OLDCODEX Painter YORKE.
『WHY I PAINT
~なぜボクがえをかくのか~』
- 第86回♪Wiz Khalifa /
See You Again
feat. Charlie Puth -
「レンズなんかに映されてたまるか」
って今も思ってカメラの前に静かに立ってる。
監督のスタートって掛け声がかかると
背中のスイッチがONになる感覚。
その戦いみたいな場所が心地良くて
オレは今もそんなことを言いながら
レンズを睨んだり、舌を出して挑発したりして
時々ウィンクしたりしてる。
涙の代わりにペンキが流れていくのに
重なって美しい絵が完成していくみたい。

彼と何度か一緒に仕事をして、
スタジオで生意気に噛み付いた若造に
何時間も付き合ってくれて
クリエイティブなんだか、ヤケになってるのかって
時間を共有した。
いつの間にか、僕は”そうちゃん”と呼んで
彼は僕を”よーちゃん”と呼ぶ仲になった。
大先輩で、大きな仕事をたくさんやってきた人なのに
オレの目線に合わせて話をしてくれてたんだね。
子ども扱いしないで一人のアーティストとして
接してくれて本当に嬉しかったよ。

失礼で生意気な僕に
「またやろうよ」と言ってくれたと思う。
あ、バイバイの握手をした温度は覚えてるし、
ハグしたら女の子みたいに照れてたね。
相変わらずヘビーな撮影を終えた僕は
帰りの車でスピードを上げた。
眠たかったんじゃない。
またひとつ大きな仕事をやり遂げて、
それを見届けてほしい大好きな友達が
もうこの世界にいないってことを
自分自身に言い聞かせてたんだ。
朝陽の中でこの曲が届く感じがした。
悲しい知らせはいつも突然すぎるよ。
その訃報を聞いた日、
僕はカメラの前にいた。
もう一度君に会えたら、
今日描いた大きな絵を見て欲しいよ。
君はきっと悔しがるだろうね。
「どうしてオレに撮らせなかったんだよ!」って。
そうちゃん、
また会えるって思ってたから
連絡しなかったのに。
生意気でごめんね。
共有した時間、大切にするよ。
ありがとう。悲しいよ。
YORKE. / February, 2020