【山本彩 インタビュー】
ソロになってからの新しい一面を
認めてもらえたら嬉しい
アイドルグループを卒業し、ソロアーティストとなって初めてのアルバム『α』。3枚のシングル収録曲を含む2019年の軌跡を表わした本作のことはもちろん、何のために、誰のために歌っているのかを尋ねた。
「棘」を書いたことによって
自分の殻を破ることができた
いきなり漫画の話なんですけど。
えぇ!?
山本さんがBL好きで、中学からはまっていることはわりと公言されているじゃないですか。
そうですね。1,000冊以上は持っていると思います。
最近はどんなBL本を読んでます?
オメガバース系っていう…BLの中でもいろんなジャンルがあるんですよね。学園系とか社会人系とか分かれているんですけど、オメガバース系もその中にあるひとつのジャンルとして確立されていて。人間に男性と女性の性別があるように、オメガ、アルファ、ベータという別の性も存在する設定で、男性でも赤ちゃんが産めるっていう。そんなファンタジーのジャンルがありまして、それに最近ははまってます。…音楽のインタビューで何をしゃべってるんですかね(笑)。
心理学的に言うと、外では着丈に振舞いつつも内心は子供っぽかったり、孤独な面を持っている人ほどBLを好きになりやすいらしいんです。
へぇー! でも、あながち間違ってないと思います。
以前、高橋朱里さんと吉田朱里さんにインタビューした時、山本さんのことを高橋さんは“末っ子っぽい”、吉田さんは“本当は甘えたい人”と言っていて。
恥ずかしい(笑)。でも、本当にそうですね。私は4人兄妹の一番下で、いろいろと自由させてもらったから、根はそういうところがあると思います。
23歳の時に書かれたエッセイ本『すべての理由』だと、外でみんなと会っている時は幸せを感じられるけど、ふとした瞬間に孤独に押し潰されそうになると。
はい、書いてましたね。
世間から見た山本さんって芯があって強いイメージですけど、実際は極端な二面性を持っているじゃないですか。だからこそ、『α』という振り幅の大きいアルバムを作れたんじゃないかなって。
そうですね。これまで“自分はこう見られたい”という理想像があって、世間の人には望んだようなイメージを持ってもらえていて。私としては身近な人にも同じような印象を持ってもらえていると思っていたら、“ご飯を食べている時によく物を落とす”とか“すぐ寝落ちする”とか、だらしないところが段々気付かれていて“あぁ、しまった”みたいな。
逆に、それは良いことだと思うんですけど。
確かに、楽になったところはあると思います。ずっと気を張らなくてもいいんだなって。
それこそ10代の後半からグループを束ねてて、言わば気を張らないといけないポジションにいたわけですから。だからこそ、ポジティブとネガティブを兼ね備えた音楽が作れているのかなって。
まさにそうですね。今の考え方があるのは、あの時のおかげだなって。中でも、「棘」を作れたことは大きかったです。グループにいた時は、発言とか立ち振る舞いを特に気を付けないといけないと思っていたので、言えないことや発言しにくい事柄だったり、言い方だったりがあって。ソロになって自分を出す怖さもあったんですけど、「棘」はその怖さに負けずに書けた曲だと思うので、ひとつ自分の殻を破れたと思います。
「棘」を書き上げた時、どういう気持ちになりました?
“こういうことを歌いたい”というのは前からあったんですけど、この曲をどういう位置付けにするかには迷ってて。自分の意思もありつつ、周りの意見を訊いて2ndシングルの表題曲に決めさせてもらいました。自分がいいと思っても周りがいいと思ってなければ、私は本当の意味でいいものだと思えなくて。自分の書きたいものを作って“誰が何と言おうと、これはいいものなんだ”と自負されているシンガーソングライターの方が多いと思うんですけど、まだ自分にはそれがないので、そういう人には憧れます。