SIRUP 大阪で魅せた、仲間と共に贈る
音の祭典『channel 01』

SIRUP『channel 01』 2019.12.12(Thu)@ZEPP Namba
「明日の大阪、楽しみ。祭り。channel合わせておいて。」 —— 『channel 01』大阪公演の前夜、SIRUPは自身の胸の高鳴りを短いツイートに綴った。このライブは東京と大阪の2箇所で行われ、SIRUPが始動から約2年の間に共演を果たした多くのアーティストを一同に迎える貴重な公演となった。
12月12日(木)の夜は冷え込んだが、ZEPP Nambaに集まった2,500︎人は開演前からDJ YonYonによる選曲で心と体を温めていた。ピンク色の照明のもと、YonYonはSIRUPをはじめこれからステージに登場する面々の楽曲をヒットナンバーに織り交ぜてプレイし、フロアの期待感を高める。YonYonがDJブースを後にすると、1階のスタンディングエリアから2階席までを埋め尽くした観客たちは、SIRUPのロゴを模した青いネオンライトが光るステージに熱い視線を注いだ。
とっておきの夜を贅沢な演奏で飾る7人のバンドメンバーたちが位置につく。顔ぶれはShin Sakiura(MNP.Gt)、HISA(Gt)、showmoreから井上惇志(Key)、そしてSIRUPも在籍するSoulflexから、Akiee(Key)、KenT(Sax.Flute)、Funky-D(Ba)、RaB(Dr)だ。拍手の中暗転すると、「channel」と「01」をかたどった2つの赤いネオンライトが新たに点灯し、次の瞬間、我々はミラーボールが放つ真っ白な光に視界を、そしてバンドの7人による重厚なイントロに聴覚を支配され、圧倒される間もなくSIRUPの第一声を耳にした。「channel 01!祭りやで!」
SIRUP 撮影 =Leo Youlagi
ステージの左手から軽い足取りで現れたSIRUPは、2017年に世に送り出した最初のシングル「Synapse」を歌い始める。一気に興奮が高まった観客たちは、彼がステージ上を移動するだけで割れんばかりの声を上げ、その様子に彼自身も笑みをこぼした。SIRUPとバンドメンバーの全員が、この日会場で販売されたアディダスとのコラボレーションジャケットを着こなしている。音のスケールや、楽曲の展開に合わせて次々に色を変える照明から、ZEPPで格段にパワーを増したSIRUPを1曲目にして十二分に体感できた。「Synapse」から、バスドラムの音4つでそのまま「Pool」へ。ビビッドなネオンカラーの光を浴びながら、サビでSIRUPと観客たちは「Oh」「ahh」「Oh」「ahh」と声を交わした。2番に差し掛かったところで音源にはないファンクテイストのライブアレンジを挟み、アウトロではのびのびとしたフェイクを披露する。
「みんな祈っていこうぜ!」 SIRUPの一言とともにKenTによる目の覚めるようなサックスの音色が響き渡り、 「PRAYER」へと繋がった。聴く者を力強く鼓舞するサビでは、ステージとフロアが一体となって手を振り、まるでZEPP Namba自体が左右に大きく揺れているような錯覚を起こすほどだ。熱を帯びた会場を一度クールダウンさせるように青いライティングに切り替わると、愛し合うが故に傷つけ合うことをやめられない二人を描いたアンニュイなバラード「バンドエイド」へ。
「Crazy」は、HISAが奏でるギターリフから始まった。頭上で激しく光るミラーボールに相反して、ステージ中央から動かず落ち着いたファルセットを聴かせるSIRUPはなんともセクシーだ。先日配信がスタートしたばかりの「Light」ではステージの左右に設置されたミラーボールが回転し、文字通り様々な「光」の演出が目まぐるしく交錯する。ブリッジではShin SakiuraのギターソロやAkieeによるピアノの美しい旋律を堪能でき、サビでは降り注ぐ光に向かって観客たちがいっせいに手を伸ばした。
SIRUP 撮影 =Leo Youlagi
「今日は祭りであり忘年会です! ワンマンライブでありワンマンライブではないこの『channel 01』は、「チャンネルが合っている人たちが集まるイベント」という意味で名付けて、今日は色んな仲間が歌いに来てくれます。これから続けていきたいです」と、SIRUPがこの公演の趣旨を明かし、観客たちは拍手で応えた。
これまでもSIRUPのライブで多くの人々を虜にしてきた「LOOP」が、やわらかなサックスの音とともに始まり、このイントロを待ちわびていた観客たちは声を上げた。7人の背後から会場をじんわりと照らす暖色の光の中に、すべての声と音が溶けていく。途中、、<赤青黄色のThe third wheel>という歌詞に合わせ、信号を思わせる3色のライトが点灯するなど、「LOOP」のアンニュイな詞を細部まで表現した演出で届けられた。
