綾ベン企画最新作をゲネプロレポート
 綾田俊樹、ベンガル、広岡由里子の
三人芝居『川のほとりで3賢人』が下
北沢・駅前劇場で上演

東京乾電池の綾田俊樹とベンガルが「楽しい芝居をやろう」という想いで、20年前から続けている綾ベン企画。その最新作『川のほとりで3賢人』が東京・下北沢の駅前劇場で上演されている(3月1日(日)まで)。演出を手掛けるのは前回公演に引き続き、綾田、ベンガルともにゆかりの深い映画監督の平山秀幸。ゲストは東京乾電池の後輩でもある広岡由里子が、満を持して登場する。2月21日(金)の初日開幕直前に行われた、ゲネプロを観た。
舞台となるのは多摩川の河川敷。ステージにはブルーシートをガムテープでつぎはぎした小屋が二つ建てられ、その真ん中にはベンチが置いてある。向かって左の小屋に住むホームレスは、綾田演じる京本翼。元俳優で、昔出演したピンク映画の思い出を今も大事にしている。右の小屋に住むホームレスは、ベンガル演じる二本松一樹。少々偏屈なところがあり、アルミ缶とスチール缶の仕分け方など自分の決めたルールには口うるさい。京本はしょっちゅう貯金通帳をチェックし、共有物はきっちり割り勘にするなどお金にこだわるタイプ、二本松はティーバッグを干して何度も再利用するほど節約に厳しいほうで、手先が器用なので小屋の前のベンチも彼の手作りなのだという。性格や趣味が違うせいで時々口ゲンカはするものの、たとえ水害で流されてもまた隣り合わせで小屋を建て、いろいろと協力し合って平和にのんびり暮らしているのだ。
そこにある日突然、広岡演じる馬場マチコが現れる。その地域の福祉課の職員、しかも主任だと名乗るが、おでこには変に目立つ絆創膏が貼られ、自らのことを“マチコ”と下の名前で呼び、なんだか挙動も不審なので二人は怪しむ。マチコの目的が見えない中、それでもだんだん交流を深めていく京本と二本松。そして穏やかだったはずの彼らの日常は、マチコの言動により少しずつ微妙にズレていく……。
二人のホームレスの過去にちょっとした秘密があったり、つかみどころのないマチコの存在が妙に気になったりして、決してわかりやすいコメディとは違う、不思議な空気が流れる約1時間半。広岡は謎に満ちたキャラクターを怪演して、舞台上の綾田とベンガルだけにとどまらず、客席に座る者の心さえも引っ掻き回してくれる。おそらく誰も予想だにしない展開にギョっとさせられたり、オレンジ色のライトに照らされた夕景に佇むホームレス二人の姿がやたらと切なく見えてきたり。ちぐはぐなやりとりにも可笑しみがあり、噛みしめるほどに味が沁み出すような作品となっている。
この物語の登場人物三人はとにかく存在が濃く、イマドキの若者たちよりもむしろ生命力に満ちているようにも感じた。彼らの行動をただ追っているだけで、元気がもらえそうだ。人間関係の変化具合にハラハラドキドキでき、マチコの行動にいろいろな意味でヒヤヒヤさせられ、そして終演後はホッコリした気分で劇場を出られること、間違いなし。このチャーミングな熟年たちに会いに、ぜひとも劇場へ足を運んでほしい。

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