいけないとかじゃなく…すごく完成している台本ですからね、この通りにこの役を演じていれば自然と面白くお客さんには捉えてもらえるぞって。
山本一慶
で、いざやってみたら、やっぱりその通り。普段のお芝居と変わらない気持ちでできましたし、お客さんにはすごく笑っていただいた。満足度も高かったと思います。僕自身も「これはお芝居を好きになるきっかけになるような作品だな」という気持ちになりました。その時漠然と「再演できたらいいな」とは思ったんですけど、こんなに早く実現できたのはちょっとびっくりです。
──山本さんが演じるのは主人公、二人の妻を持つタクシー運転手のジョン・スミス。
もはや浮気ではなく奥さんが二人いる段階まできてしまっている、重婚しているけどすごく幸せな男なんて、もうそのこと自体が普通に考えてやばいというか、世間から反感を買うことじゃないですか! それでもこのジョン・スミスは観客から嫌われることはないし、彼が主役のこの『Run For Your Wife』という作品も長く長く愛され続けている。その理由ってなんだろうって考えると…やっぱりね、ジョン・スミスは単純にちょっと馬鹿なんです(笑)。はたから見てると「ふたりの女性をただただ純粋に愛してしまったんだよね」「好きになっちゃってこうなっちゃったんだね」って、逆に「可哀想」と思えてくるような男性なんですよ。「気づいたらここまで流れついちゃったんだよね」って思わせちゃう。
──計算尽くしのドンファンではない、同情すべき人間くささが魅力の男性。
最初は受け入れてもらえるかなぁとちょっと不安にもなりましたけど、お客さんの反応を見ていると、すごく楽しんで、たくさん笑ってくださって。みんなこのキャラを愛してくれてるんだなとわかりました。
山本一慶
──今の日本ではコンプライアンスが怖いヤツですね。
ま、いろいろありますよね(笑)。だからこそ非現実の重婚物語が現実であるかのように目の前で繰り広げられているというのは、やっぱり面白いんじゃないかなぁ。「せめて物語の中だけは」って。
──奥様お二人は舞羽美海さんと十碧れいやさん。新キャストになりますね。
まだこれからお会いするんですけど、今の印象としては大人の女性としてのパワーが強いな、圧があるなって思います。「妻力」が強そうですよね(笑)。より一層僕のことを引っ張って、かき乱してくれるような奥さんになるんじゃないかと期待しています。ジョンの駄目感が強くなりそうだなぁ。
──初演に引き続きジョンの隣人・スタンリーを演じるのはルー大柴さん。年の離れた友人関係も今作の欠かせないスパイスになっています。
ルーさんとの思い出はいっぱいありますけど…やっぱりルーさんってすごくて、舞台上に立っている時もルーさんなんですよ! あくまでもスタンリーというキャラクターではあるんですけど、でも、やっぱりそこにいるのはルーさん。役を纏いながらそこの域までいけてしまうのって、経験と、あとやっぱりルーさん自身の存在の仕方、ルーさんが持っている自分というしっかりした芯があってこそ。そんなルーさんとのお芝居は、本当に面白い体験でしたね〜。本当、ルーさんだから許されるお芝居っていうのが存在してて、それは僕たち若手にはまだまだできていない未知の領域で…。積んできた経験のすごさを思い知らされました。
山本一慶
──そしてジョンの重婚を怪しむトラウトン警部を演じるのは安井一真さん。『あんさんぶるスターズ!』での共演など、馴染みのあるおふたりというイメージが。
そうですね。僕のイベントにも出てもらったり、お互い話もすごく合うし…ゲームの話とかもめちゃめちゃするので。その一真とこういうタイプの作品で共演できるのは嬉しいです。前回の僕同様、一真もこれが初めてのコメディみたいで、そういう新しい挑戦の場に僕が立ち会えるのは面白いなぁ。彼の真面目なところはちょっとトラウトンっぽいかもしれないし。彼の持つ良さがいい感じに役に還元できるような予感がしています。
──本番に向けて楽しみにしていることは?
