【動画あり】新生・PARCO劇場お披露
目&オープニングシリーズ記者会見開
催~三谷幸喜の“仕込み”に大笑い!
司会の藤井隆は“井上いじり”に専念
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2020年1月15日(水)東京・渋谷PARCO劇場にて『PARCO劇場お披露目&オープニング・シリーズ記者会見』が催された。この日会場に姿を現したのは渡辺謙、宮沢氷魚、森新太郎、石田明、三谷幸喜、吉田一輔、大泉洋、山本耕史、竜星涼、長田育恵、宮藤官九郎、河原雅彦、生瀬勝久、池田成志、古田新太、前川知大、杉原邦生、市川猿之助、天海祐希、G2(作品上演順)といういずれ劣らぬ演劇界のトップランナーであり“クセ者”たちだ。この会見の模様をレポートする。
ステージの上に降りている緞帳には旧PARCO劇場、さらにその前の西武劇場時代に上演されていた名作のポスターがズラリと飾られていた。
華やかなファンファーレと共に緞帳がするすると上がるとステージの中央には司会の藤井隆が深々と頭を下げていた。「本日、私の手元にはカンペと呼ばれるものがあります。これをもとに進行させていただきますが、ふと見ますと『頑張ってください。令和の高橋圭三を目指してください 三谷幸喜』とメッセージをいただきました。精いっぱい務めさせていただきます」と挨拶し、笑いが混じった大きな拍手を浴びていた。
藤井隆
株式会社パルコ 執行役 エンタテインメント事業部 井上肇
前説を行った後、藤井は「株式会社パルコの執行役 エンタテインメント事業部の井上肇よりご挨拶をさせていただきます。井上、お願いします」と今日はあくまでもパルコ側の人間であると言わんばかりに、あえての呼び捨てで呼び込む。井上は今日この日を迎える事が出来た事の喜びと、新生PARCO劇場の特徴の説明、休館中様々な外部劇場を借りて作品を上演してきたことへの感謝の意を表した。ひとしきり挨拶を終えると、藤井が井上に「楽屋も充実していると実感しております。以前は二つの楽屋しかなく、照明の横に無理やり楽屋を作っていましたね」さらに「喫茶はどうなりましたか。小さな腹の足しにならないホットドッグは?」とマニアックな感想や質問を浴びせ、最後は「井上でした」とどこまでも呼び捨てスタイルを貫いていた。
ここからはオープニングを彩る作品を上演順にご紹介します、と藤井がキャストやクリエイターを呼び込む。
渡辺謙
トップバッターは『ピサロ』に出演する渡辺謙と宮沢氷魚。渡辺は挨拶もそこそこに「“井上”はないんじゃない? 舞台裏で皆でずっこけてましたよ」と藤井にツッコミ。その上で渡辺は「今日の出席者のなかで西武劇場時代から舞台に出ているのは僕だけじゃないかな?」と笑顔を見せ「この劇場は自分の演劇人生のエポックになる場所。このステージに乗ると、ああ、PARCO劇場が帰ってきたんだなと喜びと緊張がないまぜになった」と心境を語った。「演劇作品としてこの『ピサロ』が氷魚や他のキャスト、スタッフと共に椅子一つ一つにこれから命を吹き込みます」と気合いを入れた。
宮沢氷魚
宮沢はPARCO劇場とは舞台『豊穣の海』が初めての出演と口にし、「その時は東出昌大さんと共演し、杏さんと共演し。そして2020年は“本丸”の渡辺謙さんと共演します」と渡辺一族との縁を口にすると隣で渡辺が格好をくずす。「PARCO劇場のオープニング作品として楽しみつつ、作品に向き合いたいです」と宮沢は抱負を述べた。
森新太郎
石田明(NON STYLE)
次に「佐渡島他吉の生涯」の演出を務める森新太郎、そして出演者を代表してNON STYLEの石田明が登場。森は主演の佐々木蔵之介が演じる役を「熱くておバカで真っ直ぐで武骨な男を演じます」と紹介。「この作品は全編が関西弁という事で関西弁ネイティブのキャスティングにこだわりました」と隣にいる石田を紹介。そんな石田は、トップバッターで登壇した『ピサロ』の渡辺・宮沢と自分たちを対比しつつ「(会見に)登壇する出演者としてのスケールダウンは否めないと思う」と自虐ジョークを発しつつ、「新生PARCO劇場に泥を塗らないように頑張ります」と決意を述べた。
三谷幸喜
