BIGMAMAと緑黄色社会・長屋晴子のコ
ラボが『RADIO CRAZY』で実現、金井
政人&長屋が「素敵なものを見せられ
るはず」と自信を語る

ロックとクラシックの融合をテーマにした、BIGMAMAの企画アルバムの第3弾『Roclassick〜the Last〜』。これまで「荒狂曲“シンセカイ”」「Swan Song」など人気曲を輩出してきたこのシリーズ。完結盤となった今作も、聴きごたえある楽曲が揃っている。中でも、緑黄色社会の長屋晴子がボーカルで参加した「LEMONADE feat. Haruko Nagaya」は、新たな代表曲としてクローズアップされるデュエットナンバー。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」をモチーフに、恋をすることの幸福感、祝福の気持ちなどが描かれており、自分にとって一番大切なものについてイメージを膨らませるような内容となっている。INTEX OSAKAで開催される『FM802 30PARTY FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019』の12月27日(金)のステージでは、BIGMAMAと長屋晴子のコラボレーションも実現。「この日限り」と銘打たれており、非常に貴重なパフォーマンスが繰り広げられる。今回は、『RADIO CRAZY』でのスペシャルな瞬間を控えた、BIGMAMA・金井政人、緑黄色社会・長屋晴子に話を訊いた。
金井政人(BIGMAMA)、長屋晴子(緑黄色社会)
――「LEMONADE」は構成が素晴らしいですね。モチーフとなった「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の組み込み方が特に良く、あの美しさがまったく損なわれておらず、聴いてびっくりしました。長屋さんがボーカルとして参加する前から、メロディなどは出来上がっていたのでしょうか?
金井:そうですね。『Roclassick』シリーズの3作目ということで、これまでとは違った志でやらないと、前作の劣化版になると感じていました。そのために決めたことは、まずライブではなくオーディオを想定して作り込むこと。もうひとつは女性ボーカルを招くことだったんです。『Roclassick』は、ロックバンドがクラシックのフレーズを用いて作れば、どんなことをやっても良いという作品集。「LEMONADE」は、男女がカラオケでデュエットできるような曲を作る、という趣旨で出来上がりました。そしてデモを作って、この曲に合う女性ボーカリストを探したのですが、なかなかピンときませんでした。「発売延期かな」というところで長屋晴子さんがこの作品を救ってくれたんです。
金井政人(BIGMAMA)
――金井さんは、長屋さんの声を「理想的だった」と称賛していますね。
金井:クセが強すぎるわけでもないし、ないわけでもない。すごくまっすぐでしなやか。ヨーグルトでいうと、◯◯味とかではない一番プレーンな感じ。基本形がまずおいしいという。素材がそのまま生きていて、みんなも結局はそこに戻ってきちゃうような味わいですね。
長屋:自分がボーカルで参加する、しないということは関係なく、楽曲そのものが素晴らしかったです。聴いた瞬間に好きになって、何回もリピートしました。いざ参加することになって、BIGMAMAさんのイメージに寄り添いたいと思っていたのですが、一方で「どうやったら長屋晴子らしさが出せるのかな」と考えていました。そもそも、私は自分の声の持ち味が分かっていないので。歌ってみて、みなさんがすごく褒めてくださったことで、安心する部分がありました。
金井:長屋さんの良さは、声に飛距離があるところなんです。放物線を描いてすごく遠くまで飛ぶイメージ。身の回りのボーカリストの中で、一番声が遠くまで届く。逆に僕の声って綿菓子みたいなんですよ。食事に行っても、店員さんを呼んでもなかなか来てくれないから、全然注文が通らない(笑)。それでいうと、長屋さんは注文がちゃんと届く感じですね。それって大きな会場が似合うということなんです。
長屋:私としては、言葉に出せない気持ちの部分を、ボーカルに出そうとはしています。その曲の主人公の気持ちになって、それをどのように伝えるかを大事にしているので「LEMONADE」でもそういうところを出して歌いました。
長屋晴子(緑黄色社会)
――「LEMONADE」のモチーフとなったモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の、あの印象的なフレーズの織り込み方が特に見事でした。