お客様の反応、笑い声。やっぱりコメディって全編通してお客様の笑い声や反応をダイレクトに感じられるのがすごくいいことだと思って。普通の舞台だったらみなさんやっぱり大人しく見てくださるから、「ちゃんと届いているかな」ってふと思ってしまう瞬間もあります。なので、生の笑いはとても楽しみ。今これがすごく伝わってる、感じ取ってもらえているっていうのが目の前の楽しそうな表情や笑い声から感じ取れるなんて、すごく贅沢だよなぁ。前回、それがすっごく嬉しかったし楽しかったので、今回も楽しみにしています。僕、この作品はもはや客席のみなさんの笑いも作品の一部になっているように思うんですよ。コメディを観たことがない人は舞台上が面白くても笑っていいのか笑っちゃいけないのか、迷うと思うんです。でもこの舞台ではみんな声を出して笑うし、手を叩いて喜ぶ人もいる。そういうの、全然構わないですからね…っていう意味でも、客席の皆さんには早めに空気に慣れてどんどん楽しんで、どんどん笑ってもらいたいです。
山本一慶
──2.5次元舞台でも数々の人気キャラクターを演じられている山本さん。今後、俳優としてのベクトルの向かう先とは… 
僕は2.5次元作品がすごく好きで、なんかもう…そろそろ「2.5次元」と括らなくてもいいんじゃない? どれもみんな同じ演劇だよねって思うんですよね。もちろん、「2.5次元」と銘打ってもっともっと海外に向けて発信していけるエンタメだとも思いますし、長く関わってきている僕には僕なりの財産として世界に提供していけるものがある。ずっと関わり続けたいジャンルであるのも確かです。自分としてはもっともっと2.5次元作品でできることもあると思うし、役者としてはこういうストレートのコメディとか、シェイクスピア劇とか、2.5次元舞台とか、全部を互いにフィードバックさせながら「やっていることはひとつ。演劇です」という気持ちで頑張っていきたいですね。
また、30歳を過ぎて、ちょっと気分が変わったかなぁ…って。いろんな世代の人とお芝居をするのにすごくいい年齢になってきたと思うんです。下の子たちとも上の世代の方とも普通に話せるちょうど中間地点に立てている今って、若い刺激をもらい、先輩から学びをもらい…両方からいろんなものをたくさんもらえている。30代に入ると周りから変にプレッシャーをかけられて「ここからいろいろ大変だぞ」って言われることも多いんだけど、当事者の僕的にはむしろまだまだできること、挑戦することいっぱいあるじゃんって思えて。「ここからもうワンステップ上がれる素敵な年齢じゃん」ってね。
──さらに視界がひらけていく。いいですね。
今回ご一緒するルーさんは66歳。正直、最初はそれだけ年の離れた方と親しい役ができるかなって思ったんですけど、ルーさんはいつも同じ目線で話をしてくださいますし、本当に普通に友達みたいな感じで打ち解けられて、年齢の壁なんて全く感じなかった。そういう先輩から得るものはとても多いですし、そこでちゃんと付き合いができる大人でいられる自分も嬉しいし…ルーさん、ホントに素敵な方なので。
山本一慶
──ルーさんがいらっしゃる限り、再演、再々演…と続けていける…かも?
そうですね(笑)。再演が無事幕を閉じたら「ルーさん、もう一回やる?」って聞いてみようかな。たぶん「もうやらないよ」って…前回聞いた時もそう言っていたんですよ。「もう俺はやらねえぞ」って(笑)。でもこうして今回も出てくれているんで、ぜひまた聞いてみないとですね。
──まずはこの春の再演。楽しみです。
『Run For Your Wife』は少し昔の作品ではありますが、ロンドンのことを知らなくても、あまりコメディに慣れていなくても、時代背景を考えていなくても大丈夫。下準備なくただただこの作品を観に来るだけで結構です。ただただ観に来ていただいたら、そこにただただなにか面白い空間が広がっている、みたいな作品。テーマパーク的な感じで足を運んでいただければ、純粋に濃密な笑いがそこに待っています。僕自身いろんな舞台をやってきている中でも『Run For Your Wife』ってすごく「面白い」と思うんですよ。台本の完成度が高くて…だからこそ演じるのが難しい部分もあるんですけど、役者と脚本の合致があった時、ただただ、ほんっと面白い時間が過ぎていくんです。やっている側もあっという間に感じるくらいに──。ストーリー展開の面白さも年齢層問わない内容ですし、舞台はハードルが高いと思っている方にこそ観てハマって欲しい、「舞台って面白い!」が詰まった1作です。たくさんの方に観て欲しいです。ぜひぜひ劇場に来てください!
山本一慶
メイク:瀬川なつみ スタイリスト:タクロウ 衣裳:ag、VICTIM&CO.
取材・文=横澤由香 撮影=敷地沙織

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