「ゆっくり踊っていきますか? スロウなダンスを」 SIRUPの言葉をキッカケに「Slow Dance feat. BIM」のイントロが流れ、この日初めてのゲストアーティストBIMがステージに躍り出る。「大阪、調子どうだ?」BIMが問いかけ、<Slow dance 焦らず行こう Slow dance>SIRUPとBIMはステージの左右に設置された少し高い足場に立ち、穏やかな笑顔を浮かべながら観客たちにスロウダンスを促す。<まだ君のことあんまり知らないしさ 昔はどんなだったとか聞きたいよな>BIMのラップにSIRUPが歌声を重ねる一節が優しく響いた。ピンクのスポットライトが揺れる中、まどろむようなサウンドに抱かれる心地いい時間が流れた。
「SIRUPくん、すごくいい匂いがした。後でどんな香水か聞いておきます。」 歌い終えると、開口一番にSIRUPが放ついい香りに触れたBIMは、「楽屋で551の豚まんを食べていたら1曲前の「LOOP」が始まって、「やべぇ!」と焦って上着を着たまま出てきちゃいました。SIRUPくんZEPP公演おめでとう!」 と、大阪ならではの微笑ましいエピソードを残しステージを去った。その背中を見送ったSIRUPは、「もっとカンバセーション(会話)したいんやけど、BIMはいつも一方的に喋ってくる気がする……(笑)」と、話し笑いを誘った。
暖色の演出から一転し、青を基調に「Last Dance」と「Rain」を続ける。切ないダンスナンバー「Rain」では手拍子が起き、最後のサビでは感情が豪雨となって吹き荒れるかのように、エモーショナルに歌い上げるSIRUPに呼応してあらゆる光が激しく点滅した。
SIRUP 撮影 =Leo Youlagi
「さっき(開演前)、YonYonのDJ良かったよね?」SIRUPの呼びかけで再び登場したYonYonは、彼女が主宰するプロジェクトの一環で実現したコラボレーション楽曲「Mirror(選択)」のイントロに乗せ、「初めまして、YonYonです。一緒に踊りましょう!」とキュートに手を振った。YonYonが韓国語でラップをしながらステージを右から左へ歩くと、フロア前列の観客たちが黄色い歓声を上げる。タイトルが「Mirror」というだけに、数カ所に設置されたミラーボールがこの日一番の輝きを放ち、2人だからこそ表現し得た日本語、韓国語、英語を行き来するこの曲もまた、立体的なバンドサウンドで輝きを増した。
「Mirror(選択)」を歌い終えたYonYonが「最高だぜ!」と笑顔を見せると、「そんなこと言ってるの初めて聞いた!(笑)」とSIRUP。この楽曲がデビュー間もないSIRUPにYonYonが声をかけたことで生まれたことを明かし、制作過程を振り返った。
「このライブは先に東京でもやったんですけど、大阪のラインナップには小さくand moreと書いてあるんですよ。大阪といえば……WILYWNKA!」SIRUPが呼び込むと同時に「STAY feat. SIRUP」が始まり、ステージに飛び込んだWILYWNKAが叫ぶ。「What up!」 大歓声が大阪出身のWILYWNKAを迎えた。ミュージックビデオを想起させる赤いライティングで、WILYWNKA のロウなラップとSIRUPのスムースなボーカルが掛け合う1曲を送った。
「全員がアリみたいに小さく見えるくらい、すごく気持ちいいです!」 WILYWNKAが顔をほころばせる。「WILYWNKAとは今日も髪型が一緒やし、育った街も一緒やな」「先輩(SIRUP)の通学路で僕は遊んでたんですよ!」と、2人の関係性が垣間見えるトークのあと、WILYWNKAはステージを後にした。SIRUPは「一度、バンドのみんなに拍手を!」と、この日の豪華共演を支える7人のバンドメンバーを讃える。「あっという間やから、油断してたら終わるよ。後半戦も盛り上がっていこうぜEverybody!」
SIRUP 撮影 =Leo Youlagi
「Maybe」のあと、YOSA&TAARとのコラボレーション楽曲「Fever」をバンドアレンジで聴かせたSIRUPが、「みんな、自由に遊ぼうか」と言うとサングラスをかけたTENDREが現れた。2人の遊び場を覗くような感覚を味わえる「PLAY feat. TENDRE」へ。サビでハーモニーを聴かせたあと、TENDREが自身のパートの歌い出しでサングラスを外すと、観客たちが大いに沸かせた。
この楽曲を大阪で2人揃って披露したのはこの日が初めてだったようで、TENDREが「一緒にもう1曲作ろう!」と切り出すと「Yeah! やるしかないね!」と応じるSIRUP。TENDREを見送ると、「ステージに立つとわかると思うんだけど、みんながこんなに楽しそうにライブを観てくれたらテンション上がりますよ。ありがとう!」と感謝を口にした。
