ヴァイオリニスト・三浦文彰インタビ
ュー 「海外の著名なオーケストラと
指揮者を迎える東芝グランドコンサー
トは贅沢なシリーズ」

海外の著名オーケストラと指揮者、豪華ソリストらの共演で毎年、話題を集める「東芝グランドコンサート」。39回目となる今年はスウェーデンの名門エーテボリ交響楽団と同楽団の首席指揮者を務める北欧の若き俊英、サントゥ=マティアス・ロウヴァリが登場。ソリストに欧州を拠点に世界中で演奏活動を展開する児玉麻里(ピアノ)と難関の「ハノーファー国際コンクール」で2009年に史上最年少で優勝を果たした三浦文彰(ヴァイオリン)を迎えた2種類のプログラムで、全国の主要ホールを縦断する。
三浦は前半のプログラムA(川崎・兵庫・名古屋・金沢・福岡)に出演し、難曲であるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏。旧ソヴィエト時代からの名声を引き継ぐ「チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(旧モスクワ放送響)」とモスクワにてセッション録音した最新アルバムでも、同曲が高い評価を得ているだけに期待は高まる。
ーー2009年に世界最難関と言われるハノーファー国際コンクールでの史上最年少16歳優勝から、昨年はちょうど10年の節目でしたね。
2019年も海外公演が多い年でした。空の旅が続いて、目が覚めると今、自分がどこにいるのか一瞬わからなくなる程でしたが、それも楽しかった。どこへ行っても結構大丈夫ですね(笑)。
ーー昨年10月にはスウェーデンで、来日前のエーテボリ交響楽団&サントゥ=マティアス・ロウヴァリとも既に共演されたそうですね。これまでに名だたるマエストロが首席指揮者を歴任し、世界各地で高い支持を得ている北欧の名門オーケストラはいかがでしたか?
とてもレベルが高いオーケストラだと感じました。メンバーが演奏を心から楽しんでいるのがよくわかったし、お互いの音をよく聴き合っているのが優れたアンサンブルに現れていると思いました。現地のホールも素晴らしかったです。そしてみんな、オーケストラとして実に23年振りの来日となる今回のツアーを凄く楽しみにしている様子なのが凄く嬉しかった。
ーーマエストロ・ロウヴァリもまだ30代前半という若さで、数多のトップ・オーケストラとの共演を成功させている俊英です。
才能に溢れた指揮者でしたね。左手の動きがとても特徴的でユニークなのですが、彼の考えがオーケストラの隅々まできちんと伝わっているのを感じました。少しも押しつけがましいところがなくて、バランスも抜群。何よりもメンバーみんながマエストロのことが大好きで、彼の音楽を全員でかたちにしていこう、っていう気持ちが溢れていたのが印象的でした。僕自身も、指揮者とオーケストラの両方としっかり繋がることができたと思います。
ーーショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番は、2019年10月にリリースされた最新アルバムにも収録され、非常に高い評価を受けましたね。
自分にとって大切なレパートリーのひとつ。幼い頃に20世紀の巨匠ダヴィド・オイストラフのCDを聴いた時から、いつか自分でも演奏したいとずっと憧れていました。ソ連という当時の国家体制に翻弄されつつ書き上げた作品ですが、初演されたのはスターリンの死後であり、特に第4楽章の長いカデンツァには、抑圧からの解放ともとれるユーモラスな部分もあって奥が深い。チャイコフスキーやメンデルスゾーン、ブラームスなどの有名な協奏曲と比べると難解なイメージですが、僕がウィーンで師事していたパヴェル・ヴェルニコフ先生がオイストラフの弟子だったこともあって、自分の中にDNAのように流れるものを感じるのです。
ーー公演でのシベリウスの交響曲第2番との組み合わせも良いですね。
理想的なプログラムかもしれません。シベリウスは自分もひとりの聴衆として楽しみたいです。改めてこの「東芝グランドコンサート」は毎年、海外の著名なオーケストラと指揮者を迎える、贅沢なシリーズだと思います。今回で39回目となるのも凄い! 今回、自分が出演するのはどれも素晴らしい響きで知られる名門ホールばかりなので弾くのをとても楽しみにしています。
ーー2020年も始まったばかりですが、今年はどんな年にしたいですか?
あまり先のことは考えないタイプなのです。目の前の事に全力を尽くして、ひとつひとつクリアしていくのがいい。2年かけて勉強したエルガーを昨年は弾く機会がなかったのでまたやりたいし、今までとりあげたことのないベルクやストラヴィンスキーにもいつか挑戦したい。あとバルトークのヴィオラ・コンチェルトにも興味があります。…結構、やりたいことがいっぱいですね(笑)、ご期待下さい!
取材・文:東端哲也

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