物語の一員になるか、物語の行末を決
めるか? まったく新しい観劇体験が
できる イマーシブシアター『サクラ
ヒメ』~『桜姫東文章』より~記者会
見レポート

現在、ロンドン・ウエストエンドやNY・ブロードウェイで注目を集めている新しい演劇手法「イマーシブシアター」。
物語を鑑賞するのではなく、観客自身が意思を持って物語に入っていくことができるスタイルの演劇で、NYではマクベスを題材にした『Sleep No More』が驚異的なロングランヒットとなっている他、日本においても、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで行われた『ホテル・アルバート』や廃病院をまるごと利用したDAZZLEの『Touch The Dark』などが話題となり、ファンを増やしている。
そして今回、日本最古の歴史を持つ京都四條南座において、国内の大劇場初、そして世界初の和風イマーシブシアターとなる『サクラヒメ』~『桜姫東文章』より~が上演される運びとなった。
歌舞伎の「桜姫東文章」を題材としているが、観客一人ひとりが観たいものを選択するというイマーシブシアターの特性上、ストーリーはあくまでもオリジナル。海外の方にも楽しんでいただけるよう、台詞を極力減らし、ノンバーバルの要素も取り入れるとのこと。
「歌舞伎は独特の言い回しが多くて難しそう」「基礎知識がないと話が分からなそうでハードルが高い」という心配は一切不要の、誰もが楽しめる作品になるのではないだろうか。
【あらすじ】
意に沿わぬ縁談から逃れるため、心中によって成就させた一組の男女の恋……。
転生し花魁となったサクラヒメ(純矢ちとせ)は、前世の記憶を頼りに運命の相手との再会を望んでいた。
そこで出会う5人の男性。
木々の声を聞き、星の行方を読み、術を操る神秘的な陰陽師(川原一馬)、孤高の気高さと圧倒的な剣術の強さを持つ浪人(荒木健太朗)、弱者を救う優しさとユーモアを併せ持ち自由に生きる義賊(世界)、一本気で仲間思いの男気に溢れ火事場でのアクロバティックな活躍を見せる鳶(平野泰新)、「医は仁術」の精神で貧しい者には無料で治療を施す心優しき町医者(Toyotaka)。
それぞれの思いが交差する中、都で噂の盗賊(高田秀文)による不可解な行動が始まる。
雲上の導者(新里宏太)の歌唱に導かれ、雲上人(2階・3階のお客様)はいよいよ運命の相手を裁決(投票)する時が訪れ、運命の男の記憶が蘇る――。

記者会見には、純矢ちとせ、川原一馬、荒木健太朗、世界(EXILEFANTASTICS from EXILE TRIBE)、平野泰新(MAG!C☆PRINCE)、Toyotaka(Beat Buddy Boi)、高田秀文(DAZZLE)、新里宏太、そして松竹株式会社代表取締役副社長・安孫子正、本公演の主催である寺田倉庫株式会社と松竹株式会社の合名会社・TSプロモート株式会社の取締役・三宅康之、脚本・演出を担当する株式会社DAZZLE代表・飯塚浩一郎が登壇した。
イマーシブシアターの雰囲気を伝えるため、キャスト陣は様々な場所から登場。また、フォトセッションにおいても取材陣による投票で撮影のポーズが決まるなど、公演に合わせたユニークな取り組みが行われた。
取材陣の投票によってフォトセッションのポーズを決めることに。
投票の結果、世界が考案したポーズで撮影が行われた。
全員が揃うと、三宅による「TSプロモートとは?」という説明から会見がスタートした。
現在、京都において長屋STAY「京都西陣ろおじ」という、日本文化や江戸時代の生活の営みを感じられる宿泊施設をプロデュースしている同社。松竹・寺田倉庫という“文化を継承する会社”が、次世代に新しい文化を作っていくという思いで立ち上げた会社だそう。今回、南座で行うイマーシブシアター・サクラヒメも、同社における新しい取り組みということだ。
TSプロモート株式会社取締役・三宅康之
次に松竹株式会社代表取締役・安孫子からも、新しい文化を発信していくための挑戦だという話が。
京都の南座は、現在日本で一番古い、400年の歴史ある劇場。昨年リニューアルした南座だが、新設における特徴の一つが、1階席をフラット化できる点だ。今年5月にミライマツリというイベントで使われた新しい機構が、ついに舞台でも活用されることとなる。
