サイダーガール

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【サイダーガール インタビュー】
“『SODA POP FANCLUB』とは?”
っていうところにもう1回戻った

ライヴでも“こうしよう”っていう
ルールがない曲にしたかった

1曲目の「飛行船」はオープナーに相応しい勢いがありますね。

それもさっきの話の続きで、これ以外に作っていた曲が暗かったんですよ。どうしようかって思っていた時に、ふたりが作った曲に感化されて作り直していったんです。自分のボーダーラインを越える、さわやかな曲ができたと思います。

《口ずさむメロディーは未来地図に掻き鳴らすEコードはコンパスに》という、知さんらしい名フレーズがまた生まれていますね。

カッコ良いですよね(笑)。歌詞で悩むのが嫌なんで、仮歌を作る時から歌詞を入れておこうって思った時、これがスッと出てきたんです。

逆に2曲目の「ばかやろう」は早くからあった曲ですか?

そうですね。自分たちが真面目すぎるから型破りになっていきたい、ちょっと悪くなりたいっていう気持ちがあって作っていた曲で。でも、最初はサビが暗くて。“明るくしよう”っていう話になってから、サビを作り直して、分かりやすくしていきました。もともとのテーマは“ヤンキー”だったんですけど(笑)。

曲名にも表れていますが、型破りになりたいっていう考えがあったんですね。

そうですね。でも、最終的に歌詞をまとめる時に、きれいになっちゃったんですけど。

この曲の遊び心、あるいは毒みたいなものは、今回、Yurinさんやフジムラさんが作詞作曲したものにも出ていますよね。サイダーガールのパンク的な姿勢の萌芽というか。

そうですね。ライヴでも“こうしよう”っていうルールがない曲にしたかったんです。いつも悩むんですよ、“自分たちのやりたいこととは?”って。

真面目だなぁ。

そうなんです(笑)。だから、真面目にならないで好きにやっていい曲っていうことで作ったんです。これからもライヴとかでそういう曲に育っていけばいいですね。

3曲目の「クライベイビー」はリードやシングルじゃないことに驚かされるくらい、ホーンが鮮やかなアッパーチューンですよね。

Yurin
ポップな曲の個人的なメソッドとしては、あまり暗いコードを使わないんですけど、仮にスケールから外れたコードを使う時は、メロディはスケールそのままで行くとか、そういうやり方をしていて。これはそういう曲でしたね。歌詞も悩まず、ひたすらに前向きなものを作ろうと。4thシングルだった「クローバー」を書いた時の気持ちの延長線上というか。応援歌と言えば応援歌ですかね。

そして、リード曲の「週刊少年ゾンビ」。遊び心も毒も、いろいろ詰まったチャレンジングなナンバーですよね。

Yurin
これ、僕の中では最後にできた曲なんです。真面目に曲を作るのに飽きた頃にできたっていう(笑)。最初のコンセプトとしてあったソーダポップ感を意識しつつ、めっちゃ遊びました。

《ぱぱぱぱぱぱ ぱあと生きていたいな》とサビで歌う歌詞は?

Yurin
歌詞は深夜テンションで書きました(笑)。2Aでラップしているんですけど、そこもレコーディングで歌を録りながら考えたっていう。タピオカのブームは去る、諸行無常だっていうところ以外は、わりとスッと書きました。

《タピオカいっぱい飲みたいし》のところですよね。《SNS》という言葉も出てきますけど、風刺的な姿勢を感じます。

Yurin
流行りものって消費されていくじゃないですか。そういうのを、ただ与えられて、ワーってなっているのをゾンビに例えたんです。思考停止している感じ。僕が一番その曲で言いたいのは、“タピオカのブームはもう終わるよ”っていうことです(笑)。