金井:あの曲のテーマフレーズ、メインフレーズをどう料理すればいいか、きっと前作までだったら分からなかったはずです。ただ考えていたのは、Aメロ、Bメロ、サビ、そして分かりやすい歌詞というような、自分が思っているジャパニーズポップスの逆張りをすること。洋楽的なアプローチで、同じものをループさせて、変化が生じる箇所で聴き手の耳が立つように作る。デュエットであるためには僕も歌いたかったので、自分のパートのルート音を変化させるなど技術的な調整をして、そしてまたクラシックフレーズに戻すとか。クセになるものを目指してやったけど、それを狙って作るのは本当に難しかったです。曲を解体して、勉強して、形にしたものがこれになりました。きっとその作業は、1作目、2作目を経験したからできたことだと思います。
――金井さんの歌うパートにというワードがあり、あと主題のLEMONADE、長屋さんが所属しているバンド名が緑黄色社会……と、つまりこの曲のカラーイメージって黄色なのかなと想起できます。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はそもそも、誰に捧げられた曲なのかはっきりと分からないセレナーデですが、「LEMONADE」に関しては長屋さんを意識したものであると読み取ることもできます。
金井:解釈は、聴いてくださったみなさんに委ねようと思っています。ただ、この『Roclassick』の曲は、明確なメッセージ性を乗せてしまうと重たく感じてしまうんです。というのも、モチーフはクラシックの名曲なので、そうやって人のふんどしをお借りしているのに、僕らがメッセージを発信しすぎちゃうと、あまり格好いいものではないので。
――なるほど。
金井:ただ、セレナーデって「小さい夜の曲」と言われていますよね。ラブソングで「あなたのことを想って作った」という。そのお題の中で、何を書くかというのは確かに決めていました。ご指摘いただいた部分の「どうやって黄色いもので揃えていくか」とか、「LEMONADE」の語感に近いワード、あと日本人特有の「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と解釈するようなカルチャーをどのようにいじるかなど。普段の曲作りでは照れてできないことが、『Roclassick』ではできるんです。
金井政人(BIGMAMA)
――長屋さんは「LEMONADE」に込められた感情的な部分についてどのように解釈されましたか。
長屋:私の中のキーワードは、女性的な視点です。歌詞の内容も、女性視点ですごく嬉しい内容になっているんです。というワードだったり、あっちへ行ったりこっちへ行ったりする女性の気分だったり。歌詞がすごく好きです。緑黄色社会のメンバーは女心を分かっていないところがあるので、新鮮な気持ちで歌えました(笑)。
――「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は誰のために作った曲か分からないとされていて、仮説の一つに、モーツァルトが親友のお父さんに捧げたんじゃないかという意見もあります。音楽はそもそも聴き手、お客さんに捧げるものですが、それは大前提として、お二人は誰に楽曲を捧げていますか。
長屋:私は、自分のことを人に相談したり話したりするのが苦手なのですが、歌詞としてなら言える。すべてが自分の気持ちではないけど、歌詞に相談することもあるし、理想を歌詞に表すこともあります。まずは、自分のための曲であって良いと考えていて、結果的にそれが誰かのための曲になればいいなと思います。根がネガティブな人間なんだけど、だからこそ共感を呼ぶことができるんじゃないかと。最初は「こんなに暗い歌詞でいいのかな」と思いながら書いていましたが、今ではそれがもっとも強く伝わっている部分だと感じています。
金井:僕は、17歳の頃の自分です。当時の自分は、何がやりたいか分からず、性格が明るいか暗いかとか正解も分からず、信頼できるような友だちができたこともなく、スポーツも勉強も得意か不得意か分からなかった。とにかく、からっぽで自分に自信がない状態でした。そんなとき、音楽に助けられたんです。学校に行く前に聴く曲に勇気をもらったり、暇を持て余していたときに聴いた曲に気持ちを救ってもらったり。日常の中で音楽が占める割合は今より大きかったですね。そんな17歳の自分が、僕の中には未だにいて、何かに迷ったときは尋ねるんです。彼が「こっちの方がいいよ」と言ったらそれが一番なので。彼のために作っているところがあります。
長屋晴子(緑黄色社会)
――「LEMONADE」でBIGMAMAと長屋さんのコラボをきっかけに、バンドとしての交流も生まれ、10月には京都でBIGMAMAと緑黄色社会のツーマンライブも行われました。そういった共演を経て、バンド間での相乗効果も生まれつつある気がします。
長屋:BIGMAMAさんもそうだし、私たちも意識する部分として、格好良いの中に綺麗さが潜んでいるところが共通している気がします。他にはあまりない魅力が共演によって引き出されたと思うので、ご一緒できて本当に嬉しかったです。
金井:確かにバンド間ではすごくプラスがあるけど、BIGMAMA自体には深刻なマイナスがあるんですよ……。
長屋:え、何ですか?