安孫子自身もNYで『Sleep No More』を体験して感銘を受け、南座の新機構を活かす方法を検討する中で、数多くのイマーシブシアターを手掛けてきたDAZZLE、各分野のスペシャリストであるキャスト陣の力を得て、新しい芝居づくりに取り組むことを決めたそうだ。
歴史と伝統ある劇場における新しい挑戦だが、安孫子は「400年前に歌舞伎が発生したきっかけも、出雲阿国が出雲大社から京都などに集まってきて踊った、今で言うストリートダンス。そこから南座がスタートして400年経った今、原点に戻ることで、これからの100年、200年に向かう大きな出発点になると期待している。趣向を凝らした新しい演劇に興味を持って、応援していただけたら」と、南座の使命と展望を語ってくれた。
松竹株式会社代表取締役副社長・安孫子正
株式会社DAZZLE代表・飯塚からは、まだ日本ではあまり馴染みのないイマーシブシアターについての説明がなされた。イマーシブシアターとは、演者と観客が同じ空間にいて、移動しながらパフォーマンスを行う新しい形態の演劇のこと。NYでは、『Sleep No More』が“最も価値のある100ドルの使い方”として選ばれ、上海にも上陸したほか、ブロードウェイにおいてもイマーシブ要素を取り入れた作品が増えるなど、世界中で熱い注目を集めている。
今作でも、 1階席の観客が舞台の一部となり、一人ひとりが観たいものを選ぶのに加え、2階・3階席の観客は芝居全体を俯瞰で鑑賞し、物語の結末を決められるのが大きな特徴。客観的にパフォーマンスを楽しむだけではなく、作品に参加し、自分たちの意思で物語を決めていく“体験”ができることがアピールされた。
株式会社DAZZLE代表・飯塚浩一郎
続いて、キャスト陣より、作品への意気込みが語られた。
純矢ちとせ
■サクラヒメ/純矢ちとせ
伝統ある南座の舞台に出演させていただくということ、とても光栄に思っています。イマーシブシアターにおいて、お客様を間近に感じながら舞台を務めることができるのも、今からとても楽しみです。
私は幼少期から日本舞踊を習っておりまして、17年間在籍しておりました宝塚歌劇団でも学んでおりました。それに加え、お三味線やお歌やダンスのシーンもあるということで、すべて精一杯努めて参りたいと思います。
そして、5人の男性方に思いを寄せていただくという幸せなお役で(笑)。
結末が皆様の投票で変わる、とても楽しみな作品でもあるので、お客様にも何度でも楽しんでいただけるのではと思っております。素晴らしい共演者・スタッフの皆様と最高の舞台を作りたいと思います。千秋楽までどうぞよろしくお願いいたします。
川原一馬
■陰陽師/川原一馬
イマーシブシアターという、僕自身初挑戦の作品を、歴史ある京都南座さんでやらせていただけることを心から嬉しく思っております。
そして、なんとこの作品は1階がフラットということで、お客様と演者がとても近い距離で、面白い出来事が起きたり、僕たちがお客様に何かアプローチしたりというのを間近に感じることができます。それだけではなく、2階・3階のお客様に向けて、上階でもパフォーマンスを行います。僕自身は陰陽師として、タップダンスのパフォーマンスを上階でやりたいと思っていますので、そういうところもぜひ見ていただけたら。
そしてサクラヒメとのラストシーンは、選ばれるか選ばれないかのドキドキもあります。選ばれるように精一杯パフォーマンスしていきますのでよろしくお願いします。
荒木健太朗
■浪人/荒木健太朗
僕自身、小劇場出身で、こういう大きな舞台に立つとは考えていなかったです。変な縁だなと思ったのが、今年の4月にちょうど京都の方に行かせていただいて、祇園白川の桜を見たあとに南座を見て「こんなところに立てたら最高だな」と思っていたんです。それがこんな形で叶うとは思っていませんでした。皆さん、夢は叶います。来年もいい年にしましょう(笑)。
それと、皆さんいろんな素晴らしいパフォーマンスをやっていただく中で、僕自身は日本独特の美しさがある“刀”を扱います。武器ではありますが、和のテイストを入れられる、美しくて色気のあるもの。
それと、イマーシブシアター、しかも京都という場所なので、日本人だけでなく海外の方もいらっしゃるんじゃないかと思います。そこで「日本人がめちゃくちゃ面白いことやってる」ってアピールできたらすごく素晴らしい公演になるのかなと思っています。
僕は初めて純矢さんとお会いしたんですが、僕しか選ばれないんだろうなって思いながら頑張りたいと思いますので(笑)、どうぞよろしくお願いいたします!