(笑)。打って変わって「シンクロ」はストリングスの入った美しいバラードですね。

これはタイアップが付いていて、NETFLIXの『7SEEDS』っていうアニメのエンディングテーマとして書き下ろしたんです。作っていたのは前のツアー(『サイダーガールTOUR 2019 サイダーのゆくえ -SPACESHIP IN MY CIDER-』)の時…昨年の1月ぐらいで。レコーディングもツアー中にしたんです。「クローバー」と同じく、プロデューサーはakkinさんで。僕が作ったデモはアコギだったんですけど、ストリングスを入れたいって話していたら、akkinさんがフレーズを作ってくれて、生で録りました。『7SEEDS』はSFなんですけど、選ばれた子供たちが冷凍されて、滅びてしまった地球をその子供たちが作り直すっていう話なんです。いろんなグループがあって、亡くなったと思っていた自分の恋人が別のグループで生きていたという恋愛要素もあり、そこにフィーチャーしたエンディングの話だったので、自分の恋愛観…その頃はちょっと恋してたので…もう終わったんですけど(笑)、そういうことをイメージしながら作ったんです。だから、わりとストレートなラブソングにも見えると思います。

先ほどの話にも出てきましたけど、バラードが中盤に入っているというのも印象的です。

バラードって終盤に入ることが多いですけど、アルバムが重くなっちゃうのが嫌で。バラードだけど、サラッと聴いてほしいんです。テンポもバラードにしてはそんなに遅くないので。作っていた当時はヒップホップを聴いていたということもあって、そういうビート感に近いと思っています。

確かにじっとりしすぎていないですよね。体を揺らしながら聴ける感じです。ちなみにヒップホップは、どのあたりを聴いていたんですか? 

海外のヒップホップも流行っているので、チャートに入っているものを聴いたりしていたんですけど…Nonameとか。トラックを聴いてカッコ良いものはデモで真似したりしましたね。最近はジャズにはまっています。Louis Coleがやっているノウワーとか。

Louis Coleの一軒家セッションの映像、カッコ良いですよね!

そうですよね。音源はハイファイなのに生セッションになると印象が変わるっていう。僕、クラブに行かないし、自分も演奏する身だからDJが回すものより、ああいう動画を観るほうが好きですね。

聴き終わった感覚を、
なるべく薄めたかった

続く「アンブレラ」も切ないけど疾走感があります。

Yurin
やっぱり“どうやったら暗くならないのか”っていうのは考えましたね。曲のコード感やメロディーはシリアスですけど、ビートや音色でバンド感を出していけば大丈夫かなって。これ、「クローバー」の次に早くできたんです。だから、僕の真面目さが出ています(笑)。今回、本を読んだり映画を観たりして、インプットのあとに曲を作ることが多かったんです。これは『天気の子』を観て、“雨をモチーフにしよう!”って思って書いたんですよね。

7曲目が「フューリー」。ここでフジムラさんの作詞作曲のものが出てきますが、Yurinさんと知さんと同様に振り切っていますよね。

フジムラ
これまで曲を作ってきた中で、弾けた曲って1割あるかないかっていう感じだったんですよ。でも、今回は自分も弾けてみる、かつ分かりやすく…っていうか、ライヴでお客さんがノリやすい曲を作ってみようと思って挑戦してみました。

《ヘイ!ナイトモンスター》なんて歌ってますが、演奏は難しいですよね。

難しいです(笑)。
フジムラ
自分が今まで作ってきた曲にこういうキメ感はなかったと思って作りました。4つ打ちはいろんなバンドがやってるけど、自分がやったらどうなるんだろうって。あまり通ってこなかったジャンルなので、また違った印象のものを作れると思ったんです。演奏面でもどんどん進化していかないといけないから無理はしたんですけど(笑)、次につながればいいなって。

次のほっこりした「帰っておいでよ」もフジムラさんの曲ですが、この2曲の振り幅がすごいです。

フジムラ
そうですね(笑)。ゆっくりな曲を作ると、なぜか暗くなってしまうんですよ。でも、今回は明るい曲を作りたくて、“今日できないとヤバい!”っていう時にフッと降りてきたんです。サビが《帰っておいでよ》なんですけど、ずっと曲作りで悩んでいたんで、まともな日常生活が送れていなくって、実際お母さんに“帰ってきなよ”って言われていたんです(笑)。あと、自分の中のもうひとりのちゃんとした自分に“帰っておいでよ”って言っているとか、いろんな意味があって。サビからできたこともあって、ここだけ聴かせられればいいと思ってたので、長い構成を考えてもしっくりこなくて。そうしたらマネージャーに“1番だけでいいじゃん”って言われて、“あっ、そうだな!”と。

