マキノノゾミ作・演出『東京原子核ク
ラブ』上演決定、ワークショップ・オ
ーディション開催

2021年1月、東京・下北沢の本多劇場にて、マキノノゾミ作・演出『東京原子核クラブ』が上演される。併せて、この舞台の一部キャストを募集、「新たな俳優と出会いたい」とワークショップオーディションも開催される。
『東京原子核クラブ』は1997年初演、マキノノゾミが読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞した代表作だ。その後、PARCO劇場、俳優座劇場などでも上演された。今回は、マキノ自身が初演以来23年ぶりに演出も手がける。
舞台は、昭和初期。風変りな住人が集う東京・本郷の下宿屋「平和館」。理化学研究所に勤務する若き原子物理学者・友田晋一郎は論文が先をこされ自信を失っていく。そんな中、平和館に訪れた海軍中尉・狩野は理研の研究で新型爆弾がつくれるのではないかと思いつき……。実在の人物をモデルに、時代の荒波の中、闊達に生きる若者たちを描いた群像劇。
作・演出のマキノノゾミから届いたコメントを紹介する。
【上演にあたって】
この作品の初演は1997年の1月で、書いたのは前年の秋ですから、おそよ23年前のことになります。劇作を始めて今年でちょうど30年ですから、かなり初期の作品ということになりますが、いまだに私の代表作といえば、この『東京原子核クラブ』だとよく人からいわれます。
私も現役の劇作家である以上、代表作はつねに最新作であるべきだと考えており、そういわれることに常々不本意な思いも抱いております。
ただ、当時は熱に浮かされたように無我夢中で書いたこの作品を、今の年齢であらためて読み直してみると、やや得心も行くようになりました。
たとえば、この作品には、戦時中の日本における原子爆弾製造計画についてふれた箇所があります。今読み返してみると、自然科学の発達が、ときに後戻りできない人類にとっての閾値を易々と超えてしまう恐怖と、状況次第では私たちはいとも容易に被害者から加害者の地位に転落し得る可能性があること、その重要な事実を忘れずにいることを表明しておくことなどが、(当時はさしたる自覚もないままに)執筆時の主題であったように思われます。
さらに登場人物の多くはしっかりとした良心を持った善人ですが、科学者であれ、芸術家であれ、軍人であれ、誰一人として国家の行いつつある戦争に対してこれを抑止する力を持たず、無力なままで終わります。
これらの主題やモチーフは、執筆当時よりも、間違いなく現代の方がより喫緊の、切実性を伴ったものとなっているように思います。歴史となった過去の物語を書いたつもりが、いつのまにか遠くない将来のことを描いているような気がしきりにして、空恐ろしささえ感じます。
この作品に込めた23年前のさまざまな思いを、今回あらためて咀嚼、熟考しながら、再びこの作品と向かい合いたいと考えています。
マキノノゾミ
【マキノノゾミ 略歴】静岡県出身。劇作家・脚本家・演出家。同志社大学文学部卒業。劇団M.O.P.主宰(1984年旗揚げ~2010年解散)。主な受賞として、01年に『赤シャツ』(作)『黒いハンカチーフ』(作・演出)で第36回紀伊國屋演劇賞個人賞、01年に『怒濤』(演出)で第8回読売演劇大賞優秀演出家賞・作品賞、08年に『殿様と私』(作)で第15回読売演劇大賞作品賞、11年に『ローマの休日』(脚本・演出)で第36回菊田一夫演劇賞受賞などがある。最近の主な作品に『再びこの地を踏まず-異説・野口英世物語-』(15/脚本)、『真田十勇士』(16/脚本)、『音楽劇「大悪名 The Badboys Last Stand!」』(17/作・演出)、青年座『わが兄の弟―贋作アントン・チェーホフ傳―』(17/作)、『魔界転生』(18/脚本)、 グループる・ばる第24回公演「蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~」(18/演出)など。朝の連続テレビ小説『まんてん』(NHK)、映画『真田十勇士』など映像作品も多数執筆。
2020年は6月に文学座『昭和愚美人草』(脚本)、7月~『巌流島』(脚本)が上演される。

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