「次は東京オリンピック開幕直前の6月下旬からパラリンピック開幕直前の8月上旬まで三谷幸喜さんの三作品が連続上演されます」と藤井が紹介し、三谷を招き入れる。三谷は登壇するなり「新しくできたPARCO劇場の施設を紹介します」と話し出す。「皆さんが座っていらっしゃる椅子ですが、すべての席にニクロム線が貼られています。本番中携帯電話を鳴らした瞬間、8万ボルトが流れます。それから会場後方に3つ、レーザー銃が用意されていて、招待されていたにもかかわらず、本番中に寝てしまったマスコミ関係者を狙い撃ちします。また緞帳には、必要のないカーテンコールが3回以上続いたら、自動的に降りてくるようになっています」と真顔で冗談を飛ばすと客席から笑い声が何度も起きていた。
吉田一輔と「三谷くん」
ひとしきり笑わせた後、改めて三作品の紹介を。まずは新作『大地』「関係者の皆さんに嬉しいお知らせがあります。すでに本はできています……僕の頭のなかに。あとは書くだけです(笑)」。続いて『ショーガール』。「今ニューヨークにいる川平慈英さんから手紙を預かっています(と懐から手紙を出し目を通す)。英語です。(読み上げず、手紙を元に戻してしまう)」このギャグに藤井が派手にひっくり返り、さらに笑いを増幅させていた。

三作目は『其礼成心中』。文楽ものということで人形遣いの吉田一輔をステージに呼び込むと、吉田が手にしていたのは「三谷くん」と呼ばれる人形。すると「三谷くん」は進行と無関係に「あそこにいるのは渡辺謙じゃないか? かっこいいなあ。アレだろ?『王様とたわし』あと『ラストモヒカン』」と勝手気ままにしゃべり出す(声は三谷本人が事前に収録)ので、生の三谷が「それを言うなら『王様と私』『ラストサムライ』だから!」と突っ込むという一人二役のコントを繰り広げていた。最後に三谷は「オリンピックにまるかぶりですが、スポーツに興味がない方はぜひご覧ください」としれっと挨拶していた。
大泉洋
また新作舞台『大地』からは大泉洋と山本耕史、竜星涼が出席。大泉は「私はPARCO劇場に出るのが初めてなのですが、20歳の頃に演劇を北海道でやっていた時からとにかく憧れて観ていたPARCO劇場についに出るのかなと感慨深い気持ちです」とかみしめるように口にする、が。「ただ、昔と何が違うかまったく分からないので、そういった意味では感慨がないです」とボケる。「ものすごく豪華なラインナップの発表会で、この後も豪華な出演者がたくさんいる訳です。謙さんから始まっているわけですから、主演なさる俳優さんばかりが入る楽屋があるんだと思ったら、それほど楽屋がないんですよね」と今度はツッコミながら語る。「作品への抱負と言われても脚本家(三谷)の頭のなかにあるだけなので、何にも分からないんです。先ほど脚本家に会ったら『おおっ!何故ここにいるんだ?』みたいな顔をするので、この作品に出るんですよと返したら『まだ(出演を)決めていないんだけど』と言われ……。今日が私の最終審査だそうです」と苦笑い。
山本耕史
続いて山本は「1993年に『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』という、僕が必ず観に行かない系のタイトルの作品に出ました(笑)。その後、藤井隆さんとも共演しましたが、今回は20年ぶりにエネルギーを与える側になりたいと思っています」
竜星涼
そして竜星は「僕が生まれる前からあるPARCO劇場に出る事でドキドキハラハラ。僕もオリンピックに負けないよう、熱く頑張りたいし、僕ら若い世代が演劇界を背負っていけるようになりたいです」と力を込めた。
なお『大地』には藤井も出演するということで大泉らが手招きしたが、「今日は司会に専念しますので結構です」と遠慮し、大泉の親切を見事に仇で返した。
長田育恵
ピカソの絵画に着想を得た『ゲルニカ』で栗山民也とタッグを組む脚本担当の長田は、「2020年の今、私が書かせていただくのは“暴力の連鎖のその先にあるもの”。暴力を振るうのもそれに打ち勝つのも人間である、そんな想いを込めて執筆にいそしみます」と笑顔を見せた。
宮藤官九郎
河原雅彦
