川原一馬×荒木健太朗に聞く、イマー
シブシアターの楽しみ方や『サクラヒ
メ』~『桜姫東文章』より~の見どこ
ろとは

物語を鑑賞するだけではなく、観客自身が意思を持って物語に入っていくことができるスタイルの演劇・イマーシブシアター。現在、ロンドンやNY、そして日本ではUSJを筆頭に上演されている新しい演劇手法だ。
そんな新感覚の演劇が、2020年1月24日(金)~2月4日(火)日本最古の歴史を持つ京都四條・南座にて上演されることが決定した。タイトルは、イマーシブシアター『サクラヒメ』~『桜姫東文章』より~。出演は、純矢ちとせ、川原一馬、荒木健太朗、世界(EXILEFANTASTICS from EXILE TRIBE)、平野泰新(MAG!C☆PRINCE)Toyotaka(Beat Buddy Boi)、高田秀文(DAZZLE)、新里宏太といった豪華出演者たち。
この度、開幕に向けて、ヒロイン・サクラヒメ(純矢)を取り巻く男たちの一員を演じる川原と荒木に、公演に対する意気込みや見どころを伺った。
ーーお二人は今回が初共演ですが、お互いの第一印象はどうでしたか?
荒木:全然イメージと違いました。こんなに柔らかい子なんだって。何かの芝居を見たことがあるし、今ってSNSで色々見られるので、その印象とかで……。怖いね、勝手にイメージしちゃうんだよね(笑)。
川原:そうですね。わりと怖いって思われる(笑)。
川原一馬
荒木:うん、僕もそう。
川原:僕もアラケンさん超怖いと思っていて。古き良き役者像ってあると思うんですけど、それを持ってらっしゃるんだろうなってのは分かっていたんです。だけど、そういう雰囲気とは全然違う、ゆるふわな感じもあって。お会いしたらとてもキュートな方で、すごく安心しました(笑)。
ーー制作会見で、荒木さんはちょうど今年の始めに「南座に立てたら最高だな」と思ったとお話しされていました。伝統ある劇場に立つ意気込みをお聞かせいただけますか?
荒木:今年の4月に仕事で京都に行きまして、桜が綺麗って聞いていたので祇園白川に行って、その帰りに南座に寄りました。僕は小劇場出身なので、こんなところに立てるなんて思っていませんでした。歌舞伎の方たちとか、名のある方たちが出るっていうイメージがあったんです。意気込みも何も、「出ることはないだろ」と思ってましたから。でも、出られるなら出てみたいな、やれる機会があれば、って。そこでぱんぱんって(お参り)したらこういうことになったので。……まだあまり実感がないですけど。
意気込みは、南座で本当にやるんだってイメージよりも、まずは共演者、一緒に作っていく仲間たちと、お客様に見せることを意識しつつ、稽古場で色んな面白いことを試していきたいです。僕たちは俳優をしているから南座に立つことの凄さを知っていますが、他の出演者の方たちはいろんなジャンルから来られているので……。たぶん、僕らが「武道館でやるんだよね」みたいな感じなのかも(笑)。未知の領域だけど、意識してしまうと萎縮しちゃうから、あんまり意識せずにやりたいですね。
荒木健太朗 
川原:南座に立つ実感がないというのは僕も同じで……。実は僕、南座に行ったことがないんです。でも、伝統ある場所でこういうことをやれるのがすごく新しいことだなと思います。僕らがやるなら、今までの概念を変える、みんなが「新しい」「面白い」と言ってくれるようなものを作らなくては、という責任感を持って挑まなくてはとも思っています。南座さんでやらせてもらうからこそ、このキャストでやるからこそ、新しいジャンルになるという予測はつくと思うんです。だからこそ、このメンバーでよかったという空気感とかグルーヴ感をお届けできたらいいですね。
ーー南座における和とストリートダンスの融合というのが、作品の見所のひとつとしてあげられています。すごく挑戦的な作品の中で、お二人が個人的にチャレンジしてみたいことがあれば教えてください。
荒木:僕は刀を振らせていただくんですが、今回は殺陣師がいないらしいんです。振付の中で、立ち回りに関しては自分でやっていかなくてはいけなくて。アドバイスをしてくれるメンバー何人かに声を掛けて、一緒に稽古したり、DAZZLEさんと話しをしていろいろと考えています。(川原に向かって)そういう話をしなかった? 自分たちで出せるものを出していくって。
川原:そうですね。基本的には、僕ら自身が何を持ってるかがすごく大事になってきます。物語のプロットはありますけど、その間の埋め方とか、ちょっとしたアイデアはディスカッションしながら進めていくことになると思います。
荒木:各々のパフォーマンス、特技を活かすのが前提で、あとは自分たちの頭の中で考えたことを具現化できるかっていう挑戦になると思います。
