国境も世代も関係ない。共感を語りか
ける韓国バンド・SURLが来た道のりと

11月26日(火)初の来日公演を果たした韓国のインディーズバンド・SURL(ソル)。2019年7月にソウルで開催されたNulbarichの韓国公演のオープニングアクトをつとめ、HYUKOHやSE SO NEONに負けず劣らずのスピード感で今回の来日公演を実現するなど、2018年のデビュー直後から日本のアーティストとの関わりが目立つ。
本国でも多い時は月に6,7本ライブをしており、すでにドイツや台湾のフェスにも出演経験がある。今回の来日前日に韓国で行われた初の単独公演は、なんと販売開始からわずか1分で全席完売になるという人気っぷり。そんな「噂」のSURLが単独公演の興奮覚めやらぬまま、勢いに乗って日本にやって来た。

みんなが共感できる話を音楽で届けたい

ー初来日おめでとうございます! なんと昨日ソウルで初の単独公演を終えたばかりだと伺っていますが、どうでしたか? 実は以前韓国に行った際にサンサンマダン(会場名)の前の電光掲示板で大きく宣伝されているのを見たのですが、結局行けなかったのが心残りで。

溢れ出るブリティッシュロック愛

ー昔からよく聴いている好きなアーティストはいますか?

憂鬱さから抜け出せる音楽を

ーSURLの歌詞には、今の若い人たちが抱える悩みや葛藤を題材とした曲が多い印象を受けます。曲を作る上で意識していることはありますか?

ミツメは憧れの存在

ー海外公演は、ドイツでのReeperbahn Festival出演、直近の台湾でのLUC Fesに続き3度目になるかと思いますが、初の来日公演を目前にして今の心境はいかがですか?
Photo by fukumaru
「このときめきを一生忘れたくない。」
会場にいる誰もがそう感じたに違いない。そう思わざるを得ないくらい、SURLに全てを持っていかれたように感じた。ライブ当日までインターネット上のみで音源を聞いて今回SURLを初めて見た人は、SURLのもつ音、そして人間としての「立体感」に度胆を抜かれたのではないだろうか。インタビューの時の愛嬌のある立ち振る舞いからは想像もつかないくらい、アグレッシブかつ歌唱力・演奏技術のレベルも高く、メンバー各々が持つキャラクターに惚れた。
先行は兼ねてからSURLが敬愛していたと話すミツメからスタート。今年結成10周年を迎え、その自然体な演奏によりいっそうの安定感を覚えた。中盤「あこがれ」のイントロが流れ出すと、キレの良いギターのカッティングで会場が沸く。こんなにも音の繰り返しが心地よく癖になるバンドは他にいないだろう。
ミツメが終わりいよいよSURLがステージに登場した。
幕開けと同時に披露したのは、インタビューでベースのハンビンがオススメだと語った「Cilla」。長尺のイントロの後に「Cilla」と軽く紹介するとそこから一気にボーカル・ホスンの繊細で儚くもソウルフルな歌声が観客の心を鷲掴みにした。
Photo by fukumaru
演奏したのはアンコール含め全15曲。今回のイベント「mights」の主催者が一聴して魅了されたと語る「Like Feathers」、純粋で無力な若者の心情を歌った「Dry Flower」が披露されたのはもちろん、ウェブドラマ『OST』で話題となった名曲「Dancing on the Rooftop」では、見どころの一つでもあるホスンとドヨンのギターの掛け合いが素晴らしかった。
ライブ終盤に披露された叙情的な歌詞が印象的な「Snow」では息づかい、微妙な声の震えすら感じられる静けさの中、ホスンの歌声で始まり、楽器隊が徐々に絡んで増幅していく展開には感動を覚えた。この息の合った音の重なりは、長い時間をともにしてきたメンバー同士だからこそ作り出せるものだろう。
Photo by fukumaru
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MCは宣言通り英語と紙に書いた日本語で披露。言葉を宙に投げるのではなく、一言一言、観客の反応を伺いながら言葉を紡いでいくホスンの姿がとても印象的だった。形式はなんでもいい。あくまで大事なのは、気持ちを伝えることだ。日本語が理解できないにも関わらず、まっすぐ私の目を見て話を理解しようとするインタビュー時のメンバーの姿が脳裏に浮かぶ。真面目かと思いきや、ドラムのミンヒョクの「愛してる!」の一言で会場は笑顔に包まれた。言語、文化、国の壁を一切感じさせない、デジタルネイティブでニュートラルな現代の若者の姿を見た気がした。
Photo by fukumaru
ライブ終演後、会場にいる誰もが「すごかった」と声を漏らすほど、充足感に満ちた初の来日公演。圧倒的実力を見せつけたバンド・SURLの今後に期待が高まる一夜となった。
取材・文:Akari Hiroshige
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