確かに。スローな曲は暗くて長いことが多いから、スタンダードなようでいて異色なナンバーなのかもしれません。

フジムラ
そうですね。歌詞も自分らしいものができたと思います。
ピュアだよね(笑)。

「桜色」。この曲は卒業シーズンに似合いそうですね。

月イチのLINE LIVEで曲を作るっていう企画をやっているんですけど、テーマを決めて、それに対してリスナーの人たちが送ってきてくれた言葉をもとに作った曲なんです。で、そこからフル尺で作ってみるっていう話になって。これ、“桜”というテーマで言葉を募った時のものなので、知っているお客さんは“あっ、あの曲だ!”って思ってくれると思います。
Yurin
ヴォーカルも4代目サイダーガール(サイダーガールのイメージキャラクター)の小貫莉奈ちゃんが一緒に歌ってくれているんです。そこも含めて、みんなで作った曲っていう。
企画の時は僕が歌って初音ミクがコーラスしていたんです(笑)。でも、女の子の声を入れたくて、Yurinくんと一緒に4代目に歌ってもらおうってことになりました。でも、い桜っていつ咲くんですかね? リリースの時期的には早いですよね(笑)。

咲いた頃にも聴いてもらえば大丈夫ですから(笑)。最後が「クローバー」で終わるところもいいですね。聴き慣れているからハッとするし、この前向きな疾走感が“アルバムは終わっても僕らは止まらない”っていうことを示してくれているように思えます。

Yurin
聴き終わった感覚を、なるべく薄めたかったんです。

なるほど。どの曲もライヴで聴くのが楽しみなアルバムですね。

「週刊少年ゾンビ」のラップのところ、今のライヴでは僕とフジムラでMPCを叩いているんです。そこは観ていても面白いと思いますね。ーリリースツアーは3月の大分を皮切りに始まって新木場STUDIO COASTまでですが、追加公演もLINE CUBE SHIBUYAで行なわれるんですね!
ホールでワンマンをやるのは初めてなんですよ。ツアーファイナルはCOASTなので、そこはまた別というか、ホールでやれることに挑戦したいと思います。

取材:高橋美穂

アルバム『SODA POP FANCLUB 3』2020年1月15日発売 UNIVERSAL J
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • UPCH-7550
    • ¥3,500(税抜)
    • 【通常盤】
    • UPCH-2204
    • ¥2,500(税抜)

『サイダーガールTOUR2020 サイダーのゆくえ-SPRING HAS COME-』

3/14(土) 大分・club SPOT
3/15(日) 山口・LIVE rise SHUNAN
3/21(土) 北海道・札幌 PENNY LANE24
3/28(土) 高知・X-pt.
3/29(日) 香川・高松 DIME
4/04(土) 宮城・仙台darwin
4/05(日) 岩手・盛岡 CLUB CHANGE WAVE
4/11(土) 石川・金沢 Eight Hall
4/12(日) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE
4/18(土) 福岡・スカラエスパシオ
4/19(日) 広島・LIVE VANQUISH
4/25(土) 愛知・名古屋 DIAMOND HALL
4/26(日) 長野・松本 ALECX
4/29(水) 大阪・なんばHatch
5/16(土) 東京・新木場 STUDIO COAST
―追加公演―
5/27(水) 東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

サイダーガール プロフィール

シュワシュワとはじける炭酸の泡は爽快感、その泡はあっと言う間に消えてなくなってしまう儚さ。そしてどんな色にも自在に変化していく。そんな“炭酸系サウンド”を目指し、2014年5月、動画サイトを中心に活動していたYurin(Vo&Gu)、VOCALOIDを使用して音楽活動していた知(Gu)、フジムラ(Ba)で結成。インターネットを含むメディアでは一切顔を出さず、ライヴ会場でのみ本人たちの姿を目撃できるということと、“炭酸系”サウンドが相まって話題となり、17年7月にシングル「エバーグリーン」でメジャーデビュー。同年10月には初のフルアルバムとなる『SODA POP FANCLUB 1』をリリースした。そして、12月1日に4枚目となるフルアルバム『SODA POP FANCLUB 4』をリリースする。22年1月からは、アルバムを引っ提げた全国11都市を巡るツアーを敢行する。サイダーガール オフィシャルHP

「週刊少年ゾンビ」MV

OKMusic編集部

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