「頑張って仕事終わらせてここに来たんやろう? じゃあ思いっきり楽しんでストレス発散しよう!」粋な一言とともに送った「No Stress」から、SIRUPが故郷である大阪市中央公会堂でミュージックビデオを撮影したという「Evergreen」へと繋がった。少しずつ色味の異なる様々なグリーンがステージを彩る中、ゆったりとしたシャッフルビートにバンドメンバーたちもサイドステップを踏み、SIRUPと観客たちは<Ever Ever Evergreen…>とシンガロングするなど、終始和やかな雰囲気に包まれていた。
「Evergreen」のミュージックビデオでは、自身の母と兄、そして長年活動をともにするプロデューサーのMori Zentaroがカメラマンを担当したことを語ったSIRUP。「俺は東京に住んでいるけど大阪出身で、月に一度は必ず大阪に居ます。なぜなら、俺のクルーが大阪にいるからです」
SIRUP 撮影 =Leo Youlagi
Soulflexの楽曲“「Free Ya Mind」が演奏され、SIRUPの呼び込みでSoulflexのフロントマンであるZIN(Vo.)とMa-Nu(Rap)が登場。フロアからはあたたかい声と拍手が贈られ、SIRUPの表情はいつも以上にリラックスしているように見えた。クールでインテリジェンスを感じるラップを聴かせるMa-Nu、深みのある芳醇な歌声のZIN、マイルドでしなやかなフロウのSIRUP。そしてSIRUPとしてのライブ活動を支え続け、この日もステージに立っているSoulflexのバンドメンバーたち。彼らが結成以来貫いている、自然体のまま音楽と戯れていたいというスタンスを体現したようなメロウな1曲が、この特別な夜にとびっきりの華を添えた。
改めてSoulflexの面々を一人ずつ紹介したSIRUPが、はにかむメンバーたちを見てしみじみと言った。「俺、なんかめちゃくちゃ嬉しいわ」 拠点である大阪で2,500人が見つめる大きなステージに、約10年に渡りともに過ごした仲間たちが揃った瞬間の彼らの喜びを想像すると、こみ上げるものがあった。
Ma-NuとZINがステージを退き、「LMN」を挟んで次に登場したのは、最後のゲストアーティストであるshowmoreだ。井上惇志が刻むキーボードのリズムとともに「now feat. SIRUP」が始まり、赤いドレスをまとった根津まなみ(Vo)が姿を現すとステージが一段と華やぐ。SIRUPと根津はそれぞれの声量を活かしたパワフルなハーモニーを披露し、大人の色気が香り立つデュエットで魅了した。
SIRUP 撮影 =Leo Youlagi
「SWIM」では「Good music!」「We love it!」というお馴染みのコールアンドレスポンスが飛び交い、いよいよ『channel 01』は本編最後の楽曲を迎えた。ダンサブルなビートに乗って7人のバンドメンバーが順に躍動的なソロを聴かせ、勢いをそのままに「Do Well」に突入すると、観客たちはたまらずにイントロから飛び跳ね始めた。ミュージックビデオに通ずる赤と緑を中心に、あらゆる効果を駆使したビビッドなライティングが炸裂し、<Da la ta ta ta do well><Da la ta ta ta do well>とエネルギッシュに声を重ねるSIRUPと観客たち。互いが余力を残すまいと持てる情熱をぶつけ合い、鳴り渡る拍手の中SIRUPとバンドメンバーたちは颯爽とステージを降りた。
興奮冷めやらぬフロアからすぐさまアンコールの声が上がり、ステージに戻ったバンドメンバーとSIRUP。「年末までに色んなイベントに出演しますが、SIRUPとして「今年はありがとう」と言えるのは今日だと思うので、来年もよろしくお願いします。来年に向け新しい作品を準備していて、その中から新曲をやって終わろうと思います」と話し、SIRUPはステージ中央で椅子に腰掛け、ギターだけで奏でる素朴なイントロに身を委ねた。その曲は、恋人との何気ない日常に散りばめられた愛しい瞬間を切り取った歌詞で始まり、彼の包容力に溢れた歌声がこの上なく魅力的に聴こえるバラードだった。観客たちは恍惚とした表情で、ゆっくりと手を左右に振り、SIRUPが最後にもう一度、公演に関わったすべての人々と訪れた観客たちに感謝を述べ、『channel 01』は幕を下ろした。
SIRUP 撮影 =Leo Youlagi
SIRUPが築いた数々のアーティストとの強い結びつきを目の当たりにすると、彼の「SIRUP」としてのプロジェクトがスタートしてまだ2年余りだという事実に驚かざるを得ない。しかし彼はアーティストとして、この2年のみならず長きに渡りたくさんの仲間たちに愛され、互いを支え合い、無理に先を急ぐことなく着実に歩んできたのだろう。どんな時も自身を誇示しないそのナチュラルな姿勢が、関わる人々を惹きつけてやまないのだ。
3月25日に新作のリリースをアナウンスしたSIRUP。彼の新しい音楽とともに迎える春は、いつにも増して胸が躍るに違いない。
取材・文=Natsumi.K 撮影 =Leo Youlagi

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