【前Qの「いいアニメを見にいこう」
】第25回 「アニメの仕事は面白すぎ
る」から「わかる」まで「手を出すな
!」……って、なんのこっちゃい!!

(c) 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会 なんですかね? コアなアニメ好きから、イケすかないノリのなんちゃってサブカル野郎まで、みんな揃って「映像研には手を出すな!」のアニメを褒めちぎる流れなんですかね、昨今のインターネッツは? 乗るべきですか、そのビッグウェーブに?
 はい! よろこんで!
 ……ぜひ、モニタの前で盛大にずっこけていただきたい(強要)。いやね、そりゃー、そうでしょうよ。たまんねえですわ。こんなにプリミティブに、絵が動くことの、創作の楽しさを見せつけられたらね。血が騒がなかったらウソですわ。動きが逐一気持ちよく、現実と空想の混在が鮮やかで、これが「アニメ」の楽しさよ。ワタクシ、こういう素晴らしいものを前にして、斜に構えるような人間ではございませんの。今、湯浅政明監督の作品をチェックしないのは、損をしているぞ! NHKで、全国放送でご覧いただけますので、みなさまにおかれましてはしっかりとチェックしていただきたい所存です!!
 といった話を枕にして、今月はアニメのお仕事についての2冊の本をご紹介したい。
 昨年末、突然ものすごい本が出た。「アニメの仕事は面白すぎる 絵コンテの鬼・奥田誠治と日本アニメ界のリアル」(出版ワークス)だ。「鉄腕アトム」「鉄人28号」「宇宙エース」といった、国産の30分テレビアニメシリーズの創成期にあたるタイトルに始まり、現在(本書掲載のリストによれば、最新の仕事は2019年放映の「ひとりぼっちの〇〇生活」)に至るまで、半世紀以上もテレビアニメの絵コンテを切り続けてきた奥田氏。その濃厚なアニメ人生を、「ここまで書いてしまっていいのか!?」というくらい、あけすけに語り尽くしている。
 その歩みは、まさに波乱万丈のひとこと。アニメブーム、OVAブーム、ゲームムービー需要の高まりといった、メディアや制作環境の変化といった時代の波に翻弄されることもある。はたまた、アニメ業界の多士済々な才能たちとの交わりの中で、楽しい思い出もあれば、苦い記憶もある。未読の人が興味を持ちそうな、本書に登場する固有名詞を並べようとしたが……キリがない! 宮崎駿、高畑勲、富野由悠季、出崎統(敬称略)などなど、いわゆる「巨匠」は当然のこと(そう、奥田氏にとっては「当然」なのだ!)、歴史の徒花として消えていったような、今となってはなかなか振り返られることのない人々の記憶も、細やかに拾い上げられている。日本のアニメの歴史、とりわけ、スタッフや各スタジオのファミリーツリー的な知識に興味があればあるほど、おもしろみが増す本。こうして何やらエラそうな口ぶりで書いている僕ですら、本書の魅力を十分に捉えられているとは、正直なところいい難い。本書を手にとった、さまざまな方々の感想をお聞きしたいと、強く願う次第だ(奥田氏の記述に対する、訂正・反論のようなものも含めて)。
 もう1冊は「アニメーターの仕事がわかる本」(玄光社)。フリーライターの餅井アンナ氏を聞き役に、「ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない」のキャラクターデザインなどで知られる、実力派アニメーターの西位輝実氏が、〈いま・ここ〉のアニメ業界のリアルを、赤裸々に語り尽くした一冊だ。
 アニメーターは稼げない、それなのに仕事が激務だ、いやいや稼げる人もいる、そもそもアニメ業界が人材不足ってどういうことで、いわゆる「作画崩壊」が起きる原因って一体どこにあるんですか、つーか、僕の大好きな原作がせっかくアニメ化されたってのにこんな低クオリティってあぁんまりだ責任者出てこいやウボォォォォ~~~~~! ……みたいな疑問に対する制作現場からの答えが、平易な文章で、全部書いてある。ホントに。
 アニメーター志望の人はマストリードであるし、アニメ業界の労働問題について考えてみたい人、クリエイティブとビジネスの問題について現場目線から一考してみたい人、フリーランスの生き方について他業界の知見を得てみたい人……などなど、いろいろな層の人にオススメしたい。つーか、本書みたいなイイ本が出たんだから、聞きかじったテキトーな知識とかで、アニメ業界に対する雑な提言をするのヤメよ? 建設的な議論を積み重ねていこ? ちょっとした話題があるたびにいいかげんな問題提起が行われては、しばらく経つと忘れ去られていくような状況は、そろそろ終わりにしたくないですか。読もう。
 では、そんなこんなで、また次回~。

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