川原:特に僕たちみたいな、「舞台をメインにしている役者」というカテゴリの人間がDAZZLEさん演出で作品をやることはあまりないので。ダンスをされているクリエイティブの人たちの演出だと、演劇的ではない新しい見せ方やダンスチックな表現が生まれてくると思います。ディスカッションをして、どっちの方がよく見えるかとか、一つひとつトライ&エラーを繰り返しながら作っていきたいです。
荒木:“ショー”になりかねないんじゃないかって思う時があるけど、DAZZLEさんの演出によって、お話をしっかり見せる中にパフォーマンスを入れ込むことができる。演劇は演劇だし、DAZZLEさんもそれをやりたいんだと思う。個人的な挑戦はたくさんあるのかなと思います。
川原:ただ歩くだけでも普通とは違いますから。街の人として舞台上にいるお客さんたちに、自分たちをどんな風に認識してもらうかだけでも表現の仕方が変わると思うので、そういうルール付けをこれから細かくやっていこうと思っています。
(左から)川原一馬、荒木健太朗
ーーお客様の中には、イマーシブシアターが初めてという方も多いと思います。荒木さんは、ご自身もイマーシブシアターを体験したことがあるそうなので、楽しみ方のコツやアドバイスがあれば教えてください。
荒木:それを舞台上で表現するのが自分たちだろ、って話なんですが、お客さんも能動的になった方がいいと思うんです。普通の舞台だとみんな「観せてもらう」という感覚でしょうけど、そうではなくて自分から行かないと面白くない。実はこういうことが起きてるとか、観る部分によって人それぞれの楽しみ方ができるものなので。
僕が観たDAZZLEさんの作品では、3/4が終わった時に「どうぞ!」って言われたんです。ミステリー作品でしたが、犯人が誰か当てるために、観客自身が歩き回って、アイテムを触ったりして探すんです。僕はたまたま前に『Sleep No More』(※マクベスを題材にしたNYのイマーシブシアター公演)を観ていたから分かるけど、日本人は初めてだと「どうぞって言われても……」となる。でも自分たちで動かないと、「なんだったんだろう」って感じで終わっちゃうから。僕たちは世界観を作るので、そこに入ってきて! って感じです。うーん……「体験しないと分からない」って言っちゃったら終わりだもんね。どうしたら観に来てもらえるかな?
川原:そうですね、一種のアトラクションを体験する感覚に近いかな。ほら、お化け屋敷とかあるじゃないですか。僕自身は体験したことがないので、作っていく作業の中で「今言ったことと全然違うじゃん」ってなるかもしれないんですけど……。お化け屋敷は、病室に行ったらそこで何かが起こってたり、とにかく進まないとストーリーが進まない。それと同じように、お客さんが進むことでストーリーが展開して、その中で見たいもの・見たい人・ストーリーを自分で追っかけていく。ドラマや映画などの映像だったら、目に入るところは全部決められていますが、(イマーシブシアターは)自分がカメラマンになってるような感覚で楽しんだらいいのかな。ある役者が動いてそこが見たい、って思ったらそっちを見たらいいし。何かきっかけとなるアクションに「これはなんだろう?」と考えながら動いてほしいですね。自分が主人公として主観で見ているけど、ストーリーは世界全体で広がってる。生きてる自分自身と一緒だと思うので、すごくリアルな体験が演劇としてできたらすごく面白いと思います。
荒木:川原くんの言う通り、僕らが演じている1階側でお客さんが動いてるのを2階・3階の人たちは「一つの町」として見ることができる。まるで、自分の町のジオラマを見ているように。ここに人がいるとか、自分の住んでる家があるなとか。そういう感覚で、2階・3階のお客さんは見れるのかなって思います。
(左から)川原一馬、荒木健太朗
川原:模型を見る楽しみに近いかもしれないですね。模型って超精巧にできていて面白いし、あれを上から見るのとそこに自分が立てるのって全然違うじゃないですか。1階席と2階・3階席で見え方は全然違うと思うし。
荒木:ぜひどっちも見てほしいよね。
川原:これは絶対、「舞台苦手、舞台退屈」って人こそ来て欲しい。
荒木:うん、来て欲しい。
川原:これだけを観にくる価値はあると思う。テーマパークとかって、わざわざそこに行くじゃないですか。それと似たような感覚。『サクラヒメ』っていうワールドに没入しに来る、体験しに来るって思ってもらえたら。
荒木:あとこれ、偶然にも全部2ステ以上だよ。ってことは昼夜でも、1回、2回、3回と観てもらってね(笑)
川原:で、公演の間に京都の町並み見てご飯食べて。
荒木:そうそう、最高じゃないですか(笑)。
川原:最高ですよ(笑)。
ーー5種類のマルチエンディングということで、お客様もどこを見るか、誰に投票するかなど、かなり迷うと思います。お二人が注目してほしい、見逃して欲しくないなというポイントはありますか?
