甲斐翔真が堂々ミュージカルデビュー
『デスノート THE MUSICAL』ゲネプロ
レポート

名前を書くだけで人を殺めることができるデスノートを手にした青年が、人生の歯車を狂わせていく……。2020年1月20日(月)に、東京建物 Brillia HALLにて初日を迎えた『デスノート THE MUSICAL』。同日、翌日21日(火)に自身の初日を控えた甲斐翔真(Wキャスト/八神月役)上演回のゲネプロ(通し稽古)が公開された。3演目にして全役をオール新キャストで挑んだ本作の新たな魅力をレポートする。(Wキャストの村井良太回ゲネプロレポートは別記事参照)
若さゆえの危うさで魅せた甲斐の月
甲斐演じる月から感じたのは、優等生、カリスマ性、挫折を知らないであろうプライドの高さ。デスノートを偶然拾い「新世界の神」になったと過信する様子も、Lとの対決に夢中になることも、全て若さゆえの過ちといった印象だ。フレッシュな甲斐の歌声と芝居の真っ直ぐさが、若く危うい月にピタリとハマった。
夜神月役・甲斐翔真/後)死神リューク役・横田栄司 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社
初めてデスノートに名前を書き、人を殺めたシーンの後に歌う〈デスノート〉では、心情の変化を見事に表出。自分が人殺しになってしまったことへの動揺をファルセットで紡ぎ、デスノートで世界を変える意志を固め、力強く歌い上げる様子は、ミュージカル初挑戦とは思えなかった。
物語が進むにつれて、月は救世主キラとして犯罪者を裁き、人殺しを興じていく。側から見たら狂気に満ちているが、甲斐演じる月は真っ直ぐで、まるでゲームを楽しんでいるかのよう。自分の思い通りに他人の人生を決める快感に酔いしれ、中毒になっていくさまは、村井良太演じる月とは対照的だ。
右)夜神月役・甲斐翔真 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社
静かに燃えるLを髙橋颯が熱演
初演、再演で小池徹平が立ち上げたL役を再構築したのは髙橋颯。甲斐演じる月同様に若さ溢れるが、その熱は内に秘め、静かに燃えていた。1幕で歌う「ゲームの始まり」では冷静さを、2幕の「揺るがぬ真実」では犯罪捜査への情熱を、巧みに歌声に乗せた。
エル役 高橋颯 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社
昨年夏にYouTubeで月とLのデュエット曲「ヤツの中へ」が公開されていたが、改めて今回のゲネプロで彼らの大きな成長を実感。歌唱レベルの向上はもちろんだが、時間を掛けて役と向き合い、深めてきた様子がありありと伝わってきた。
個性豊かな新キャストらが、物語に深みを持たせる
弥海砂役を演じたのは、吉柳咲良。笑顔で歌い踊るアイドルの仮面を被っているが、実際は心に大きな闇抱える少女を熱演した。ショーアップされた「恋する覚悟」では、元気いっぱいのパフォーマンスで客席を盛り上げる。
中央)弥海砂役 吉柳咲良 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社
一方で不遇の事件で両親を殺されたがゆえの寂しさや、愛情に飢えている様子を、自身が契約する死神レム(パク・ヘナ)とのやりとりににじませ、「残酷な夢」では吉柳とパクのパワフルなハーモニーを響かせた。パク演じるレムは、ソウルフルな歌声で観る者の涙を誘う。海砂を思って歌う「愚かな愛」は圧倒的な歌唱力で魅了した。
死神レム役 パク・ヘナ 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社

左)死神レム役 パク・ヘナ/右)弥海砂役・吉柳咲良 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社

久しぶりのミュージカル出演となった横田栄司は、死神リュークをコミカルに演じ場をさらう。笑いを交えつつも、毒のある演技で凄みと怖さを感じさせた。
死神リューク役 横田栄司 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社
夜神総一郎役 今井清隆 提供:ホリプロ   (c)大場つぐみ・小畑健/集英社
より刺激的に深化した新生デスノート
今回主要キャストに若手が抜擢されたことで、初演再演時よりも勢いが増し、刺激に満ちたように感じた。若者の爆発するような感情が交錯し、ヒリヒリとした緊張感が漂う。光と影、生と死、順法と違法、親と子、信用と疑心など、究極の二面性を物語に孕ませ、より今の日本を生々しく切り取った劇世界が立ち上がった。
東京公演は2月9日(日)まで、その後静岡、大阪、福岡を巡る。日本発の大型ミュージカルのさらなる深化をお見逃しなく。
『デスノート THE MUSICAL』2020 ダイジェスト映像
取材・文=永瀬夏海 撮影=田中亜紀

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着