世界(EXILE/FANTASTICS FROM EXILE TRIBE)
■義賊/世界
イマーシブシアターという、すごく新しい演劇のシステムで演じさせていただくことが光栄ですし、何より普段、ドームなどの大きな会場に立つ機会はたくさんあるんですが、お客様とステージが切り離されていることがすごく多い。今回のイマーシブシアターは全くそれがなくて、本当に、その空間にいる人たち全員で「サクラヒメ」というものを作っていく。
毎公演違うものになると思いますし、近い距離でしか見えないパフォーマンスもあるので。僕だったらダンスとかいろんなことをさせてもらうんですが、表情一つもそうですし、指先一つの細かい所作まで、すべて隅々見ていただけると思うので、すごく楽しみにしています。
先程(登場時)、イマーシブシアターを記者さんにも体験していただこうと思って中を通ってきたらシュールな感じになっちゃったんですが、本番ではもっと柔らかい感じで、観に来てくださる皆さんと絡む内容もございますので、そこも楽しみにしていただけたらと思います!
平野泰新(MAG!C☆PRINCE)
■鳶/平野泰新
今回、初めての舞台で由緒ある南座という場所に立てることを本当に光栄に思います。素晴らしいキャストさんに囲まれて、最初は大丈夫かな僕!? と思ったんですけど、男子新体操を約10年、人生の半分近くやってきた中で培ってきた表現力やアクロバットをしっかり活かして、皆様を楽しませられるように頑張ります。
また、世界さんが仰ったように、表情や指先まで見える。新体操にも通じるところがあるので、新体操でしか、僕にしか演じることのできない「鳶」をやっていきたいなと思います。
僕も最後の一人に選んでもらえるように、スタッフ・出演者の皆様と最高の舞台を作り上げられるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。
Toyotaka(Beat Buddy Boi)
■町医者/Toyotaka
僕はストリートダンスを16年、高校生の頃からやっています。新宿のビルの下で一生懸命窓に向かって練習していた頃から、アメリカのヒップホップカルチャーに影響を受けて積み重ねてきたんですが、やっぱり日本人として、何か表現できないかっていうことにトライしてきました。世界と一緒に「三味線の音をサンプリングした楽曲でショーを作ってみよう」とかいろいろチャレンジしてきた中で、南座の歴史あるステージで、ストリートダンサー、表現者として自分が立てることに、日本人としてすごく誇りを感じます。
そして、町医者という役どころでサクラヒメを奪いにいくというか取り合うわけですが、1階のお客様は近くでいろんなことを体感きるので、町医者らしく繊細なダンスを爆発させたいなと。あとは2階・3階のお客様に選んでいただくからには、「こんな町医者なら病院に行きたくなるな」と思えるダンスを頑張りたいと思います(笑)。
高田秀文(DAZZLE)
■盗賊/高田秀文
日本でのイマーシブシアターといえばDAZZLEということで、DAZZLEは3年ほど前から日本で本格的なイマーシブシアターを制作・牽引してきました。今回はそうそうたるキャストの皆さんと共演させていただきますが、僕自身一番イマーシブシアターを経験してきているので、楽しみですし、皆さんを引っ張っていけたらと思っています。
(サクラヒメの相手は)5人の中から選ばれますが、自分が選ばれるように、そういう気持ちで頑張ります(笑)。
新里宏太
■雲上の導者/新里宏太
僕は雲上の導者として、2階・3階席のお客様と近い距離で過ごす時間が多いと思っています。
そして、普段は歌手活動をさせていただいていますので、歌唱披露にもぜひ注目していただきたいなと思っております。
僕も選ばれる権利はないんですけど、何かの間違いで選ばれるように頑張ってパフォーマンスしていきたいと思いますので(笑)、よろしくお願いします。

その後行われた質疑応答においては、リニューアル後の新機構を使用した演出やイマーシブシアターという挑戦など、ワクワクする要素が目白押しなこともあり、取材陣より多くの質問が寄せられた。
ーー南座から新しい舞台の発信ということで、今回は京都公演のみですが、今後の計画や構想があれば教えてください。
安孫子:演劇も多様化する中、京都の南座という、古くて新しい劇場・町、インバウンドの方も多い場所において、イマーシブシアターという新しい文化を表現したいという思いがあります。DAZZLEさんが3年間努力してきたことを私たちも一緒にさせていただいて、機会があれば京都に留まらずチャンスを見つけられたら。また、寺田倉庫さんとは、今年、中村獅童さんによる『女殺し油地獄』を倉庫の中でオフシアター歌舞伎という形で上演するなど、新しいことを次々にやらせていただいています。今日のお話を聞いただけでとてもワクワクしますし、口コミでもお客様が来てくれるのでは。いい舞台を作って後に続けていけたらと思いますね。
ーー前半終わりに投票とのことでしたが、前後編、それぞれどれくらいの時間なんでしょうか?