川原::全体の中で行われることは、どこを観ても面白いはずなんです。逆に言えば、見たいものを見てほしいです。目線がいくものを純粋に見てもらえれば。「わからないなぁ」となったとしても、絶対すごい! って感じるところがあると思うので。
荒木:メインでどかーん! って派手なことをしてる裏で、よくよく見たらすっごく面白いことを誰かがやってるんです。例えば、世界くんがメインで動いている横で別の役者がこっそり何かをしていたりとか。「よく見てたらこいつ可哀想だな」「こいつわりと真面目に生きてんだな」というのがあったら「サクラヒメと一緒にしてあげよう」って気持ちになるし(笑)。ミニマムに観ながらワイドにも観てほしいっていうところばっかりですね。
荒木健太朗 
川原:「今日はここを見よう」って思っていても、他のところで盛り上がっていたらそっちに目線が行っちゃうじゃないですか。でも、それはそれでいいと思う。
荒木:そうですね。盛り上がってる時に、僕らを見ずにお客さんを見るってのはありですから。「あー、(舞台にいる)お客さんはこんな風になるんだ」とか。そういう感覚も楽しんでほしいなって思います。
川原:僕たちはもちろん、作品にのめり込んでもらえるよう最大限やりますけどね。
ーーサクラヒメの相手は投票で決まりますが、投票してもらうためのアピールなどは考えていますか?
川原:見せ所はしっかり作るので、投票してほしいですけど。お客さんはこの人とのラストが観たいと思ったキャラクターに投票するでしょうし、出演者のファンの方はその人に入れたいとかもちろんあると思います。だけど、その時、本当にラストを観たい人に投票してほしいなって気持ちはあります。
荒木:その日のお客さんによっても結果は変わりますからね。僕らは一生懸命アピールするけど、お客さんが他のところを見ているかもしれないし、ストーリーの流れで僕ではなくて「あっちを見てしまった」って引きずられることもあると思うので。
川原:ストーリー重視か、パフォーマンスが見たいかでも好みが変わるでしょうし。本当にその時感じていることでいいなって思います。
川原一馬 
ーー最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。
川原:2020年はオリンピックイヤーということで、京都には世界中からいろんな人が来ると思います。南座は外観だけでも人を惹きつけると思いますが、その中でこんな世界観が繰り広げられてたら絶対に面白いと思います。イマーシブシアターは、ノンバーバルに近い、喋らずにパフォーマンスだけで進めていくこともできるので、言葉が違う世界の方々まで、みんなに伝わる作品になっているはず。もちろん喋るところもあるので、その台詞が、海外の方にも受け入れられるような言葉だと思うし、「この意味ってなんだろう?」というきっかけにもなるんじゃないかな。日本人の方なら、すごく深い意味を感じ取ってもらうこともできると思う。年代や人種、国に関係なく、観に来ていただきたいです。
荒木:歌舞伎やミュージカル、2.5次元舞台など、お芝居の形態は色々ありますが、何年後かにイマーシブシアターが演劇のひとつのスタンダードになっているかもしれません。現にNYではそのムーブメントは起きていますし。そして流行りの中には確実に「面白いから」という理由があります。今回、南座さんからは「面白いことをやって!」と言われていますので、その勢いに乗って面白いことをやらせてもらいます。お客さんには「イマーシブシアターとはなんぞや?」ってことも考えてほしいけど、もっとシンプルに、「面白かった!」って思わせたい。1度ならず2度までも。というか、きっと2度観たくなるだろうなっていうのを確信しているので、ぜひ1度観に来てください。
(左から)川原一馬、荒木健太朗
物語の一部となるのも全体を俯瞰するのも、何を観るのも自由。1階席であれば華麗な殺陣やタップダンスや演技を間近で観ることができる他、2階・3階エリアでしか見られないパフォーマンスもあり、何度観ても新鮮な驚きや発見があるはず。イマーシブシアターは初めてという方も、今作をきっかけに足を運んでみてはどうだろうか。
取材・文=吉田 沙奈 撮影=山本 れお

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