金井:長屋さん不在のリハーサルでは、BIGMAMAに深刻な晴子ロスが起きていること……。
――ハハハ(笑)。
金井:本当に深刻で……(笑)。僕がこの状況を何とかしなければいけないのですけど。みんな、長屋さんに魅せられているんです。だって、丸腰で歌で勝負しに来て、結果を残して帰っていくとか、すごいですよ。僕もミュージシャンとしていろんな人と仕事をさせていただきましたけど、そうやって身一つでやって来て仕事をして帰る人とか、あまりいない。僕自身、同じことがやれるかどうか自問自答したとき、なかなかできないなって。

金井政人(BIGMAMA)

――12月27日の『RADIO CRAZY』では、ついに「LEMONADE」のコラボステージも実現しますね。
長屋:自分のバンドとはサウンドも全然違うし、「LEMONADE」を歌ったとき、楽しい以外の感情が全部吹き飛んだので、きっとそういうステージになると思います。
――BIGMAMAにとっても、深刻な晴子ロスを乗り越えてのステージですもんね。
金井:そうなんです。
長屋:メンバーのみなさんにもすごく優しくしていただいて。いつも、私のもとに寄ってきてくださるんです(笑)。真緒さん(東出真緒)は肩まで組んでくれて。安心感があります。これまで、インタビューとかで「仲が良いバンドっていますか」と尋ねられても、挙げられなかったんですけど、初めて、そういうバンドに出会えた気がします。
金井:いや、僕らからしたら長屋さんは贈り物みたいなんですよ。だから、いないときは大きな晴子ロスが起きる。それくらいの価値を持っているんです。だからこそ、RADIO CRAZYでは僕らのステージを見てもらわなきゃいけない。「見なきゃ損ですよ」と真顔で言いたいですね。
長屋:『RADIO CRAZY』ではその場にいる全員と楽しいを共有したいです。いつもライブ前はめちゃくちゃ緊張して、胃が痛くなって、心のどこかで「私たちの自己満足に付き合わせているんじゃないか」と不安になったりするんですけど、やっぱり歌うことが好きだし、みんなとライブの楽しさを分かち合いたいと思っています。
長屋晴子(緑黄色社会)
――金井さんは、『RADIO CRAZY』での共演でどのようなものを見せようと考えていらっしゃいますか。
金井:目で見て、耳で聴いて、体がもし動いたら自由にやってくれていいと思います。曲を知っていたら一緒に歌ってくれていいし、そうじゃなくても素敵なものを見せられるはず。だから何も考えなくても大丈夫です。
――『RADIO CRAZY』以降もこの曲はやっていくんですよね。
金井:もちろんそのつもりです。『LEMONADE』は、自分で思っていた良曲具合を大幅に更新できた。「この曲は素敵だよ」と届ける責任が僕らにはあります。
長屋:今の段階では、「LEMONADE」をやるのは『RADIO CRAZY』だけなので、見逃さないでほしいです。でも金井さん、今後も呼んでいただけるなら、遠慮なく声をかけてくださいね。
金井:でも、甘えすぎるのは良くないからさ(苦笑)。深刻な晴子ロスがまた起きてしまう。まずは、『RADIO CRAZY』ですね。そのあとは、緑黄色社会さんにご自身のスケジュールを良い形で全うしていただいて、その余暇として、また長屋さんにBIGMAMAのステージへ出てもらいたいです。
長屋晴子(緑黄色社会)、金井政人(BIGMAMA)
取材・文=田辺ユウキ 撮影=日吉“JP”純平

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