飯塚:クライマックスを投票で決めるので、正確な時間は難しいですが3/4くらいで投票してもらい、そこからは選ばれた男とサクラヒメのパフォーマンスがメインになる予定です。投票結果は演技の進行の中でわかる形ですね。
ーー純矢さんは宝塚を退団後初の舞台ですが。
純矢:新しい自分を見せたいという気持ちもありますが、どのようにしてというのはまだ模索中です。宝塚歌劇団の17年間で培ってきたものを発揮できたらという思いと、イマーシブシアターへの出演は初めてなので、お稽古しながら、初日を迎えてからもなお新しいものを見つけられるのでは、という思いがあります。あとは日本舞踊が大好きなので、舞踊をできる喜びもありますし、和と洋の融合もとても魅力的だなと思っています。
ーー川原さんのお話の中に、上階でタップを披露するかもとありましたが、5人が2階・3階に上がるシーンもあるんでしょうか? それぞれの見せ場があれば教えてください。
飯塚:全員一度は上がります。具体的に何をするかは、知っている人と知らない人がいるので、アピールについての意気込みをご本人から。
川原:先ほども話したんですけど、タップダンスでお客様を魅了できたらと思っています。
荒木:僕は刀を提げてると思うんですが、刃物なので振り回すのは……。(お客さんは)中々触ったことがないんじゃないかと思うので、「ちょっと触ってみます?」みたいな(笑)。鞘から刀身を見せるくらいの動きしかできないのかなと思いますが、全然別のことをやれるかもしれないので楽しみですね。
世界:僕はダンスを得意とさせていただいているんですが、まだ何をするかは考え中です。「Choo Choo TRAIN」を踊るわけにもいかないですし……。でももしかしたらそういう演出があるかもしれないですね(笑)。
平野:僕はアクロバットなので、2階席でどういう演出になるかは分からないんですが、1階で飛ぶのでまぁ2階席には近くなるかなと。できるだけ高く飛んで、2階席の方の目線くらいまで行けるようにアピールしたいと思います!
Toyotaka:ストリートダンスって僕の感覚だと“正面”がないんです。スタジオで鏡に向かってやってきたんじゃなく、道端で色んな方向に向けて踊ってきた経験を活かして、2階3階全方向に大爆発させようと思います。

ーー南座という場所でやる上での仕掛けや趣向はあるのでしょうか。
飯塚:南座という空間の素晴らしさをお客様に味わっていただけるのが、一番新鮮な体験になるんじゃないかというのがあります。一般の方が舞台に上がって、客席や景色を見る機会というのは一生に一度もないのがほとんどだと思うので、希有な体験をしていただきたいですね。また、南座の機構を出来る限り使いたいですし、2階・3階の客席に入っていくのも中々ないと思うので、今考えうることすべてに挑戦したいです。

作品に携わる全員から、新しいチャレンジへの意欲とワクワクが伝わってきた今回の会見。これから先、日本においても広がりを見せるだろう「イマーシブシアター」を、この機会に体験してみてはいかがだろうか。本公演は、2020年1月24日(金)より2月4日(火)まで、南座にて上演される。

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