ねずみの三銃士『獣道一直線!!!』の脚本を務める宮藤官九郎と、演出の河原雅彦、そして出演する生瀬勝久、池田成志、古田新太が登場。宮藤は「このシリーズは“獣”が付いていれば何でもいいのかなと思っていて。内容はこの後打ち合わせをして決めます」と語り、河原は「僕がPARCO劇場に関わらせていただいたのはこの企画(ねずみの三銃士)がきっかけ。また戻ってきたなと思っています」、生瀬は「今インターネットで『獣道一直線』を調べるとAVが出てきます。それを舞台化したものとイメージしていただければ」、池田は「僕がこの劇場で初めて観たのは西武劇場時代の渡辺謙さんが出演していた『下谷万年町物語』でした。渋谷のど真ん中ででたらめで下品な素敵な作品でした。私たちの『獣道一直線!!!』がPARCO劇場の猥雑な部分を少しでも拾っていけたら」とそれぞれに想いを述べ、最後に古田が「我々は下ネタが大好きなのでそういう芝居になると思います」とニヤリ笑って挨拶を締めていた。
生瀬勝久
池田成志
古田新太
前川知大
演出家の前川が手掛けるまだタイトル未定の作品について、前川は「2015年に『カタルシス』という作品をもう一度描いてみたいと思っていて、これをベースに新しい俳優たちと作り直してみようかな、と今準備しているところです。すごくおもしろいキャスティングとなるのでそちらも楽しみにしていてください」と期待を持たせた。
杉原邦生
市川猿之助
『薮原検校』の演出の杉原と出演者の猿之助が登壇。杉原は本作を「すごくエネルギーに溢れた作品、これを歌舞伎でご一緒した猿之助さんとやりたいと思ってお声がけしました。歌舞伎で4年間、スーパー歌舞伎『オグリ』でもご一緒してきたので、息はピッタリと思います」と明るく話すと、一方の猿之助は浮かない表情で「(本作を上演する)2月ですが、演劇界では2月はいちばん客が入らないと言われていまして、演出家もそんなに名前が知られていない、いちばん貧乏くじをひいたのでは。客が入らない時期にせいぜい頑張って客席の半分が招待者なしで埋まるくらい頑張りたい。できれば三谷さんの作品に出たかった」と“相方”杉原さんに逆に圧をかけるように話していた。
天海祐希
『レディ・マクベス』マクベス夫人役の天海は、「PARCO劇場は21年ぶりに出演させていただくことになりました。宝塚を辞めて初めての舞台がここでした。今新生PARCO劇場に出させていただけるのはとてもとても幸せです。大きなターニングポイントになれば」と爽やかな笑顔を振りまいていた。
最後に『月とシネマ』の作・演出のG2が登場する。G2はiPadで本日来場できなかった主演の中井貴一からのコメント動画を会場で流すという斬新な手法で会場を沸かせる。中井は「初めてストレートプレイを観に行ったのがPARCO劇場でした。もし自分が舞台に乗る事があったらPARCO劇場に出たいというのが夢となりました。ここからPARCO劇場の新しい歴史を作っていくんだな。そこに自分が出て歴史を作っていけたら」と胸中を伝えた。そしてG2は「分かりやすく笑えて、でも何か深いところを刺激する、そんな作品を作りたい」とコメントした。
質疑応答は「これは井上さんにお伺いする方がいいのでしょうか?」と前置きされつつ、「今回発表されたオープニングラインナップが新生PARCO劇場の方向性を打ち出していく事になると思うのですが、具体的にどのような意図があるのか?」という質問がなされると、藤井は「かしこまりました……井上っ!」と強い語調で井上を呼び出し、客席で会見を観ていた井上に「走れ!(ステージに)登れ!」とさらに語気を荒げてステージ上に呼び出した。これには石田が「あなたはパルコ側じゃないですよ(笑)。すみません、ウチの先輩が」と笑いながら井上をフォローしていた。
また劇場の機構について猿之助から「宙乗りは出来るのかな?」と質問がでたときも「井上ー!」と藤井が呼び出し「難しいです」と井上が答えると「(利用者の)期待に応えなさいよ!」と藤井が声を荒げ、「……検討します」と無理矢理井上に答えてしまう一幕もあった。
振り返ると“三谷無双”そして“藤井隆の井上いじり”の連打で最後まで笑いに包まれたPARCO劇場らしい、いいユルさのある自由なひとときだった。
【動画】PARCO劇場お披露目&オープニングシリーズ記者会見開催 2020.1.15

取材・文・写真撮影=こむらさき 動画撮影=登坂義之(動画編集=登坂義之・安藤光夫)

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